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繰り返す悪魔ー①ー

「っで、どうして反逆者がまだこの席にいるんだよ」


 今日は王と幹部の集まりがあるため、先にそろっている幹部間で会話がされていた。昨夜のことは当然のように城中に知れ渡っているわけで、ベルは楽しそうにシンに言ってきたが無言を貫き通す


「なんか言えよな。お前が王のお気に入りたか知らねぇけどさ〜姫さんもなに考えてるかわかんねぇし」


「姫は関係ない」


「シン。150年の間、一番世話をしてきたからと言って少し姫に肩入れしすぎじゃないか?」


「そんなことはない」


 黙って聞いていたエルも入ってきた。段々とヒートアップしてきて口論となりそうになった時


「はいはい、そこまでにしないと。王がくるよ」


 リオンがそう言えば、ピタリと静かになり立ち上がっていた者たちも椅子に座り直す




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 目を覚ましたら朝になっていた。昨夜のことはあまりよく覚えていなくて、シンを戻すのに必死だった…あれからどうなったのか

 すると勢いよく扉が開く


「わ〜ん!姫様〜!」


「メ、メル!?どうしたの!?」


「シン様がいじめるんです!」


「ちげーよ」


 メルに続いて入ってきたのはアザもなく、騎士服のままのシンだった。昨夜はなんとかなったようでよかった…安心していると、シンから小包みを渡される。どうしたらいいのかわからず、ジッと見つめて動かないでいると


「あーもう!早く受け取れ!」


「あ、ありがとう。開けてもいい?」


「ん」


 小包みを開けると、うす紫色のブレスレットが入っていた。この色はお母様の瞳の色と同じでとても嬉しい

 メルはそれをみて普段、リンにお届け物をする時は自分に預けることが多いのだがプレゼントだったため、シン自身から渡したくて言い合いになったのだと理解した


「ありがとう、シン!とっても嬉しい!」


「昨夜の礼だ。だがお前や王が決めたことだからって渋々、黙ってるやつが多い。でもまたすぐに実力で認めさせてやる……これからも全力でお護りいたします」


 そう言って右手を握られるとブレスレットを付けてくれる。その後、ブレスレットに口付けをされた


「シン……なんでも一人で抱え込まないで。全部じゃなくていい、少しでいいから……私たちにも手伝わせてほしい」


「あぁ。ま、こいつには言わねぇけど」


 メルを指差してそう言えば、メルは怒りながら抗議する。ふと扉を見ると少し開いていてそこから誰かが去っていった気がした。ジッと見ているとメルが声をかけてきた


「誰かに見られてた気がするんだけど……気のせいかも」


 シンが様子を見にいってくれたが、そこには誰もいなかった。なんだか嫌な予感がする…そう思って窓の外をみると、いつもよりドンヨリと曇っていて嫌悪感を増幅させた

 時間になったためシンは公務へと向かった。今日は特に何も予定がないためメルと2人でお茶をすることにする。メルの淹れてくれるハーブティーは本当に落ち着くし美味しい

 ドドドドドと急に地鳴りのような音が聞こえると窓ガラスがガタガタと音を立てて、小物が床に落ちる


「なに……この感じ」


 ピリピリとした静電気に似た何かに触れているような感覚に不安を感じていると急に扉が開かれベルが入ってくる。何かを言うよりも先に腕を引っ張られ無理矢理連れ出された

 メルはそれを見て急いでシンを探しにいくとシンもこちらに向かってきていたようですぐに会うことができた


「シン様!姫様がベル様に連れて行かれてしまって!久々に大きな反動なので、何か嫌な予感がします」


「急いで探しにいく!お前は部屋で待機してろ!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「あ、あの!なんなのですか!これは一体……」


 ベルに連れられやってきたのは城から少し離れたところにある円形状の建物。見たことはあったが何かに使われていたことは見たことがなかった。そこには貴族や王族まで集まっていて上を見上げている


「大きな反動ね」

「どんなモノが堕ちてくるのかしら」

「人間?それとも天使?」

「こんなに大きいとよほどの地位だったのかしらね」


 反動だの地位だの訳の分からないことをたくさん言っていて何が起こっているのか全然分からなかったが、堕ちてくるという言葉で理解できた。ここに今からよほどの地位だった人間か天使が堕ちてくる。この建物は堕ちてきたものを確認する場所というところか


