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繰り返す悪魔ー⑥ー

「あーぁ。もう終わりなの?つまらない」


 トドメを刺そうとすると、上から影が落ちてきたため足蹴りをして回避する


「今度は2人か」


「チッ。外したか」


「もっと楽しませてよ!」


 ベルとエルが2人がかりで攻撃をしかけていくがウルは全てを受け止め反撃してくる。こちらが剣で斬ってもパンチやキックで反撃してくる。一撃がとても重く骨がきしむ


「つまんない」


「んだと」


 キレたベルが持ち前のスピードを生かしウルの後ろに回り込む


「そんなスピードで回り込んだつもりか?」


「なっ!?」


 突然、地面から出てきた触手に後ろから腹を貫かれる


「ベル!っ!?」


 駆け寄ろうとしたエルも触手に下から貫かれてしまった


「く……そ」


「なに、堕天使ってこんなに弱いの?これで姫様を護ってるつもりになってるのか……まぁいいや、バイバーイ」


 無理矢理起きあがろうとしているベルを見てニヤリと笑うと剣の先から光りが集まったビームのようなものを飛ばされる。堕ちてきたばかりの堕天使はまだ天族の力を扱える者もいる。この光りは明らかに天族のもので魔族のベルとエルに当たれば…下手をすれば死んでしまう

 2人が覚悟を決めた時、目の前にシールドが張られた


「大丈夫?ではないか」


「リィ」


 リィの護りは天族の光りですら弾いた。ウルはそれを見て珍しそうにするが、物理的に壊せばいいと思いベルたちと同じようにパンチやキックをされる

 一撃、一撃が重くシールドがいつまで持つか分からない


「つまらない。君は戦ってくれないのか」


 ウルは戦いたいというか、血を見るのが好きなので戦闘が楽しいし興奮する


「はぁ……ま、いっか。これで護りごと潰す」


 拳に触手を巻きつけ強化をするとシールドを上から圧迫し、潰そうとしてくる。今までの力とは全く比にならずヒビが入って割れてしまった


「サヨーナラ」


 リィに攻撃しようとするウルに向かって大剣が飛んでいく。受け止めることはせず後方に避けた

 左頬を軽く怪我したようで流れでた血を舐めると、うっとりする


「私に傷をつけるなんて……君が初めてだよ」


「そうか。それは光栄だ」


「シン……なの、か」


 目の前に居るのはシンなのだが、先ほどの大剣といいオーラといい今までのシンとはなにか違うものを感じた

 シンは倒れている3人が深手を負っているのを見て、すぐに治療が必要だと判断する


「リィ、3人を城に運べ」


「なに言って…」


「いいから、早くやれ」


「……分かった」


 ウルの強さを知っているリィはシン一人で戦わせるわけにはいかなかった。だがシンは3人の治療を優先したようで渋々、3人を連れ城へと向かう


「いいの?味方減るよ?」


「お前は俺一人で十分だ」


 明らかにさっきまでの4人とは違う強者のオーラを感じ取ったウルは興奮を抑えることができない


「それにしても君、最初に会った時よりもっと不思議な感じがしてる」


「なんだ怖気付いたのか」


「その口、すぐ利けなくなるよ」


 2人の激しい戦闘が開始された



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 再び目を覚ますとシファが声をかけてくれた。眠る前と比べたら、とても楽になっていたのだが…これは自己回復ではない


「シファ様……無理を……されましたね」


「そんなこと……ないよ」


「私の体が……会話できるほど、回復して……います。シファ様の……おかげで、しょう」


「君は……失っては……いけない……人だ」


 シファの顔色は悪く、誰がどうみても体調が悪いと分かるだろう。見つめていると頬に手をあててくれる


「これから、先……必ず、存在しないと……いけない人」


「それは、シファ様も……同じ、です」


 頬にある手を握ると体温がかなり冷たく感じる


「君は……シンを……どう、思って……いるの?」


「シンは、ずっと昔……ここにくる前から……一緒に居る。そんな……存在です」


「そう。だから……あの力を」


「全て……お見通し、なのですね」


 リンの胸元から細かい光りの粒子が流れでていて、それを辿っていくとシンに繋がっている。シファにはそれがしっかりと見えていた



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はぁ、はぁ」


「息が上がってきてますね」


 ウルとの戦いは一筋縄ではいかなかった。ベルよりも速いスピードに重すぎる一撃。なにより触手が邪魔でウル自身に攻撃ができない。斬っても斬っても再生をするため、こちらの体力が消耗していく一方だ

 どうしようかと考えていると急に目の前に現れ、顔面を蹴り飛ばされる


「誰が考える時間を与えると言った」


 運悪く岩山に後頭部を打ちつけてしまった。蹴られたところからは出血していて視界が悪くなる


「君、結構やるみたいだけど残念。大天使様から加護を受けた私とは……違うみたいだ」


 再びこちらへ向かってくるウルを目で追うことができない。立ちあがろうとすると目眩を起こしふらついてしまった

 そんなシンを見てニヤリと笑うと背後から攻撃を仕掛けようとした

 その時、暖かい光りがシンを包み込む。その光りはシンの傷を次々と癒していった


「なんだ!?なにが起きた!?」


 ウルは警戒をしてシンから距離を取る


 “シン”


 そう聞こえた気がしてペンダントを取り出すとシロツメグサが輝き、シンの羽根が黒から白へと変わっていく…いや、戻っていく

 ウルは自分と同じ色の羽根に驚きが隠せないようで


「その、羽根」


「お前、俺に違和感を感じたと言っていたな。それは当たりだ。俺は……元天使だからな」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(頑張って……シン)


 粒子によってだいたいシンがどんな状態であるのか伝わってくる。今はこのくらいのサポートしかできないのが歯がゆいが…

 何かが倒れる音がして振り向くとシファが椅子から倒れていた


「シファ様!?」


「少し……疲れた……みたい」


 先ほどよりもさらに顔色が悪くなっており冷や汗もでている。人を呼ぼうとしたら止められた


「いい。僕は……彼女を、おいて……永く……生きすぎた」


「その方を……大切に、思っている……のですね」


「君の……母親だよ」


「どういう、こと……ですか」


 シファから言われたことを理解するのに少し時間がかかった。お母様と恋人同士だったなんて…

 考えてみれば色々と不思議なところはあった。バケモノとなったお母様の前に現れたり、お母様に攻撃されても反撃せず傷の治療すらしていなかった。自分を常に護ってくれたり、自由にさせてくれていたのはお母様の娘だったからかもしれない

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