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白く輝く羽根

「お願い!出して!メルのところに戻らないと!」


 何をしてもビクともしなかった球体が木の上へとあがったところで解かれる。このままでは落ちてしまうため、羽根を広げようとした瞬間、シンに受け止められた


「無事か!?」


「私は。でもメルが!メルが!!」


「……戻るぞ。お前を危険な目に合わせられない」


「なんで!?なんでみんなそう言うの!?」


「お前は王妃だろ!失ったらいけないものだ」


 失ったらいけないのは自分だけじゃない。王と王妃でこの国ができているわけではないのだ……覚悟は決まった


「王妃だからこそ、私を支えてくれているメルを見捨てるわけにはいかない!救えるものは救いたいし、助けたいから!」


 白く輝く羽根を広げるとメルのところまで戻る。シンの引き止める声が聞こえるが、ここで揉めている時間がもったいない。必死のスピードで戻るとちょうどメルに剣を突き刺そうとするのが目に入った


「やめなさい!!!!」


「なに!?」


 目の前の剣が何かに弾かれたあと、舞い降りる白い羽根


「この……羽根は…」


「メル……ごめんなさい」


 リンに触れられると優しく暖かい光が包み込み、癒しの力であっという間に痛みや苦しさがなくなり傷が癒えていく


「これは……癒しの…力」


「もう大丈夫よ」


「姫様……あなた様は」


「これは傑作だ!王が選んだ王妃が天使だったとは!実に素晴らしい!綺麗で……手に入れたい」


 感動の再会に横やりを入れてくる汚い声

 舐め回すようにリンを見たあと、もう一度騎士たちにリンを捕えるよう命令するが、誰一人として動かなかった。それもそのはず、リンの使った癒しの力で操っていたものが浄化され立ってはいるが意識はない状態だ


「どうした?早く捕えよ!」


「その必要はねぇよ」


 漸くこの場に姿を現したシンは忍者3人も連れてきた。全員、気絶していて戦闘済みのようだ

 そして、素早く騎士たち全員も戦闘不能にして男の前に立つ。男は大切な会議中のはずなのに、なぜここにいるのか理解できていないようだった


「王が姫の危機を見逃すとでも?まぁお前が色々とやってくれたおかげで、多少来るのが遅くなったけどな」


 リンの予想した通り、馬車は全て使えなくなっていたし橋は崩されその先の森には火が放たれていた。住民の避難やら二次被害の防止をしていたら少し遅くなってしまったため仕方なく飛んできた。緊急を要するとき以外は空を飛ぶことは禁止されているため、飛んでくるとは思っていなかったのだろう


「ならば……ここで全員殺してやる!!!!」


 気が動転したのか男は剣を再び持つと強化のスキルを使用し、シンに向かっていった。だが、訓練されている騎士にとっては全て見えているようであっという間に拘束された


「命令したのは誰だ?」


「いずれ……貴様らに……天罰がくだる」


「天罰か、嫌な響きだな」


「くれぐれも、気をつけてください……ねっ!!」


 男はリンに向かって、口から何かを吐き出す。突然のことすぎて避けることができないでいるとシンが庇い、代わりに液体がかかる


「くくく……苦しめ」


 それだけ言うと口に仕込んでいた毒を飲み込み、男は絶命した。結局、誰の差し金だったか聞くことはできずこの戦いは終わった

 すると、シンが膝をついて苦しそうにする


「シン!!今、浄化します」


「いい。これはその力でどうにかなるもんじゃねぇ」


「どういうこと?」


「それより早く城に戻るぞ」


 騎士たちの意識が戻ったようで次々と起き始めていた。急いで馬車の準備をしてシンは拒否をしたが無理矢理、馬車に乗り込ませる。明らかに顔色が悪くなってきているし、冷や汗もでている。ハンカチで拭おうとしたら手を払われてしまった


「あの男が絶命したのに解かれないということは別のものがかけたのですね」


「まだ近くにいるかもしれないってこと!?」


「落ち着いてください。もしそうだとしても簡単には姿を現すことはないと思います…それよりも先ほどからシン様の力が徐々に弱ってきてます。もし、闇の術だったらやがて心の闇に飲み込まれてしまいます」


 闇に飲み込まれるなんて、つい先ほど目の当たりにしたばかりだ。このまま放っておいたらシンまで魔物化してしまう……そうなったら王は迷うことなく彼を殺すだろう


「解く方法は術をかけた人が消えないといけないの?」


「そうですね……それかかけた人に解除してもらうか。例え見つけ出したとしてもおとなしく解除してくれるとは思えませんが」


「探さないと」


 今にも馬車から飛び出そうとするリンをシンが引っ張って止める。だが、その手は振り解こうと思えば簡単に振り解けてしまうほどの力しか入っておらず、手を掴み一か八か浄化をしてみるも全く効果はなかった


「シン」


「……戻るぞ」


「どうして……シンは今、苦しいんでしょ!?いつも私のことばかり……自分のことも大切にしてよ!」


 その言葉にフッと微笑むシン

 ゆっくりと馬車が停まり、城についことを知ると一番に外へでる。するとシファがいた


「怪我は……ない?」


「私は……でも!シンが!」


「すみ、ません。誰が、命令したか……聞き出せ、ません、でした」


「そう。じゃあ……詳しい……報告を……聞こう」


 シンの心配をすることも治療をすることもせず、自分の手を引いて中へ入ろうとするシファに怒りを覚える


「シンは!シンは!!このままなのですか!?」


「知ってると……思うけど……あれは……そのもの、自体を……消さないと……解けない」


「では探さなくては!!」


「どう、やって?誰が……かけたのか……見て……いたの?」


 その言葉になにも言い返せない。誰がかけたかなんて検討もつかないし、実際に見たわけではない。自分の力でどうにかなると思っていたが、浄化できないものがあることを初めて知った

 私は何も分かっていない


「少し……落ち着くと、いい。戻ろう」


 シファに見送られ、自室へと戻る。何も言わずともメルは一緒にいてくれた。本当にいつも感謝しかない

 シンを失うことが怖い。特別視しているのではなく、自分を庇ったせいで代わりに術をくらってしまったわけで。そのせいで魔物化してしまって、殺されるなんてごめんだ

 すると暖かい飲み物がでてくる


「メル……」


「姫様が天使だと知って正直驚きました。でも、それと同時に姫様は姫様なんだなって思いましたよ!」


 そういえば、前にメルは天使に対してあまりいい印象を持っていなかったように感じた。自分が仕える人が天使だと分かっても変わらず、こうして暖かいお茶を淹れてくれる


「ありがとう、メル」


「本日は席を外しますが、お一人で大丈夫ですか?」


「うん。少し落ち着いたみたいだから」


 時刻をみればもう少しで0時を過ぎようとしていた。さすがに深夜まで自分のところに拘束しておくわけにもいかない

 メルは失礼します、と退室していく。再び静寂に包まれた自室は少し怖かったが、深呼吸を数回繰り返して落ち着かせる。なんとも嫌な胸騒ぎがしていて、これから先なにも問題がおきないことを願う

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