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番号 反乱 裏切り

「姫様、その髪型とってもお似合いです」


「本当?じゃあメルも髪型変えてあげる」


 自分と同じ髪型にしようと思ってメルの後ろに行く。襟足から上に髪をあげると首の後ろに小さいが番号が彫ってあった。それを見ているとメルが腕の中から逃げるように抜ける


「私はこの髪型が好きなんです!」


「そっか……あ、そうだ!今日は中庭に行きたい!」


「それが私はまだ仕事が残っていまして、もう少し時間がかかりそうです」


「ならやめようかな。メルがいないのは寂しいし」


「僕がいるじゃん!一緒に中庭行こうよ!」


 リィに手を握られるとグイグイと引っ張られ中庭へと連れていかれる。メルは微笑みながら手を振ってくれた

 正直、少し気まずかったから多少強引だったけれどリィに連れ出してもらえて良かった…中庭につくとリィが話しかけてくる


「世話役の子がいつも首の後ろを見せていないのはあの番号を隠すためだよ


「あれって、やっぱり」


「うん、奴隷の管理番号。見られた側も見た側も気まずいと思って連れ出しちゃった」


 やはりリィは分かっていたようで連れ出してくれた。それに感謝する

 シファは奴隷を使わないし興味がないと言っていた、じゃああの番号はなんだろうか


「王は奴隷に興味なくても、国民を管理してるのはエルだから。あぁやって番号で管理してるのかも」


 生まれてから番号を付けられるなんてとても不快だし、奴隷ではないと言っておきながら番号で管理されるのは奴隷と同じだ


「そんなに難しい顔しないでよ。せっかくここに来たんだし!」


「そう言えばリィはなんで中庭に?」


「君に見せたいものがあるんだ!こっち来て!」


 連れて行かれたのは中心部より少し離れているところで真裏になる。こんな日の当たらない場所になにがあるのだろう


「ほら!見て!」


「わぁ……きれい!」


「今日咲く予定だったから。今日しか咲かない今日だけの特別な花」


 日も当たっていないのに綺麗に咲いている真っ白な花たち。ここだけ闇夜に輝く月明かりのようでとても神秘的だ

 もう少し近くで見るためにしゃがむ。茎もしっかりとしていてどうやって咲いたのか不思議だ

 するとリィが一本もってきて右の小指につけてくれる


「リンのこれから先が幸せでありますように」


「私が幸せを感じるためにはみんなが幸せにならないと。もちろんリィもね」


「僕は幸せだよ。叔父たちから自由にしてもらえて、今日こうしてリンと咲いた花を見れた」


 2人だけの秘密。なんて言うリィはとても綺麗で思わず見惚れてしまう

 するとシンが走ってきた


「大変だ!街が!」


 その慌てさで事の重大さが分かる。急いで会議室へ向かうとモニターで外の様子を見る


「やれー!!!!今の国に不満があるものどもー!!!!」


「俺らの今は姫様に与えられたものだー!!!!姫様に忠誠を誓うものどもー!!!!ともに戦おう!!!!」


 いつもは綺麗な城内が荒れ果てていた。国民同士で武器を取り合い店や家を壊したりしている。どうして急にこんな状況になったのか


「止めなきゃ」


「待て!」


「離して!ただ見てるだけなんて嫌だ!」


「お前は今、国の王だ。のこのこ出てって怪我でもしたらどうする」


 シンから何度も言われていることだから分かっている。分かっているけれど、目の前で起きていることは自分が関係していることだし、下手したら魔物化の原因になってしまうかもしれない。放っておけと言われる方が無理だ


