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久々にみた球体

(あぁは言ったけど、闇を消すなんてどうしたら)


 シファには面と向かってあんなことを言ったものの、自分でもこの先どうしたらいいのか分からない。一人で悩んでいるとパタパタと足音が聞こえ


「姫様ー!もう!急にいなくなっちゃうんですから!心配しましたよ!」


 と見覚えのある青いツインテールを揺らしながらこちらへと走ってきたメル。そういえば、外に出る許可をもらいにいってくれてたことを思い出す


「ごめん……少し王とお話しをしていたの」


「そうだったのですね。あ、ドレスが汚れています!着替えましょう」


「ありがとう。それで許可はでた?」


 先ほどのことを考えれば許可などでるはずもないと思っていたが、メルの口からあっさりと許可がでたのだ。不思議に思いながらも今しかないと思い、ドレスを着替えてから馬車に乗りお城の外にある一般人の学校へと向かう

 初めてお城の外に出たが、道も綺麗に整備されており護衛などもしっかりと配置されていた。そんなに長い時間移動せずとも学校に着くことができた


「これはこれは、姫様直々にこちらへいらっしゃるとは」


「初めまして。急な申し出にもかかわらず受け入れてくださりありがとうございます。少し様子を見させて頂きますね」


 校長と挨拶を交わし、校門をくぐるとワイワイと子供たちの声が聞こえる。天界とは違って、学年分けはしてあるが教室らしい部屋はなくとてもフリーに感じた。今は休み時間なのか、外で遊んでいる


「わぁー!姫様だー!」

「本当だ!」

「すげぇ!本物だ!」


「みなさん、こんにちは」


 急いで駆け寄ってくる子やお花をもってきてくれる子など、さまざまな子が一斉にこちらへと集まってきた。ぱっと見、20人くらいだろう

 だが、一人だけポツンとその場から動かずにこちらをジッと睨みつけるように見ている子がいた。不思議に思い近付こうとするも


「今日はなにしにきたのー?」

「一緒に遊んでくれるの?」


 次から次へと声をかけられ、行く手を阻まれる。少し困っていると、先生が声をかけてくれて子供たちはおとはしくなった。ちゃんと学校としては機能しているようで安心していると


「なにが姫様だ!!!!」


 少し離れた場所で一人だけ立っていた子が大きな声を出す


「父さんと母さんを見殺しにしたくせに!姫様なんて、王様なんて、大っ嫌いだ!!!!」


 そう言って走って行ってしまった。先生が急いで追いかけようとするも、今一人しかいないため周りの子たちを放っておくことができないようで、メルにお願いをして探しに行ってもらった


「す、すみません」


 それは一体、何に対しての謝罪なのだろう。かなり動揺しているところをみると、姫である自分へ無礼を働いたことだろうと思った


「あの子について、少しお話しを伺ってもよろしいでしょうか?私はまだこの国を詳しく知っていく最中でして」


「はい。では、こちらへ」


 校舎内へと案内され、校長室へ入ると先ほどの校長と再び会話をすることになった。子供が行ったことに対しての謝罪をされ、それを受け取ると漸く椅子に座ってもらえた


「一年ほど前、あの子の両親は魔物に襲われた重傷をおいました。ですが、その森自体が立ち入り禁止の場所だったこともあり、勝手に入ったお前たちが悪い。と……満足のいく治療が受けられず、そのまま…」


「そんなことが……ですが、なぜわざわざ立ち入りが禁止されている森へ?」


「友達とかくれんぼをしていた時にたまたま森の中へ入ってしまったようで……ご両親は危険を覚悟のうえで入っていったと思います。あの子を魔物から護るようにご両親は必死になり、傷つくところを見てしまった」


「では、一番傷付いているのはあの子ですね」


「え…?」


 何か間違ったことを言ってしまっただろうか。驚くようにこちらへと顔をあげた校長の反応に困っていると、メルが子供をつれて入ってきた


「城に連れていくなり、なんなりすればいい!」


 強がってはいるが拳が震えているのが分かる。立ち上がって近付くと目をギュッと瞑って何かに耐えるような感じなった

 たたかれたり、酷い言葉をあびせられたりしてきたのだろう。まだ60歳くらいなのに必死に耐えてきたのだ。優しく抱きしめるとビクッと驚かせてしまった


「大丈夫、大丈夫です。ご両親のお話しは聞きました……辛かったですね。私も昔、同じような思いをしました……大好きな人を失う辛さはよく分かります」


 無言のままだったが、少しするとシャクリをあげる声と肩に落ちてくる少し暖かい水分で泣いていることがわかる


「もう我慢しなくていいのです。失ったものは取り返すことはできないけれど、新しく築いていくことはできます」


 この言葉は同時に自分にも跳ね返ってくる。シファに言われた家族のようなもの、それが今の自分にはあるがこの子にもあるのだろうか


「ひ、め……さ、ま」


「よく頑張りましたね、あなたは誰よりも強い。強いから一人で背負ってしまいます……先生やお友達をたまには頼ってください」


 その言葉に影響されたのか、今まで誰にも言えなかった胸の内を言葉にしてくれた。本当はみんなが羨ましくて、お父さんやお母さんの送り迎えがあって自分だけいつも一人だったけど、それは仕方ないことだとずっと我慢していた…と


