94:食事と買い物
「わー!凄いご馳走!」
目の前には、お父さんたちが腕を振るってくれた料理が並んでいる。
鶏とお揚げと人参の炊き込みご飯。おいなりさん。鰤の照焼き。鯵のフライ。山芋の酢の物。焼き豆腐入りの煮物。ふろふき大根。煮豆。浅漬三種。じゃが芋と玉葱のみそ汁。
ふろふき大根は嬉しい!シュシェーナ王国で、大根と言えばラディッシュ。次は黒大根。その次が緑大根と青首大根で、この二種類はあまり流通していないんだ。
だから、あまり量は確保できなくって、実は無限収納にもう青首大根は残っていない。
ラディッシュも美味しいが、私にはやっぱり青首大根が一番身近なんだもん。これが食べられるのは、普通に嬉しい!
ご馳走は和食だけでもかなり並んでいるが、洋風のご飯も沢山ある。
オムライス。シーフードのトマトソースパスタ。鶏マヨ。野菜色々のチーズ焼き。卵とトマトの炒め物。ブロッコリーとパプリカの温サラダ。白いビーツの甘酢マリネ。じゃが芋とねぎのポタージュ。
ハイエルフさんたちは、子どもさんも魚が好きって伝えてあったんだけど……。フィリベールくんもいるので、和食が口に合わなくても食べられる物があるようにと、洋風のご飯も用意してくれたみたい。
「わーあ!優のお父さんもお母さんもサーラお姉ちゃんも、みんなすごいね!」
フィリベールくんも大興奮だが、リュカくんたち三きょうだいもそわそわしている。皆がそわそわしている料理の数々。お母さんもニホンショクの腕を上げていて、三人で作ってくれたんだ。
「これは……。食べるのが楽しみだ」
「ええ、そうですね。兄上」
今回はキナル第二王子だけでなく、都合をつけて王太子殿下までいらっしゃっている。
エルフさんは、大きな村の住人だけで国が滅ぼせると言われているそうだ。ハイエルフさんは、一家族で国が滅ぼせるとか。
だから、エルフさんは治外法権の村が許されているのだそうだ。人とはちょっと価値観や生活が違うから、無理に国に取り込もうとするととんでもない事になるのだそうだ。だから、各国に治外法権のエルフさんの村がいつくかあるものなんだって。
ハイエルフさんに至っては、滅多に人前に姿を表さないので把握のしようがない。しかもずっと家族単位で旅をされていて、村といった定住地を持たない。なので、ハイエルフさんたちは、エルフさんたちとは別の特別な法律があるそうだ。
今回みたいにお力をお借り出来る時は、接する人は少なく、でも、充分おもてなしを。それが法律に組み込まれた礼儀なんだって。
案内された部屋は、床暖房の設置された板の間に、ふかふかの絨毯が敷かれていて足元から温かい。そこに超大判のこたつが三台、隙間を開けてコの字に設置されている。そして、一人掛けの座椅子まで準備されているよ。部屋の真ん中側が、子どもたちの席になるようだ。
皆が揃うのを待って、少し遅くなったお昼ご飯。そして眼の前にはご馳走。皆、ついつい食べ過ぎた。
食事の間に、ジャドゥさんご夫妻と王太子殿下、キナル第二王子との顔合わせも和やかに終わった。
子どもができ、すっかり子煩悩になられたらしいお二方。ジャドゥさんご夫妻の三人の子どもたちとフィリベールくんを、大層構いながら食事なさっておられた。
ジャドゥさんご夫妻には、それが好印象だったみたい。ここから南の方にもトンネルを作る案があって、それもご協力して下さるって。
「優公の食事も美味しいが、そのような驚く料理が出る事もあるのだね」
「そう言えば……。時々、驚かせられたかもしれません。ただ、味はどれも良かったですよ」
「うん。おいしかったけど、魚の大きな頭のご飯。すっごくびっくりしたよ」
「お花のもようのオダマキィムシィはね!とってもかわいくておどろいたの!それにね、とってもおいしかったの!」
「おいち、いっぱい!おっきなトトのあやま、イヤっ!」
ハイエルフさんは、十歳くらいまで毎年歳を取り、二十歳くらいまでは二年に一度歳を。それ以降は、五年に一度歳を取る感じらしい。
それに当て嵌めると、長男のリュカくんは生まれたのは十一年前で、人の歳に照らし合わせたら十歳くらい。長女のゾエちゃんは七歳、次男のアーチュウくんはもうすぐ三歳。そんな三人の心を、王太子殿下とキナル王子は掴んだらしく、とても懐かれている。
