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繰り返す悪魔ー⑤ー

 どこかの森の中へ降りると抱きしめられる


「やっと、やっと会えた」


「本当に……ウル、なの?」


「はい!姫様に……あなたに会いたくて堕ちてきました!」


 その言葉にゾッとして離れようとしたが、より一層腕の力を強められた


「あぁ、姫様。どれだけ会いたかったか……もう絶対に離しません!」


 自分に会うために堕ちてきたのだとウルは言った。訳がわからない…いや、ウルは昔から訳がわからない行動をよくとっていて怖かった

 少しでも自分を悪く言ったクラスメイトが次の日退学していたり、重傷を負って入院したり

 自分が可愛いと言った猫を殺してプレゼントとして贈ってきた時もあった

 その時に言われた言葉は、生きてれば老いるけど死んでしまえば美しいままでいられる…だったっけ

 思考がぶっ飛んでいるウルをどうしたらいいのか分からずボーッとしているとシンが降り立つ


「リン!」


「シン」


「君だれ?姫様のなに?」


「ただの護衛だ」


「そう。じゃあ君も私から姫様を奪ったやつの一人だってことだね!じゃあ手加減は必要ないか」


 そう言い終わる頃にはシンの腹部に剣が突き刺さっていて、それを引き抜けば大量の血を吹き出し倒れる

 早すぎて何が起こったのか分からなかったし、動いた感覚すら感じなかった


「シン!!!!」


 シンのところへ向かおうとするが腕の中から抜け出すことができない


「離して!治療しないと死んじゃう!」


「離しません、そう言ったはずです。それにあんなやつ死んでも代わりはいますよ?私とか」


「シンは一人だけ!代わりなんていない!」


「……姫様はあいつのことが好きなのですか」


 その言葉になにも言い返せない。それは自分自身でも悩んでいたことでシンのことを知れば知るほど、自分の中にある可能性が浮かんでしまう。シファ様がいるのに…


「そうですか、そうですか!では、ますます死んでもらわないといけませんね」


 持ち上げられるとシンの近くまで連れていかれる


「その目でしっかりと見ててくださいね。私に殺されるところを!」


 興奮しているのか息遣いがかなり荒くなっているウルが剣を振り下ろす


「やめてーーー!!!!」


 シンに刺さる寸前で誰かが間に入り、剣を受け止める


「ふぅ……間に合った」


「リィ……」


 ウルに斬りかかるたくさんの剣たち。ベル、エル、リオンも助けにきてくれた


「あーぁ。せっかく楽しめると思ったのに、なっ!」


 胸元を急に押さえつけられると術をかけられ放り投げられる

 リィが受け止めてくれたおかげで地面に激突せずに済んだのだが、段々と意識が薄れていく。みんなの声が聞こえてくるが、もう限界だ


「リン!」

「姫様!」


「ど……した」


 シンが意識を取り戻したようで声をかけてきた


「シン、姫様の意識が」





 リンの自室に6人と治療師が集まっていた


「術者を早く捕らえて解呪してもらわない限り……もって3日というところでしょう」


「少しでも進行を遅らせることはできないのか」


「皆さまもご存知の通り、術はかけた者が解くか消えない限りこちらができることはありません」


「分かった……下がれ」


 治療師たちは頭を下げると去っていった。この場にいる6人は静かにリンを見ることしかできない


「くそ!」


 ボコンと音がして見るとシンが壁に穴を開けていた。それを宥めるリィ


「みんな……みんな、同じ気持ちだ」


 シファの言葉に5人は俯くしかなかった。するとリンの目がゆっくりと開かれる


「リン!」


「シファ……様。みんな」


「悪い。護れなくて、護れなくて……ごめん」


 どこか震えている声のシンに向かって震える手を伸ばす。少し戸惑いながらも握ってくれた


「わ、たしは……大、丈夫。シファ……様、すみま、せん」


「どうして……謝る、の」


「迷惑……かけ、て……!?ぐっ」


「リン!」


「大、丈夫……みな、さんを……信じ、て……いま、す……から。シン」


 手を引かれると耳元でコソコソと伝言を伝えられる。その内容に少し目を見開いた


「お……願い」


 それだけ言うとまた眠りにつく


「全員、全力で……探し出せ。必ず、消すんだ」


 それを聞き、5人がそれぞれの方向に向かって行く

 シファはリンの頬に触れながら少しの間、考えごとをしていた


「君は……シンに……なに、を……願ったの……そろそろ……世代交代……かな」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 シンはリンに言われた通り、リンしか知らないであろう部屋へときた。そこには机がポツンと一つ置いてあるだけで椅子も電気もなにもなかった


 “あの部屋……机の……引き出し……シンの、ため”


 それだけしか聞き取れなかったが、言われた通り引き出しを開けると150年前に渡したシロツメグサの指輪が大切に保管されていた


「全部……分かって、いたのか」


 いつもつけているペンダントを取り出す。指輪と同じシロツメグサがそこにも保管されていて、取り出したシロツメグサが触れ合った瞬間、今まで忘れていた懐かしい何かを感じた。それが自分の中に入ると今までとは違う力が宿ったようだ

 リンから授かった力として、この力でウルを消すことを誓う



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「今頃、姫様〜姫様〜って大変なことになってるだろうなぁ〜」


 今のリンの状態を想像しながら上機嫌で山の上で寝転んでいた。空を見上げると急に攻撃される


「っと、危ないな〜」


「今すぐ術を消せ」


「君が最初に相手してくれるんだ」


 一番最初にウルを見つけたのはリオンだった。リオンは集中力を高め目の前を見る


「でも君……」


「ッ!?消えっ」


「隙だらけだよ」


 急所は避けたものの腹部に剣が刺さっていた。いつ刺されたのか、いつ動いたのか視覚で追うことが全くできなかった


「あれ、急所は外したか……次は外さないよ!」


 剣を構え、再び集中をするが背中に斬撃を感じ倒れる。ベル以上のスピードの持ち主かもしれない

 そう思った頃には体中を切り刻まれていた

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