93:再会
[ブルヴィ、今回も宜しくね]
[うむ。任せろ]
料理のレクチャーやダイエットのための鍛錬。それにワイヤーワークやなんだとしていると、あっという間に日が過ぎて行った。
そんな日々の中、青い竜のブルヴィは、昨日やって来てくれたよ。昨日はその辺りをぐるっと巡って終わり、出発は今日。中洲の町で落ち合うのは、明日の約束だ。
スマホを渡そうかと思った事もあるが、ブルヴィにはスマホは小さくて扱いにくいので却下となった。そのため、ブルヴィからもらった笛が、今でも唯一の連絡手段。
笛は、本当は近くにいる竜さんを呼ぶものだ。しかし、近くにいる竜さんが笛の音を聞きつけると、ブルヴィに知らせてくれる。竜を呼ぶ人間なんて私だけだし、呼ばれているのはブルヴィだと他の竜さんたちにも知れ渡っている。だから、笛の音を聞きつけると、笛の音を聞いた竜さんがブルヴィに知らせてくれるんだ。そのため、思った日に来れるとは限らない。
ちょっと不便ではあるが、連絡手段があるので良しとしている。
エルフさんの村から少し離れた所にある、ぽっかり開けた場所。村の広場には、色々建物を建てていて狭い。だからブルヴィは、ここで一夜を過ごしたのだ。
ブルヴィのいるそこへ移動すると、私、ユリシーズさん、フィリベールくん、クー、ルー、シルバー、アベラさん、ジャドゥさんご一家は、三階建てのコンテナハウスから抜いた一階に入る。アイルとアークも一緒だ。
一階はこんな時の為、いつでも抜けるようにしてある。もちろん、一階を抜いても上階に影響はない。ただ、土魔法で何本か柱を入れるくらいの補強はするけど。
「皆、大丈夫だね?入った?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、出発!将軍さま!カーンさま!ショアラさん!デジレさん!ミラさん!行って来まーす」
皆に見送らる中、ふわりと空へ浮かぶコンテナハウス。そして、向きを変えると、一路、中洲の町を目指す。
ブルヴィには、さしものエルフさんたちもジャドゥさんご一家も驚いておられた。お蔭で昨日は大変な騒ぎだったが、今日は落ち着いている。色んな所から手を振って、見送って下っている方がいらっしゃる。
デジレさんとミラさんは、今回は残られるんだ。デジレさん、ご飯とお風呂は出来ているけど、ここから離れるのは無理。それは、ユリシーズさんやミラさんから見ても同じ意見だった。
まあ、遊びに行くわけじゃないから。両家の顔合わせは、またの機会だね。
タドリィー親方とセーマルくんも行かない。二人は仕事が忙しく、他所へ行っている暇がないからだ。
報酬の一つであるご飯はね。ジャドゥさんたちに和食をお教えしている時に、食べきれない品数を作っていた。残る方たちの、朝と夜ご飯を一緒に作っていたんだ。
お昼ご飯がないのは、デジレさんたちは講堂の食堂で。タドリィー親方たちは軍の食堂で、それぞれお昼を食べるからだ。お休みの日の分は、ミラさんが作って下さるって。
ミラさん、ありがとうございます。
◇
「わー!もうすぐ中洲の町に着くね。湖とか森とか避けて真っ直ぐ進めたら、結構近いんだね」
「そうだな。俺も驚いた」
あちらこちらで調査しながら進んでいたから、普通に進むよりも時間は掛かっただろう。しかし、こうして空を真っ直ぐ進むと、本当、意外と近い。
中洲の町も川も飛び越し、川向こうの軍の駐屯地にブルヴィは降り立つ。今回も、国王陛下が、竜が現れても混乱しないようにとお触れを出して下さっている。だから、ここまでの間も駐屯地にも、混乱はなかった。
到着後、ジャドゥさんたちにはコンテナハウスで休んで頂いく。慣れない空の移動で、ちょっとお疲れみたい。
私はと言うと、ブルヴィにお肉とお水を出してあげる。撫でたりはできないけど、このくらいはね。
[ブルヴィ、ここまで連れて来てくれて、ありがとう。これ、氷のヒュドラのお肉。良かったら食べて]
[ヒュドラか。それは良いな]
モツ系と、ロース辺りの塊を大きな板に載せてあげると、ブルヴィはバクバク食べてくれた。今までは食べてくれなかったので、ちょっと嬉しいかも。
後に、[人の子が、我らの食べる量を用意しようと思うと、かなり大変だろう?]と言われた。どうやら、遠慮していたようだ。
クー、ルー、シルバーのお蔭で、お肉には困らない。だから、お世話になったらお礼くらいはしたいよ。
ブルヴィのお世話をしている間に、ユリシーズさんは軍の方に説明へ行ってくれている。説明が終わったユリシーズさんが戻ってくる頃、ブルヴィは住処に帰ると飛び立って行ってしまった。
ジャドゥさんたちはちょっと休憩した後、中洲の町へ行って来るって。出掛けていらっしゃる。
コンテナハウスは買える?魔道具コンロは?等、色々聞かれた。買い物なら、後日一緒に行きますってお伝えしてみた。そしたら、下見へ行くって。
「優!」
「優!」
「お姉ちゃん!」
「優さま!」
ユリシーズさんと片付けをしていると、懐かしい声に呼ばれた。
「お父さん!お母さん!サーラちゃん!カールくん!」
振り返ると、兄夫婦以外の家族が皆いる。兄はお父さんの代理で仕事を回すため、家から離れられない。義姉はなんと、おめでただそうだ。
近年、シュシェーナ王国では、ゆとりのある家の跡継ぎ夫婦は、子どもが出来るまでは別居。妊娠すると、両親と同居っていう生活スタイルが流行っているのだそうだ。
妊娠に伴い、その引っ越しもあるし、身重の体に無理はさせられない。引っ越しは産後でも良いのだが、義姉もお母さんも早く一緒に住もうって。
本当は、初めから一緒に住んでも良かったそうなのだ。しかし、お父さんたちも兄夫婦も新婚。だから、子どもが出来るまでは、お互いに新婚生活を楽しもうとなったのだそうだ。
そんな訳で兄夫婦はいないが、それ以外の懐かしい顔ぶれに、ちょっと目の奥が痛んだ。
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