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姫の在り方と不穏な空気

 段々と意識が覚醒してくる。まだボヤボヤとしている視界だが、なんとなく部屋の雰囲気がいつもと違う気がする…それに匂いも。横を見るとシファが椅子に座り本を読んでいた

 その姿に一気に目が覚める


「いつの間に!?」


「おはよう」


「す、すみません!!!!いつの間にか」


「疲れてた……よう、だね。おかげで……かわいい……寝顔を……見せて、もらったよ」


 なんてキザなセリフを言うんだろう…と思うが、今まで言われたことがなかったので自然と顔に熱が集まる


「今日から……自由に……動いて……もらって……いいから、ね。僕は……やることが……ある、から。少し……出るね」


「わ、私も自室に戻ります!!!!」


 立ちあがろうとすると右手を握られる。急なことでキョトンとしていると右手に口付けをされた


「何が……あっても……護る、よ」


「シファ様……ありがとうございます」


「一人で……戻れる?」


「はい。ここには何度もきているので」


「なにか……あれば……すぐ、呼んで。僕か……シンが……必ず、行くから」


 そう言って、5冊ほどの本を持って出て行かれる。眠気に勝てずにそのまま眠ってしまったことがとても恥ずかしく、思い返すだけで暑くなってくる。そそくさとシファの部屋から出ると、自室へと戻る途中でちょうどメルと会った


「昨日はあれから戻られませんでしたか?少し待っていたのですが」


「ごめんなさい。疲れていたみたいでシファ様の自室で眠ってしまったみたいなの」


「そうだったのですね。では朝食はまだでしょうか?」


「そうね、まだ食べてない」


「ご一緒にいかがですか!今日から食堂にも行けるようですし!」


 もうメルが自由になったことを知っているに驚いた。朝礼でもあるのだろうか…?

 それにしても食堂があったとは知らなかった。自室とシファの部屋しか行ったことがなかったし、窓から見える景色で高い建物だとは分かっていたが、ここが何階なのかも知らない


「そうだね!色々と行ってみたい!」


「行きましょう!行きましょう!食堂は広いんですよ!そして…お肉が美味しいんです!」


 朝から肉か…と思ったが、メルに手を引かれエレベーターに乗るとボタンが7個くらいしかなかった。それほど高い建物ではないのか?と思ったが、今いるのが最上階だったようだ。3のボタンを押すと下へと降下する

 今まで料理の匂いなど感じたことはなかったが、3階へ着くといい匂いがしてくる。エレベーターから出れば、想像以上にたくさんの人がいた。羽根が生えている人、ツノがある人、尻尾が生えている人…天界とは全く違う景色がそこには広がっていた。唯一、共通していたのは着ている洋服が豪華だったことくらいで

 キョロキョロと辺りを見渡しながら食堂へと足を踏み入れると子供がぶつかってきた。そんなにつよい衝撃ではなかったので倒れることはなかったが、子供は尻もちをついてしまった


「っいてて」


「大丈夫ですか」


 尻もちをついてしまった子供に手を差し伸べると騎士たちが走ってきた。その手には槍や剣が握られている

 すると騒ぎを聞きつけた母親が走ってきて子供を守る


「無礼者め!」


「申し訳ありません!この子に罪はありません!目を離した私のせいです!どうか、どうかこの子だけはお許しを!」


「二人とも捕えよ」


 騎士たちが子供と母親を連れて行こうとすると、漸く自分のおかれた立場が分かったのか子供が泣き出した。周りもガヤガヤとしているも、誰もそれを止めようとしなかった…メルですらも


「待ちなさい」


「姫様?」


「一方的にこの子だけを責めてはいけません。私も前を見ていなかった」


 子供と母親の前にしゃがむと周りが一段と騒がしくなる

 それもそうだ。魔界の王妃となる人物が貴族相手にドレスが汚れることも気にせず目線を合わせたのだ


「元気に走れる子です。そんな子に罪はありませんよ」


 子供の頭を優しく撫でると泣くことをやめた。ハンカチで流れている涙を拭く

 その行為すら母親からすれば、どうすればいいのか分からない


「ひ、姫様。ハンカチが汚れてしまいます!」


「……今回は私に免じて許して頂けませんか?」


「ーーーー姫様がそうおっしゃるのであれば……感謝しろ!」


 納得はしていないけど、姫に言われれば仕方ない…といやいやながら騎士たちは待機場所へと戻っていった


「ありがとうございます!ありがとうございます!」

「ありがとう!姫様!」


「前をよく見て走ってくださいね。では」


 最後にもう一度、頭を撫でてその場を去っていく。母親はずっとこちらに向かって謝罪を続けていた


「姫様は本当にお優しいんですね」


「私も前を向いてなかった。お互い様なのに[姫]ってだけで一方的に相手が悪いのは違うと思うの」


 今までこんな王族の人は見たことがなかった。普通なら少しでも無礼を働いたら、大人も子供も関係なくすぐさま牢屋に入れられた


「さて、メルのオススメを頂きましょうか!」


「はい!こちらで注文ができます。オススメのソースはこれですね!」


 メルに教えてもらいながら注文し、料理を受け取って机に持って行くとメルが椅子を引いてくれる。まだまだ慣れないことだが、感謝を伝えて座る

 2人して同じ料理を一緒に食べる。誰かと食べる食事は久々だったし、とても美味しく感じた



 その光景を見て、1人の騎士がシファへ報告しにいく。ちょうど貴族と会議中だったため後にしようとしたがシファはそのまま報告させた。先ほど、リンにぶつかった子供を庇ったがそういうことが初めてで、とりあえずいう通りにした、と


