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動き出す未来

「なんだよ!なんで!なんで斬れないんだよ!」


 天使の羽根を取り戻したシンにウルの斬撃やパンチ、キック、触手による攻撃は全く効かなかった。だが諦めるわけにはいかず何度も何度もしかける


「王が……消えた…?」


 だが、シファの消失を察知したシンが一瞬揺らいだのをウルが見逃すはずがなく、脳天から斬りつけるとシンは負傷する


「やっとくらってくれたか〜」


 目の前にいるウルよりも脳裏に映ったリンの姿から目が離せない。独りぼっちで泣いている…リンが泣いているんだ、すぐに終わらせなければ

 握っている剣が眩い光りを放ち大剣へと変化する


「すぐ終わらせてやる」


「!?はやっ」


 あのウルが目で追えない程の速さで後ろへと回り込むと背中を斬りつける


「見えなかった、だと!?」


 ヨロヨロとふらつきながらもウルは触手を振り回す。だが一本もシンに届くことはなかった


「分かってるはずだ。お前の負けだって」


 ハッとしたのも束の間。正面から心臓部を刺され砕け散る

 まだ体が慣れていないのに天族の力を盛大に使ってしまったため膝をつく


「さすがに……きついな」


 だがリンは泣いている。たった一人で、泣いている


「いかねぇと」


 ガクつく膝を奮立たせてリンのところへ飛んでいく。リンの部屋の前にはリィたちがいた


「どうした、何かあったのか」


「リンが泣いてる……僕たちは入って慰めることはできないから」


「お前が行くしかねぇんだよ」


 頷いて扉を開ける

 誰かが入ってきたことに気付くと急いで涙を止めた


「リン」


「……シン。王は……永き呪縛から解き放たれました」


「そうか」


「力を……使いこなせた?」


「まだ体が慣れてないが、感覚は覚えてた」


「そう。シンは昔、私と一緒に居てくれた人に似てる……だから扱えると思った」


「俺は!俺は……リンを知ってる」


 シンのところへと歩いていく


「私もあなたを知っています」


「俺は……かくれんぼをしているリンを見つけだすことができなかった」


「うん、うん……ずっと、ずっと側にいてくれた」


 止めていた涙が流れていく。一筋流れてしまえば簡単に溢れ出してしまった


「コウ!!!!」


 抱き着く。今度は拒否されることなく受け入れてもらえた

 暖かい…誰かに受け入れてもらい抱きしめてもらえるのはこんなに暖かいものなんだ


「こんなに近くにいたのに!気付けなくてごめん!ずっと見守ってくれてたのに……ごめん!ごめんね!コウ!」


「リン……今まで言えなくて悪かった」




 2人のことを扉越しに見ている3人


「これからどうなるんだろう」


「アイツが王になるだけだろ」


「そうだな。王が変わるだけで他は何も変わらないだろう。それに彼女なら大丈夫だ」


 ハルの言葉に2人は納得する。後のことはシンに任せておけば大丈夫だと判断し、リオンのところへ戻っていく




「これからどうするつもりだ」


「シファ様にこの国を、みんなのことを任された。これからもこの国を支えていく」


「そうか、お前が決めたことだ。俺はそれについていく」


「ありがとう、コウ」


「俺も……隠して生きるのはもうやめる。それに羽根が元に戻ったんだ。天使だったことも言うつもりだ」


「コウが決めたことなら何も言わないよ!」


 お父様、あなたとの関係はもう少し落ち着いてから打ち明けることにします。少しだけ心の整理をさせてください




 翌日、リオンを除く5人は会議室に集まっていた


「天使…?シンが?」


 リィとエルはポカンとした顔をしていた


「あぁ。俺は150年前に連れて来られた天使だ」


「だが、すぐに幹部を任されて」


「そうだ。王によって全て城の者が入れ替わる時に監視の役割りも含め俺を入れたんだろう」


「羽根は黒いじゃん!」


「20年間毎日、魔界の魔力が入った水槽に入れられた。だから羽根も黒くなって魔力も変な風に使えるようになった……おかげで髪の毛まで真っ黒だ」


