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繰り返す悪魔ー④ー

 自分が連れ去られた後の天界なんて想像したことも無かったが、あれは実際に起きたことなんだろう…魔界に堕ちてきたお母様よりはまだ元気そうではあったが、久々に見ると心にくるものがある

 眠れない…こんな状態じゃ眠れるはずもなく、そう言えばシンの傷を治療していないことに気付いた。お礼も伝えるためにシンの部屋を訪ねる。ノックをするとすぐにドアが開いた


「こんな時間にどうした」


「怪我の治療をしてないことを思い出したの。あとお礼も言ってないし」


「そんなの別にいい」


「ダメ。天界の鎖に繋がれてたんだから」


「こんなのほっとけば治る」


「ちゃんと治療しないと痕が残るよ」


 なかなか差し出さない腕をやや強引に掴む。そこにはクッキリと鎖の痕が赤く残っていて、軽い火傷のようになっている

 治療していくが、なんとなく雰囲気や態度の違うシンを見て


「どうしたの、いつもと違うね」


「……お前を、護れなかったから」


「護ってくれたよ」


 嘘でもなんでもない。シンが居たから洗脳だと言われ続けても自分を保っていられた

 シンはそうか…とだけ言い背を向ける


「なら……これからはなにがあっても側にいて」


 そう言ってシンの背中にピタリと体をつけると、シンは一瞬ピクリとした


「なにがあっても……離れないって」


「あぁ。なにがあっても姫から離れねぇ」


 そうじゃない。そうじゃないんだ

 姫として一緒にいてほしいわけじゃなくて、リンとして一緒に居てほしいだけなのに


「シン。私、シンに聞きたいことが」


「お前は姫様だ」


 ソッと離されてしまった。今のシンにこれ以上のことを言っても伝わらないだろう…本当のことを言いたいし、聞きたいだけなのに


「……そう、だね。そろそろ、部屋に、戻るね」


 逃げるようにシンの部屋から出て自室へ歩いていく。シンはきっとこれから先、なにがあってもシンとして王や姫に仕えるだろう

 角を曲がると見回りをしていたベルと鉢合う


「ひでぇ顔してんな」


 堪えていた涙が溢れて止まらない


「なにがあった」


「なんでもない」


「じゃあなんで泣いてんだよ。シンとなんかあったのか」


 真っ直ぐな言葉は容赦なく心に突き刺さる


「どう、して」


「お前がそうなるのはいつも国のことかシンのことが多い」


「私は姫だから……もっとしっかりしないといけないのに」


「そう気を張ることもねぇだろ。部屋まで送る」


「ありがと」





 “あなたは大天使を継ぐ者なのです”


 ずっと魔界にいたから意識してこなかったけど、天界の元大天使の娘だったんだよね…魔界と天界を繋ぐ存在になりたいと思ってたけど、なかなかうまくいかない


「もうお母様のような悲劇は繰り返したくない」


 ドドドドド、と感じる轟音。最近は頻繁になってきているがこの感覚だけは大きい小さいに関わらず、どうしても不安になってしまう


「!?この感じ」


 お母様の時と同じでとても大きく、また天使が堕ちてきたことが分かった。知り合いであれば、またあの光景を見るのかと不安に押し潰されて、どうにかなってしまいそうだ

 その場に座り込むと勢いよく扉が開く


「リン!」


「シ……ン」


「大丈夫か!?」


 駆け寄ってきて抱きしめてくれた。それでもまだ落ち着かない体の震えを見てシンはここから動かないよう言うと、ちょうど入ってきたメルと交代をして出ていった

 どうして堕ちてくるのか、天界でなにが起こっているのか


「姫様、立てますか」


 そういえば、椅子に座る前に座り込んでしまっていた。メルが持ってきてくれた椅子に座る


「なにか温かいものをお持ちしますね」


 飲み物を淹れるために離れようとするメルの服を掴む


「お願い……離れ、ないで」


「はい。姫様から離れません」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「シンか」


 下で見守っていたベルの横に降り立つ


「今日は誰が見てる」


「リオンだ。大丈夫だろ」


「それにしてもでかいな」


 落雷のような轟音と共に天使が堕ちてきた。リオンに拘束され階段を降りてくるのはとても大きな男性だった


「また天界から〜?最近、多くない?」


 いつの間にか合流したリィ。確かに天界から堕ちてくることが多くなっている。前回のことと言い、天界で何が起こっているのだろうか

 そんな会話をしている3人の横を堕天使が通るとギロリと周りを見て誰かを探していることなど、この場に居る誰も気付いていない



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ドックンと何か嫌な予感がして窓の外を見る


「姫様?」


 何が、とはハッキリと言えないが体の中から何かが反応した気がした。勘…と言うものなんだろうか

 大丈夫だろうと思い再びメルの方を向こうとした時、急に扉が破壊される


「やっと、やっと……会えた」


 一歩、また一歩と近付いてくる大きな男性。なんとなく見覚えがあるような…オレンジの長髪は目も隠れていて筋肉質な体


「私だけの……姫様」


「姫様!離れてください!」


「ウ…ル……?」


 脳内に蘇る幼き日の思い出

 そのせいで反応が遅れ、ウルに掴まれると一気に外へ連れていかれた


「姫様ー!!!!」


「ち、遅かったか!怪我はないか?」


 シンが駆けつけてくれたが一歩遅かったようだ


「私は……でも姫様が」


「すぐ連れて戻る」


 窓から外へと飛んでいき、2人が向かったであろう方へ飛んでいく

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