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かくれんぼの地下

 天界にある限られた人物しか入ることができない場所。一段と手入れがされていて、真ん中には大きな噴水がある。その噴水を囲むように大きく立派な木々が生えており、葉だけのもの、果実をつけているもの、花を咲かせているもの。白色やピンク色が多く植えられている花壇もあり、噴水から飛んでくる水飛沫に太陽が反射してキラキラと輝いてみえる


「コウ!かくれんぼしよ!」


「いいぞ」


 噴水の前でそんな会話をしている少年少女。服装から考えるに少女は位が高く、少年は少女を護衛する使用人のように思える


「いつも見つける方だから、今日は先に隠れたい!」


「仕方ないなぁ。じゃあ20数えたらすぐ見つけにいくからな」


 後ろを向いて数え始めるとすぐに隠れる場所を探す。かくれんぼは数ある遊びの中で大好きなものだが、いつも見つけることができずに最終的にはヒントをもらって見つけ出すことが多かった。なのに自分が隠れた時はすぐに見つかってしまう


 今日こそは少しでも長く隠れれる場所を探すが、あいにく、ここはひらけている庭園のため隠れれる場所が少ないことに気付いた。目に入るのは噴水の裏や大きめな鉢植え、木と木の間くらいしか無い


 一番いいのは木と木の間だと思ったが、確実にドレスが汚れてしまうし顔や髪も汚れてしまうかもしれない。そんなことになったらお母様は困った顔をするだろう。それは見たくなくて仕方なくコウから見えない壁の後ろに隠れることにした。反対側から来られれば確実に見つかってしまうのだが、ここはかくれんぼをするのに向いていない場所だっただけ


 数え終わったコウが動き出したのを壁からコッソリと覗き見する。自分がいる方とは逆の方へと歩いていったのを見て、場所を移動する。こうやってコソコソと移動すれば見つからないかもしれない!と思いコウの行動をみる


 二箇所くらい移動した時、壁になにやら不思議な模様が彫られているのを見つけた。なにげなく手をもっていくと


 ‘汝、大天使族。その紋章により扉を開こう’


 どこからともなく聞こえた声とともに目の前の壁が開くと下へ続く階段が現れる。その先は真っ暗で何があるのか全く見えなかったが、恐怖心よりもかくれんぼで見つからないのでは!?という気持ちの方が勝ってしまい、暗闇の中へと足を進めた


 真っ暗だと思っていたが、階段を一段、また一段と降りると壁にある蝋燭に勝手に火が付き足元を照らしてくれる。だが、進めば進むほど恐怖心の方が勝っていき戻ろうと後ろを向くも入ってきた扉はすでに閉まっていて、戻るに戻れなくなってしまった。どうしよう、と立ち止まると下の方がうす明るくひかっているのに気付く


 もしかしたら誰かがいるかもしれない。階段を降りるスピードを速めるとガシャン、ガシャンと金属音が聞こえる。その音は明かりがある方から聞こえてきたため、本当に誰かがいるかもしれない。助けを求めることができる

 一番下に着いて壁からヒョッコリ顔を出すと、そこに居たのは鎖に繋がれた男性だった


「あ?ガキ?」


 誰かと思ったのか、目の前に現れた少女に疑問を抱いたようでポカンとしている


「お兄さん……どうしたの?」


「見てわからねぇのか」


 両手首を鎖で繋がれて鉄格子の中にいる人は悪いことをした人だと教わったような。治療を受けていないのか顔や体のあちこちに傷ができていて、一部は時間が経っているのか古傷のようになっていた


「何か悪いことしたの?鎖に繋がれてる人は悪いことをしたからってお母様が言ってた」


 この発言を聞き、一瞬ニヤリと笑った男性だったがすぐに憔悴しきった顔になる


「俺は何もしてない!君の()()()()を助けようとしたのに……犯人に間違われたんだ!」


「お母様を助けようとしてくれたの?」


「当たり前だろ。君のお母さんは()()使()なんだ。大天使をお護りするのは絶対だから!だが、俺にはもう……あまり力が残ってない。君にもわかるだろ?この鎖に力が吸い取られてる」


 そう弱々しく言われれば、おかしい発言があったにも関わらず疑うことを知らない50歳(人間でいう5歳)は簡単に信じてしまう。それに確かに鎖は力を吸い取っているようで時々、大きく膨らんだりしている。どのくらい抵抗をしていたのか手首からは血が滲み出ていた


「血がでてる。痛い?」


「この鎖……俺には外せないから」


 悲しいような、寂しいような、そんな表情をされると兄のことを思い出した。50歳離れている兄は見た目が自分や母親と全く違い、天界では珍しい黒い髪に黒い瞳をもっているため、使用人たちに魔界の子なんて呼ばれていた。少しでも認めてもらいたくて日々、努力している姿を見てきたがたまに悲しそうな、寂しそうな複雑な表情をみせる

 それを見て幼いながらも兄のためになにかをしたいと思ったが、拒否をされなにもできなかった


 今度こそは役に立ちたいと思い、鉄格子の前まで来くるとしゃがみ込む。これなら少し手を伸ばせば鎖に届きそうだ。だが、鎖の外し方なんて教えてもらったことがない


「どうしたら外せるの?」


「君が触れるだけで…いい」


「そうなの?」


「大天使の血を受け継いでるからな……っててて」


 鎖が大きく膨らむ。また力を吸い取ったということだ

 触れるだけで外せると言っていたが本当のことだろうか?なにかをするには母親の許可が必要なためどうしようか迷ってしまう


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