「姫さん、これからこの国を導くならこういう現場も経験しとかないとな」


 ベルはここへ連れ去ってきた本人で自分が天使だと知っている数少ない内の一人だ。なのにもしかしたら天使が堕ちてくるかもしれないのをこの場で見ろと言ってくる。とても愉快に楽しそうに口角をあげてニヤニヤとこちらを見ていて不愉快だ


「毎日堕ちてはきてるが、これほど反動を感じるやつが堕ちてくる場合は立ち会いが必要なんだよ。今回は姫さんもって王から言われてさ」


「シファ様が?」


 シファも天使だと知っているはずなのに、そのシファからの指示でベルが連れてきたのか…シファが何を考えているのか、また分からなくなってしまった

 すると、建物の下の方が騒がしいことに気付く。ベルが何事か確認しているとそれは紛れもなくシンの声で、思わず走り出そうとするが止められる。抵抗をしていると落雷のような轟音と共に何かが上から降ってくる

 モクモクとした煙が漸くはれてきて見えるようになった


「ふーん。なかなかの堕天使だなぁ…どうだ?姫さん」


「いやーーーーーーーーーーーー!!!!」


 その姿に釘付けとなって目が離れない

 ボサボサの髪は自分と同じ髪色でブレスレットと同じ瞳は少しくすんでいる。随分とやつれてしまい見た目はかなり変わってしまったのだが間違いなく


「お、母……様」


 あまりの衝撃に鈍器で頭を殴られたようだ。グラリと後ろにふらつくとシンが支えてくれた


「大丈夫か!?」


「あ……あれ、あ、れ、は」


 体は震えているのに、口角はあがっていて明らかに動揺していて様子がおかしい。だが、王が来ないということは様子見をしているのか、こうなることを予測していたのか


「ベル、姫には刺激が強すぎた。休ませる」


「へいへい」


 当初の目的はすでに済ませたため、あとはシンに任せればいいだろう。シンはリンを抱きかかえ下に降りると部屋につれていく。中に入れば明らかにおかしいリンをみて心配するメル

 シンがベッドに寝かせもずっと一点をみてブツブツと独り言を言っている


「ち、がう。いや、だ……いや」


「姫様?大丈夫ですか?」


 “リン……少しだけですよ”とアイスを渡してくれた

 “リン、大丈夫です。いつも母がついています”と不安な時は抱きしめてくれる


「いや、いやーーーーーーーーーーーー!!いやっ!!やぁ!!!!」


 急にベッドの上でジタバタと暴れだすリン。シンは怪我をしないように押さえ込む


「混乱してる!早く治療師を呼べ!」


「はい!」


 メルは急いで救護室へ向かう。いつもと全く雰囲気が違うリンを見てどうすればいいのか分からなかった。リンがあんなにも取り乱すということはよほどのことがあったのだろう


「すみません!姫様が激しく混乱しているため落ち着かせるのを手伝ってください!」


 メルの言葉を聞いてその場にいる全員がリンの部屋へと向かう。中に入ると混乱状態のリンがシンによって押さえ込まれていた。一人の治療師では全く効果がなかったので、3人がかりで治療をしていく

 暫くするとリンさ落ち着き、暴れることをやめた。だが次に言った言葉は


「誰か……私を、殺して」


 だった。すると、そこにシファが現れリンと2人きりにしてほしいと言うとみんなが退室する。殺して、と連呼するリンの頬に触れるとピリピリと静電気のようなものが走った


「だ、れ……?」


「僕だよ」


「シファ、様?」


「そう。君が……混乱した……って、聞いて」


「なぜ、なぜあの場にいけと……命じたのですか」


「君が……王妃となる、なら……あのような……場も、経験して……おかないと……いけないって……思った、から」


「お母様だと!ご存知だったんじゃないんですか!?」


 そう叫ぶと周りに結晶のイバラができあがる。そのイバラはジジジと音が聞こえるくらい電気のようなものを発していて、少しでも触れれば怪我をするだろう


「君の……母親が……落ちてくる、とは……思わなかった。本当に……ごめん」


 信じられない。今はなにを言われてもシファの言葉は自分に届くことがなく、疑心暗鬼になる


「もう出ていって。誰とも会いたくない」


「わかった……あの2人にも……会わないって、ことで……いいの?」


 誰にも会いたくないと言っておきながら、シンとメルには会いたかった。そのため、シファの返答に困っていると


「あの、2人と……僕だけは……この、部屋に……入れるように……しておく、ね」


 それだけ言って退室していった

 見た目はかなり変わってしまったけどもあれはお母様だった。どうして、どうして堕ちてしまったんだろう…いや、そんなの分かってる


「お母様を堕としたのは……私だ」

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