「国民を鎮めるのも王の仕事じゃないの!?」


「そうだ。だが、まだ王が帰還されていない以上お前になにかあったら国は滅ぶ。今は大人しく待ってろ……必ず国民たちの前に立たせてやる」


「シン」


「僕もリンのために」


 飛んでいく2人を見送る。そうだ……今は自分にできることをやろう

 すると騎士が迎えにきて自室へと連れてってくれた。中に入ると誰かの側近と騎士が2人いて不思議に思ったが、今はなにが起こるかわからない状況だからかもしれない

 メルが紅茶を淹れて持ってきてくれた


「ありがとう、メル。どうしたの?少し顔色が悪いように思うけど」


「……少し疲れたのかもしれません」


「いつもありがとう。でも無理はしちゃダメだよ」


 せっかく淹れてもらった紅茶を冷める前に飲もうとするとメルが声をかけてくる。それに対してコホンと側近が咳払いをした

 不思議に思ったが3口ほど飲みカップを置く。先ほどの状況が気になるので騎士の人に聞く


「現在も引き続き反乱が収まらず、この辺りからこの辺りまで広がっております」


 丁寧に地図を広げて説明してくれた。思いの他、被害が広がっていて、もう少し広がってしまったら外にまでいってしまいそうだ。さすがにそれは防ぎたい


「避難状況は?」


「この辺りまではだいたい完了しております」


「少し状況が見たい。誰かついてき……っ」


 急に目の前がグラリと歪みメマイを起こすと体がふらつく。騎士の一人が支えようと一本踏み出した瞬間、後ろから刺されてしまった。立っていることができない程のメマイに床に倒れる


「いやぁ……よくやってくれた。おや?まだ眠られていないようですね」


 そう言って目の前にしゃがみ込んでくる。いやな笑みをうかべながらこちらを見ていて今すぐにでも離れたいのだが、体がいうことを聞いてくれない

 するとベルが部屋に入ってきた。そうか…これはベルたちが仕組んだものだったのか

 側近から手刀をくらわせられると意識はなくなった


「成功してんじゃん。よくできたなぁ……こいつを騙すようなこと」


 メルは俯いたまま顔をあげることはなかった。自分が淹れた薬入りの紅茶をなんの迷いもなく飲んだリンを裏切ることをしてしまったのだ


「それにしてもなぜ殺さないのです?世話役が淹れた紅茶ならなんの疑いもせずに飲んだでしょうに」


「すぐ殺しても意味ねぇんだよ。いろんなステージに立たせてやらねぇと」


 ベルはリンを担ぐと部屋から出ていく。外で待機していた騎士たちは全員殺されていた

 すごく楽しそうで愉快そうに軽快に歩いて用意した部屋へ向かっていく



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「少しおかしくない?」


「お前もそう思うか?」


 目の前でぶつかり合っている者たちはこちらの静止する声には反応しないのだが、火を放ったり過激なことはせずただ真正面からぶつかってるだけ。姫派の者たちは必死に戦っているように感じるのだが、反姫派の者たちはどちらかと言うと守りに徹している

 まるで時間稼ぎのようだと2人は感じていた。その瞬間、シンはリィに任せてリンのところへ向かう


「僕もいく」


「リンは俺が護らないといけねぇんだ!!!!」


 それだけ言うと飛んでいく。リンの部屋につくと待機しているはずの騎士たちは殺されていた。慌てて扉を開けると倒れている騎士たちがいてブツブツと独り言のようなものが聞こえる。声のする方へ行くと


「メル!?」


 独り言を言っていたのはメルだった。シンを見ると泣きついてくる。ごめんなさい、とひたすら謝り続けているメルに何があったのか、リンはどうしたのか聞く


「姫様に……薬の、入った……紅茶を……ベル様に……連れて、いかれて」


「どこにだ!?」


「分かりません!ごめんなさい!ごめんなさい!姫様!」


 泣き崩れてしまったメル。倒れている騎士の血痕はあるものの扉の出入り口へと続く血痕はなかった。怪我はしていないようだが、あのベルと一緒だと思うと不安しかない



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 目を覚ますと薄暗いどこかの部屋だった。手は壁に鎖で繋がれていて天使の力が封じられている。今のところ自分でここから脱出する手段はなさそうだ