「そう。思ってる……以上に……姫は……国民の……ことを……思ってる、んだね」


「本当に良いのですか!?このままでは何をしても平気だと思われかねません!!!!」

「そうです!何も分かっていないだけなのでは!?」


 シファが何も対策や対処をせずに、そのまま流すようなことを言ったため周りの貴族からは不満が出る


「何を……焦る?僕が……自由に……させて……あげようと……言ってる、んだ。なにか……問題でも?」


「い、いえ」


「もう、いい……今日は、終わりだ」


 シファの機嫌を損なってしまったようで、会議は急に終わり貴族たちは退室していく。報告をしにきた騎士はもしかしたら自分のタイミングが悪かったのかもしれない…と思ったがあえて口にはしなかった



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーー


「美味しかった…こんなにいいものを知ってるなんてメルはもの知りね」


「姫様のお口に合ったようで良かったです」


 朝から肉は不安だったが、柔らかくて食べやすくソースも食欲を増すものだったためペロリと食べられた。メルが2人分の配膳を下げると食堂からでて、大きなバルコニーにいく。久々の外の空気は空の色とは違い、とても澄んでいて心地よかった


「ここにも学校はあるの?」


「貴族たちが通う学校と少し離れていますが、城の外には一般人が通う学校があります」


「外か…行ってみたいな」


「お城の外に出てもよろしいのですか?」


「王は自由にしていいと言ったから…大丈夫だと思うけども」


「一応、シン様に確認してみますね」


 城内の貴族たちが通う学校ではなく、外にある一般人が通う学校へ行きたいと言ったのは長年、部屋の中に監禁されていたからか…貴族しか知らないから一般を見てみたくなったからか

 それにしてもメルの時もそうだったがやたらとシンの名前が出てくる


「シンってそんなに偉い人なの?」


「そうですね。王の下に5人の幹部がいるのですが、その幹部をまとめているのがシン様です」


 5人の幹部か…シンとエルとここへ連れてきた人の3人しか知らない。それにしてもシンって結構、偉い人だったのか


「3人は知ってるんだけど、他に誰がいるの?」


「シン様、ベル様、エル様、リィ様、リオン様の5人ですね。ご存知なかったですか?」


 また痛いところをつかれる。それとなく当たり障りのない理由をつけてうまくごまかそう


「あまり部屋から出たことなかったから、そこまで詳しくなくて。王妃になるなら無知じゃバカにされちゃうしね!メルなら詳しいかなって思って」


「姫様をバカにする人なんていませんよ!私でよければいつでも聞いてください」


「じゃあ…エルってあの時、メルを刺そうとした人だよね?」


「そうです。エル様は主に国民を任されております。なのでエル様に不要と決められたら不要になります」


 それに驚きが隠せない。エルの一言で牢に入れられる人や最悪、殺されてしまうのだろう

 そんなことが許されていいのだろうか?いや、これが魔界のやり方なんだ


「あ、シン様に外に出ていいか聞いてきますね!」


「お願い」


 メルが去っていき、再び外を見る。天界とは空の色も陽の光でさえも違うけれど暮らしている人々は変わらない。国のやり方に問題があるように思えるけれど、笑っている人は多い

 辺りを見渡していると、女性がコソコソと周りを気にして扉へと入っていくのが見えた。あんな所に部屋?があるのか気になり、メルが戻ってくる前に戻ればいいと急いでその場へと向かう。扉が少し開いていて下の方から話し声が聞こえる

 下へと続く階段をみて、なんとなく150年前を思い出すが気になってついつい中へと入ってしまう。静かに物音を立てずに下まで降りると


「大丈夫よ!すぐに出してあげるからね!」


「そう……だね」


 先ほど入っていった女性が奥の方で男性に声をかけていた。ここは牢屋のようで鉄格子が何個もあり、中にいる人はみんな鎖に繋がれていた

 鎖に繋がれているということはなにか罪を犯した人なんだろうか?


「貴方にこんなことをした国を絶対に許さない」


「ダメだ。君まで堕ちてしまう」


 堕天使なのに堕ちるとはどういうことだろう…と考えていると足元にあったランプに足があたりカランと音を立ててしまった


「誰!?」



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