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天使が魔界で行う儀式

(成人の宴。この日をここで迎えることになるなんて……誰が想像しただろう)


 先日、メルに採寸してもらった薄い水色のドレスに身を包んでいた。いつもより少し派手な装飾品も自分に合うようしっかりと作られている


「姫様?どうかされましたか?」


 着替えてからずっと窓の外を見て黙っているからか、メルが心配そうに声をかけてきた。着付けにきていた者たちは全員返し、メルだけは残ってもらっていた


「なんでもない。少しは姫らしくみえるかな?」


「もちろんですよ!とても美しくて……お綺麗です」


「そっか……ありがとう」


 誰に質問しても同じ言葉が返ってくるだろう。だが、メルは上辺だけの言葉ではないことは伝わってくる。メルと話しをしていると心なしか落ち着いてきて、少しだけ嫌な気持ちが薄れた気がする

 そんなことを思っているとコンコンとノックが聞こえ、返事をする前に扉が開く


「シン様……ドレスなど問題はありません」


「そうか、なら準備はできてるな」


「はい」


 いつもより着飾っているリンを見て何も言わないが、ソッと手を差し出されそれに応えるよう手を乗せる


「姫様、いってらっしゃいませ」


「いってきます」


 ニッコリと笑って送り出してくれたメルに少し微笑んで返す。シンにエスコートされ、パーティー会場まで歩いて向かう

 そういえば、なにかあると迎えに来るのはいつもシンのような気がする……不思議に思ったがあえて聞く気にもなれず、メルと同じよう自分の世話役のような感じなのだろう


「入るぞ」


 色々と考えていたがあっという間に目的地へ着いたようで、明らかにここは王の部屋です!って感じの立派な扉があった。自動的に扉が開き、中へ進むと驚くほど広く豪華な装飾がされているシャンデリアや着飾ったたくさんの人々が居た

 あちこちから話し声が聞こえ、アルコールの匂いや料理の匂いなど150年振りに感じるパーティーの雰囲気に少し怯えてしまった


「姫様!」

「姫!おめでとうございます!」

「なんとお美しい」


 自分の存在に気付くと、あちこちから数々の言葉が向けられた。だが、その言葉にどのような反応をしたらいいのか分からず、無言になってしまい注目されながら奥の方へと向かっていく


「お連れしました」


「待って……いたよ」


 声がしてハッと顔をあげると階段の上から男性がおりてきた。王と会うのは初めてだったが、明らかに思ったことがある


(この人……強い)


 自然と繋いでいる手に力が入る。するとシンとは反対側の手を握られ、ビクリと肩が驚いた


「緊張……して、いるの……かな?」


「は、はい」


「大丈夫、だよ……さぁ!宴を始めよう!」


 その言葉で会場が一段と賑やかになった。クラシックの音楽が流れ始め、たくさんの人が交流を始めた


「シン、ありがとう。警備に……戻って」


 手を離すとペコリと頭を下げて、去っていく。それに少し名残惜しくなるものの


「ふふ。君は……僕の、隣に……いれば……いいよ」


「はい…ありがとうございます」


「少ししたら……挨拶、周りに……いこうか」


「わかりました」


 単純な返答かもしれない。だが、今はこれが精一杯なのだ

 自分と同じ色の瞳なのに、見つめられると全てを見透かされているようで怖かった


「少し……落ち着こう。向こうに……行こうか」


 手を引かれるがままに階段を上がると、いかにも高級そうなソファーへと案内される。恐る恐る座ってみると反発性もあり、普段座っている椅子よりも数倍良質なものに感じた


「自己紹介が……まだ、だったね。僕は……シファ。この国……この世界の王」


 ニコリと微笑んでくれたので微笑み返すもどこかぎこちなくなってしまった。いまだに緊張感がすごく全く落ち着かない


「次は……君のこと……教えて……くれない、かい?国を……離れている……ことが、多くて」


 その言葉に驚く。さすがに自分が天使で150年間、あの部屋に監禁されていたことは知っているはずだ。なにか他に天界のことなど知りないのだろうか?そんな疑いをもってしまい、なかなか言葉が発せられない


「イヤ……だった?」


「い、いえ!ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はリン・カトレアと申します」


「いい……名前、だね。誰が……つけて、くれたの?」


「お母様が」


「いい……母親だね」


「……はい」


 150年経ってしまったが、今はなにをしているのだろうか。ちゃんと食べているだろうか、私のことを心配しすぎて倒れていないだろうか

 兄も無理をして剣術を学んでいないだろうか、私を連れ戻すために堕天使たちと闘うため必死になっていたらどうしよう

 あれからを知らないため、毎日みんなの無事を思うばかりだ


「そろそろ……行こうか。今日は……君を、祝うために……たくさんの、人が……来て、いるから」


「はい」


 立ち上がると、再び手を差し出してくれる。震えている手をのせると握られた手は思ってた以上に暖かった。階段を降り、歩いていると声をかけられる


「これは、これは姫様。お綺麗ですね」


 しっかりとシチサンに分けられた髪は整えられており、見るからに高級なスーツを着ている男性。まだ、どうやって会話をすればいいのか聞いていないが、褒められたことにお礼は言わないと失礼だ


「あ、ありがとうございます」


 すると、男性の横にマダムと言う言葉がピッタリと似合う、真っ赤なドレスに綺麗に巻かれた髪、たくさんの宝石を身につけた女性がやってきた


「ぜひ、うちの息子を紹介したいわ」


 とんでもない言葉がでた。紹介、とはつまり結婚相手ということだろう。どのように断ればいいのか困っていると


「失礼。相手は……すでに……決まって、おります」


「あら、そうでしたの。失礼致しました」


 ペコリと頭を下げ、二人は去っていった。国の姫と結婚なんて出世も出世、逆玉の輿だ。その座を手に入れようとするものは少なからず居るだろう

 それよりもシファから出た、相手が決まっているとはどう言うことだろうか。今までなにも聞かされなかっただけで実はどこかの権力者との縁談は決まっていたのかも


「みな!聞いてほしい!」


 急に大きな声を出したシファは咳き込んだが、この場にいる全員の視線を集めた


「今日は我が姫の成人の宴に参加してくれたこと、ありがたく思う。今日、みなを集めたのには証人になってほしいからだ。姫が成人されたこの日、私は誓おう!姫と共にこの国、この世界を導くと!」


 その言葉に驚きが隠せない。先ほど言っていた相手は王であるシファ本人のことだったのか。天族である自分と婚姻し、この国つまり魔界を導くというのだ

 不安が渦巻く中、周りの人々からは歓喜の声があがっている


「姫。婚姻を申し入れます」


 そう言って差し出された手。当たり前だが、その手を取ることはできない

 私は天使、天族だ。なのに魔界で、しかも堕天使の王と結婚なんてできるはずがなかった。ただただ、見つめることしかできずにいたらシファがボソッと


「君に……拒否権は……ないよ」


 と言った。ハッとして周りを見渡せば、みんなが期待の目でこちらを見ている。この中の誰一人として自分のことを天使だと思ってる人はいない。この場で逃げ道などどこにもなかった

 半ば、諦めに近かったかもしれない


「……喜んで」


 ソッとシファの手を取ると、周りから祝福の声と拍手が聞こえる。これでもう天界へ戻ることはできなくなってしまったかもしれない……いや、できないだろう


「みなが証人だ!誓おう。なにがあっても……君を、護ると」


(コウ、お母様、お兄様、天界のみんな……ごめんなさい)


 本音は心の奥にしまってニコリと微笑む


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