「お気付きになりましたか」


「ベルかエルの側近?」


「いえ、今はそちらでお世話になっているリィの飼い主です」


 そうニッコリと笑う初老の男性は全く悪びれもせず、長年かけて可愛がってきたペットが逃げだした、と両手をあげている。その姿に腹が立ち前にでようとするとガシャンと大きな音が鳴る


「リィはすごく傷付いた!あなたから離れるのを躊躇うくらいにあなたのことを大切に思っていたのに!それなのに……あなたは!!!!」


「なーに暴れてんだよ」


「これは、これはベル様」


「よぉ、いい格好だな」


 顎を掴まれると叔父を見ていた視線はベルと合う。とても楽しそうにしていて不愉快だ


「なにが目的」


「目的か〜。王はてめぇが王妃になってから変わっちまった」


「王が国民を思うのは当たり前のこと」


「それまでは王が絶対だったんだよ。誰も楯突くやつはいなかったが今じゃたかが一般人ですら俺らに楯突くじゃねぇか……気に食わねぇんだよ!力も地位も何ももってねぇやつがギャーギャー騒ぎやがって!」


「あなただって肩書きにハマってるだけじゃない」


「俺は生まれた時から勝ちが決まってんだよ!城は俺らがいるところだ。なのに今は下級貴族どもが普通に出入りしやがる。力がねぇやつらが俺らの領土に入り込んで当然みたいなツラしてんのがムカつくんだよ!俺らとは常に一歩下がったところにいるのが当たり前だ!」


 ベルの言葉に思わず、なにそれと吹き出してしまう。彼は全知全能の神にでもなったつもりなのだろうか?自分勝手に国を動かしていたら誰もついてこなくなるだろう


「そんなに都合よく国を動かしたければあなたが王になればいい。それができないのはなんで?あなたに力がないからでしょ」


「てめぇ……自分が置かれてる立場が分かってねぇようだな」


「さっき力がない者がギャーギャー気に食わないって言ってたけど、自分もその中の一人だと思わなかったの?」


「黙れよ」


 顎を掴んでいた手が首にくると力を入れられる。だがジッとベルを見つめてるだけで不思議と恐怖感はなかった

 その態度にも苛立ちが増したようで段々と手の力が強くなる


「このまま死ねよ」


「べ、ベル様」


「俺が決めたことに口出しすんじゃねぇ!……あん時、殺しときゃよかった」


 もう片方の手で腰にある剣を抜くとリン目掛けて振り下ろす。だが、その剣は受け止められ蹴り飛ばされた

 固定されていた鎖が壊され手が解放される


「無事か!?」


「ごほっごほっごほっ……はぁ。シン、来てくれるって……信じてた」


「くそ!なんでここが分かった!?」


 今いるここはベルが昔から管理している地下室でエルにすら教えていない秘密の部屋だ。誰も知るはずがない場所に現れたシンに驚く


「俺にはリンの居場所が分かるんだよ」


「まぁいい。2人しておくってやる」


「残念だがそれは無理な話しだ。下がってろ」


 言われた通り後ろの壁へ下がる。下手に近付いてシンが本気をだせないことは回避しなければ

 そう思っているものの、ベルがそう簡単に倒せる相手ではないことも分かっている


「いいぜ!まずはてめぇからだ!」


 同時に相手に向かって走り出し剣同士がぶつかり合う音が聞こえる。シンが強いことは知っているが、ベルはとても素早く一撃が重いようでシンが少しおされている


「剣術じゃ俺に勝ったことねぇだろ」


 ベルのスピードがまた速くなる

 攻めていた剣はいつの間にか左右から繰り出される攻撃から守るために振るようになってしまった。これ以上、ベル優勢の戦いをしていたらシンは攻めることができない

 どうにかしたいが下手に動いてシンの集中を分散させるわけにもいかない

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