プロローグ
夜、とは言っても天界の月は輝きが強く真っ暗にはならない。だが、木々が生い茂る森の中へ入ってしまえば話しは別だ
今、ちょうど一組のカップルが森の中を必死に走り抜けようとしている。何かに追われているのか、はたまた確認しているだけなのか、やたらと後ろを振り向いては月明かりが届きにくい森の中を走っていた
二、三度、後ろを振り向いた頃、男性が膝をついてしまった。どうやら負傷しているようで、よく見れば走ってきた所にはたくさんの血痕が残っている
女性が駆け寄り、声をかけるとまた走り出そうとするが男性が手を振り解いてしまった。どうやら二人は揉めている様子だが、その後ろからは甲冑を身につけた騎士が五、六人迫ってきている
それに気付いたのか一瞬、とてつもなく明るい光があたり一面を照らすとそこそこ大きな球体ができおり、騎士達が辿り着く前にその球体はどこか遠くへと飛んでいった
「いたぞ!反逆者め!」
そこに女性の姿はなかった
追いかけてきた騎士達は男性を取り囲むと、負傷しているにも関わらず無理矢理立たせ歩かせようとする。だが、傷口が痛むのかすぐに膝をついて歩けなくなってしまう男性に痺れをきらした騎士の一人に髪を掴まれ、引きずるように歩かされる
騎士達の目的は男性だったようで、消えた女性を探すそぶりは一切みられなかった