「私が時々様子を見にきます!その時でもいいのでたくさんお話ししましょう。私に色々と聞かせてくれませんか?」


「びめざまーー!!!!」


 止まることを忘れたかのように流れ出てくる涙をハンカチで優しく拭う。今までこんな光景を見たことがなかった大人たちは唖然としてこの場を見ていることしかできなかった


「この方が王妃となれば、この国は変わるかもしれませんね」


「はい。姫様は本当にすごいお方です」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーー


「姫様、もう帰っちゃうの?」


「また来ます」


「約束だよ」


「えぇ」


 小指を交えてまた様子を見にくることを約束し、馬車に乗り込む。行きとは違う馬車や騎士たちだったが、これが魔界のやり方なのかもしれない…と深く考えるなかった

 馬車はゆっくりと出発する


「お城にいる治療師は少なくないのに、なぜあの子のご両親は助からなかったのかな。やっぱり一般人だから優先順位が違うの?」


「この国、この世界では癒しを使用できるものが2、3人しかいないんです。普通の怪我ならば治療師で大丈夫なのですが、魔物の怪我となると浄化が必要になるので」


 普通の怪我と魔物から受けた傷では治療方法が違うなんて初めて知った。そもそも天族はみんな、浄化ができるためそこまで深く考えたことがなかった


「浄化の力が使えるのはどういう人?」


「天使から堕ちてきてまだ力が残っているものか、無理矢理入れられたものです。魔族に天族の力を入れるため、成功する確率がとても低くて」


「だから少ないのね。誰も望まないから」


「望まなくたって勝手に行われます。実験されますから……今いる浄化師は全員成功したものたちです。だから、そのものたちが居なくなる前に次のものを作らなければいけないのに中々増えません」


 無理矢理天族の力を入れる人体実験が行われていると言うことだろう。シファはそれを知っているのだろうか、もしかして


「王がそうしろと言っているの!?」


「王が言っているかは分かりません。ですが、噂では貴族の方々が自分の手柄欲しさに行っているとか」


 今日は頭が痛くなることばかりだ。満足に治療すらしてもらえない一般人に、成功する確率が限りなく低い人体実験

 お城から少し外に出ただけでこれだけの悪い問題点が見つかり、今悩んでいることにプラスして解決しなければいけないことが増えた

 急にグラリと馬車が揺れると外が騒がしくなる。ドアが勢いよく開くと忍者のような格好をした者が現れた。それを見たメルが反対側の窓を蹴り割ると急いでリンを外へ連れ出す


「姫様の護衛を!」


 メルが急いで声をかけるも騎士たちは誰一人として動こうとはしなかった


「なにをしている!早く護衛を!」


「無駄だ」


 ふくよかな男性が現れ、パチンと指をならすと騎士たちが全員男のところへと行き、剣を抜いてこちらに向ける


「こんなことをして、王が黙っているとでも」


「王たちは大切な会議を行っている。それにここまで来るには時間がかかるでしょう」


 土地勘のない自分でも分かるくらい今いるところはお城からかなり離れた森の中のようだ。助けに来るのに時間がかかると言っていたから馬車を使えなくしたり、橋を落としたりしたのだろう


「姫様、私が道を開きます。そうしたら逃げてください」


「それじゃあメルが一人で相手をすることに」


「今、この国はあなた様を失うわけにはいきません!あなた様は王妃なのですよ!」


 メルが言っていることが正しい。謀反を起こされ、姫も勇敢に戦って死にました。なんてことが万が一でもおこったとしたら、この国はこれから先どうなってしまうか分からない。だけど、世話役であるメルがこの人数の兵士を相手にすることは無理なはずだ


「幸いにも周りは森です。うまくまけるはずですから」


「でも!!メル一人を残すなんて!!」


「お話しはそれくらいにしてもらおうか。やれ」


 こちらへ忍者と騎士たちが一斉に向かってくる。空に飛べば攻撃をかわせるだろう。でも羽根を広げたら天使だとバレてしまう


「天空の加護、光の導きより輝きを放て!」


 メルが唱えると閃光が走り、眩しさから敵は顔を覆っている


「姫様!今です!」


「でも!!」


 メルを失いたくない、けど今はまだ天使だと知られるわけにもいかない。どうしたらいい、どうすればこの場をおさめることができる

 すると明るい球体に包まれた


「メル…?」


「姫様……メルは姫様にお仕えできて本当に嬉しかったです。だから、だから!!ここで失うわけにはいきません!!手荒なことをしてしまいますが……どうかご無事で!!」


 メルは球体を持ち上げるとおもいっきり森の中へと投げ飛ばした


「メル!!ダメ!!メル!!」


 叩いても引っかいても球体は破れることがなく段々とメルから遠くなっていく

 忍者達が後を追おうとしていたため護身用に持っていたナイフで阻止をする。それに驚き森の中へと忍者たちは姿を隠した

 球体が森の中で見えなくなったのを見て騎士たちの相手をしていく。だが、場数が全く違うためすぐに背後を取られてしまい刺されてしまった

 一度、足を止めてしまったら2、3人の騎士たちが囲みまた刺される。いざと言う時のために自己流で特訓をしていたが、数が多いとなんの役にもたたなかった


「余計なことをしよって!すぐに追え!なんとしてでも始末するのだ!」


「い、かせ……ない」


 倒れてもなお、男のズボンの裾を掴み離さないようにするが、腹に一発蹴りを入れられると口から血が出る。それでも離さずにいると騎士から剣を受け取る男


「小汚い奴隷が気安く触るな」

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