 コウは元々、白に近いクリーム色の髪をしていたが水に浸かっていたから真っ黒になっていた


「コウ……シンは私のもう一人の兄的な存在だったの」


「それで常にリンを護ろうと動いてたわけか〜納得」


「そう考えるといろんなことで辻褄が合う」


「天使の羽根を取り戻したからって魔界を壊そうとか復讐しようとか考えてねぇ。これからも変わらずリンに仕える」


「だからみんなにお願い。これからも変わらず魔界を支えてほしいの」


 正直、これから先どうなるかは分からない。もしシンが天使だったと周りに知られればシファが今まで天使を匿ってたと反乱が起きるかもしれない

 それに今まで隠してたとは言え、天使が2人いる城で働きたいと思う人がどれだけ居るのだろうか

 みんなの反応が怖くもある


「当たり前だよ!」


 一番最初に同意してくれたのはリィだった


「僕を救って外の世界へ連れ出してくれたのはリンだからね!」


「ありがとう……リィ」


「はっ、今さらどけって言ってもどかねぇよ」


「うん。そうだね」


「ベル、エル……2人ともありがとう!あとはリオンだけだね。容態はどう?」


「回復はしてるって聞いたけど」


「良かった……心配だから後で見に行ってみる。みんな今まで通りまたお願いします!」


 それぞれがいつもの業務を行うために自分の持ち場へ向かっていく。シンもたくさんやることがあるようで悪い!と言い出ていった。一人になると静かさから孤独を感じてしまう

 リオンに会うため治療室へ向かうと、治療室より手前のところで歩いているリオンを見つける


「リオン、動いて大丈夫なの?」


「姫様」


 頭を下げて挨拶をしようとするリオンを止め、傷を見せてもらうために治療室へ戻る


「もう大丈夫です」


「それでも見せて」


 腹部に巻かれている包帯からは所々、血が滲んでいるようで丁寧に外していく


「うん、思ったより大丈夫そうだね。でもまだ走ったりするのは難しいかな」


「すみません、手間をかけてしまって」


「リオン、早く動けるようになりたい?」


「当たり前です」


 ソッとリオンのお腹に手を当て回復をする。初めて見る力に驚いているようだ


「はい!治ったよ!」


「私なんかのために……もったいないです」


 どこか元気のないその様子を無視することはできなかった


「どうしたの?何かあった?」


「みな、自分と戦っていたのだと思いまして」


「リオンだって戦ってここにいるんじゃない?」


「私は戦っておりません。逃げて……逃げ続けています」


 苦しそうに胸元のシャツを握りしめている


「リオン。大丈夫……大丈夫ですよ」


 “リオン”


 リンの声と誰かの声が重なってリオンに届く


「ッ!?やめろ!」


 急にドンっと突き放されバランスを崩し尻もちをつく


「す、すみません!……一人にして頂けませんか」


「まだあまり動いたらダメだよ」


 それだけ言って出ていく。リオンの様子からして過去のトラウマか何かを思い出したのだろう

 リオン、何があなたを縛り付けているの




「すみません!すみません!」


 “大丈夫ですよ”


 ブツブツと独り言のように繰り返す。こうしなければならない、誰かに心を許してはいけない、いつも中立の立場でいなければいけない…


「私は……僕は……俺は……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あーぁ。シファちゃん消えちゃったね」


「また魔界から力を持つ方が居なくなってしまった」


「お前はこれからどうしたい?」


「あの方が次の王となられるのであれば、お仕えするのみ」


「楽しくなりそう」

これにて第一部完結となります!

ここまで来られたのも皆さまのおかげです♪

本当にありがとうございます!


これまで2、3日に1話のペースで更新してきましたが

8月下旬まで仕事が繁忙期に入るため更新ペースが落ちてしまうと思います。

引き続きよろしくお願いします


第二部に入る前にちょっとした物語りを挟むつもりです

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