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婚約破棄系統

ニセモノの恋に溺れているのに助けてくれない聖女なんて婚約破棄だと言われたんです。

作者: 美香

うーん、言いたい事が纏まらない……。

 神聖魔法と呼ばれる魔法があります。回復、浄化、守護の3つです。邪仙魔法と呼ばれる魔法もあります。損傷、汚染、破砕の3つです。前者の魔法に長けている者を聖女、後者の魔法に長けているものを魔女と呼びます。どちらも女性のみに出現する魔法であり、味方に付ければ、国力を上げる事が叶いますので、目覚めた者は国に召し上げられます。

 私こと、イクア・ウェイテが回復ーー怪我や病を治す魔法ーーに長けた聖女として目覚めたのは10才の頃。ビードルーフ王国のウェイテ辺境伯令嬢だった私は、同じ年の王子アトラクション様と婚約する事になりました。


 しかしその凡そ5年後……。


 12才で入学する貴族学院を卒業するその年の卒業パーティにて。

「イクア・ウェイテ! お前との婚約を破棄する! 理由は私がチャームとニセモノの恋に溺れているのに助けてくれないからだ!」

「そ〜なんですよ〜、聖女の癖に、婚約者を助けてあげないなんて、性根が歪んでるんですよ〜!」

 コレでもかと言う程、アトラクション様とチャーム・グラマー男爵令嬢が寄り添って、私を糾弾したのです。


 ニセモノの恋……? 真実の愛でなくて?


 巷で流行りの真実の愛の物語とも、真実の愛【ザマア】の物語とも一味違います。冤罪を被せて来る訳でも有りません。違った処で結果は同じですが。

「婚約破棄の件、承りました。一応、申し上げますが、私は精神の安定を齎す浄化は使えません。私が使えるのは、怪我や肉体の病を癒やす回復だけです。それとそもそも浄化は精神疲労を回復するものであって、殿下の浮気性やチャーム・グラマー令嬢の知能を治すものでは有りません。」

 不敬と言われればそうですが、聖女や魔女には国王と同様の権威がありますから、罰せられたりは………、




「偽聖女を捕らえよ。」



 え。



 私は処刑されました。聖女を騙った罪で。……私は知りませんでした。聖女とは、魔女とは、教会に3種の魔法を使える事を認められて、名乗れるものである事を。一種類だけならば、聖女とも魔女とも認められる事は無い事も。一種類だけならばさして珍しくもない事も……、それこそ男性にだって使い手が居る事も……。


 それは常識で知らぬ者は幼児くらいだと言う事も。


 アトラクション王子とチャーム令嬢は汚染を使えました。汚染とは精神に対する魔法で、対象を魅了し、洗脳し、最後は傀儡にしてしまうのです。殿下達は魅了段階で留まっていたのですが、それは素養が高くないからであり、素養が低いと任意では発動出来ません。


 ーーつまりは暴走と言う形でしか発動出来ないのです。


 どう言ったタイミングが偶々2人は目が合った瞬間に互いに魔法が暴走し、互いを魅了し合ってしまったのです。

 よって本来ならば私が浄化により、解除しなくてはならなかったのです。それを理解出来るのも、実践出来るのも、聖女だけなのですから。

 それを放置した私は既に聖女として評判が悪かった様で……。そして自ら「浄化を使えない」と宣言した事で、あの場に居た国王様に偽聖女だと判断されたのです。


 ですが……、どうして私は知らなかったのでしょう。


 記憶を辿れば父に有りました。父は母を深く愛していましたが、その母が病で亡くなった事で歪んだのかもしれません。母が亡くなったタイミングは私の目覚めとニアミスしていたので、恐らくは逆恨みされたのでしょう。父は私に聖女と偽らせて、処刑させるおつもりだったのです……。当然、辺境伯家は無事で済みません。自らごと、破滅する事が復讐だったのだと思うのです………。








 偽聖女の父は語る。曰く、そもそも妻が病を得たのは難産の結果であった。曰く、娘の回復魔法の目覚めは、まだ妻が亡くなる前であった。曰く、直ぐに回復魔法を掛ければ助かった可能性があった筈だ。曰く、しかし娘は拒否した。曰く、怪我をした小鳥を一瞬で治療した事で発現に気付いたが、その鳥を飼いたかったのに、治った途端、逃げ出してしまい、機嫌が悪かった。曰く、説得の最中に妻の容態が急激に悪化した。曰く、意固地になった娘はそれでも妻に回復魔法を掛けなかったのだと……。


 子の教育は親の勤めである。そもそも子は親の思い通りに育つものではない。そんな子供なら見捨てても仕方無い。これは親の器を悪い意味で超える子だから育てられないと言う事なのだ。親の力量不足であるとも言える。


 力量不足な親が義務を放棄し、王家に押し付けた。最低の嘘付きで。


 押し付けられた側としては、王家を相手取った詐欺の主犯で処刑一択しかない。娘はその連座だ。常識を教えられなかった被害者ではあるが、そうは取られなかった。貴族院でも王子妃教育でも、聖女や魔女に付いて学ぶのだから、知る機会は当然にあったのだ。当人が真面目に勉学していなかった等と、誰が思うのか………。

 

 尚、この聖女騙り事件は世界中に発表され、教会は聖女・魔女認定書を簡単に偽造出来ないものに変えた。また聖女や魔女に認定された者の記録を発表する事にした。聖女や魔女に対して、国が機密扱いで公表しないケースもあった為、教会は可笑しい事に気付いても、証明する事が叶わないので、口を噤むしかなかったからだ。それを確認を怠ったと言われたら……、只の怠慢だと言われたら溜まったものでは無い。


 尤も、本当に怠慢でなかったとは証明出来ないのだが…………。

 





 親の器と子の歪み。家庭と社会の責任。究極、何処までなら「子に罪は無い」と言えるのか。親の立場と社会の一員としての立場、受容率(子に罪はない)の変化は………………?








イクア・ウェイテ/take away 奪う/テイクアウェイ


ビードルーフ王国/be fooled 騙される/ビーフールド


アトラクション王子/attraction 魅力、魅了等/アトラクション


チャーム・グラマー/charm 魅力、魅了、魅惑等/チャーム/glamor 魅力、色気、幻惑等/グラマー

お読み頂きありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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