だって、お二人の間にはリュカくんが座り、王太子殿下の膝にアーチュウくんが、キナル王子の膝にはゾエちゃんが座り、私たちと会ってからの事を一生懸命話しているんだよ。
あ、フィリベールくんは私の膝の上ね。知らない人が沢山いて、ちょっと緊張しているっぽい。それで、私の膝に座って甘えているみたいなんだ。
こんな事は、こたつだから可能だろうね。普通のテーブル席なら、こんな場で膝に座るとか有り得ないだろう。
◇
二時間程掛けたお昼ご飯が終わると、ちょっと休んでから中洲の町へ出掛けた。
私の家族全員と、ジャドゥさんご家族全員の大所帯だ。ジャドゥさんたちは、子どもたちだけ知らない場所に残して行けないって。私もフィリベールくんを残して行かない。それならとお母さんとサーラちゃん、カールくんも着いて来て、商品を選んでいる間、子どもたちを見ていてくれる事になったのだ。
お金の方は、増えたトンネル工事の報酬に、ジャドゥさんたちの買い物の代金は国庫から支払うそうだ。
普段、エルフさんたちと物々交換していらっしゃるジャドゥさんたちは、どうやって買い物なさる心算だったんだろう?
「報酬の一部として、買い物の代金を国が支払って下さる事になって良かったですね。報酬がなければお買い物、どうなさる心算だったんですか?」
「通路を作って進む時に、幾らか鉱石を拾っているの。宝石だったり魔石だったり、希少金属の鉱石がある時はそれだったりね」
「それを人族の村や町で換金して、お金は得ているよ。今はエルフの村で物々交換してもらえている、とても珍しい生活だ。
普通は人族の村や町で人に紛れ、食料なんかの必用な物は手に入れるから」
「ああ、成程」
換金出来る鉱石が手に入ると拾っておいて、必用な物があればそれを換金して買い物なっているのか。本当に、面白い生活をなさっているな。
ハイエルフさんたちの事も、許可が頂けたら色々お聞きして、お話を残しておきたいな。
「コンテナハウスは、ここが一番種類が揃っているそうです。ここから見てみますか?」
サスペンションの使われている箱型の大きな馬車を、キナル王子方が貸して下さったので、力の強いアイルに牽いてもらうと町までは直ぐだった。
「ええ。そうしましょう」
「他はいつでもいいが、これだけは今回買って帰りたいからね」
「ええ。木の家でも土の家でも、結界で雨風も暑さ寒さも防げるけれど……。清潔な環境だとかふかふかの寝具は、老いた両親に持って帰りたいわ」
買い物は、お年を召されたご両親の為のお品だったんだ。
「こちら、最近出た大型コンテナハウスになっております。60ftで、左右に各一つ、縦に三つ重ねられる型になっております」
「調理設備もお風呂も、魔石を使う物ね」
「部屋を暖めたり冷やす魔道具も、ちゃんとあるね」
「60ftの、縦二段にしましょう。これが今の家と、一番近い大きさだと思うわ」
「そうだな。これより大きいのは広すぎるし、そのくらいが良いね」
「部屋の数はどうしますか?ちょっと時間はかかりますけど、増やしたり減らしたりも出来ますよ」
「そうね……。一部屋はこのままで。私たちの部屋は少し小さくして、その分、子どもたちの部屋は広くしたいわね」
「今の家に近づけたいね。部屋の大きさだけって、変えられるかな?」
「大丈夫ですよ。どの部屋を、どんな風に大きさを変えたいですか?」
接客して下さった魔道具ギルドの職員さんと一緒に、ジャドゥさんたちから詳しくお話をお聞きして、ジャドゥさんたちの希望に沿う形を突き詰めていく。
「時々、歩くのがお辛そうなんですか?」
「それなら手摺りを付けて、場所によっては椅子を設置すると良い。手摺りは俺が付けよう」
「そうだね。お父さん、お願いします」
杖の代わりに手摺りとは何だ?となり、お父さんは仕事が増えたよ。この感じも久しぶりで、楽しい買い物の時間が過ごせた。
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