92:楽しみはもうすぐ
「これが『蒸し鍋』です」
ジャドゥさんご夫妻に、朝ご飯と夕飯の時、色々とレシピとアレンジをお教えして五日。
少しずつ、色々と作っているので品数が多い。が、相変わらず、一度見ればちゃんと覚えられていらっしゃるそうだ。
今日までに鍋に始まり、天ぷら、丼物、焼きうどんやお好み焼きとか、もう本当に色々と作った。
お肉は感覚で食べないとって感じる時に、鳥類か兎とか。家族で一、ニ食で食べ切れる、小さな獲物を狩って食べる程度だそうだ。
なので、肉料理はあまり作っていない。鳥のオイル煮と他人丼など、四つほどお教えした物で事足りるとの事。
肉料理より海魚とか豆腐、うどんなんかの料理を覚えたいそうだ。
「初めは、久しぶりの魚の頭には驚いたけれど」
「前と同じで、慣れるものだね」
今日は、魚の蒸し鍋がメイン。海魚は、日の本の国の民こと、伊助さんとの生活がきっかけで良く食べるようになったそうだ。
伊助さんが亡くなられた今でも、海へ足を伸ばして手に入れて食べるくらいなんだって。しかし、伊助さんとの生活では、大きな魚の尾頭付きの魚料理は滅多になかったらしい……。
ジャドゥさんたちには料理の他に、パワーストーンブレスレットやリース、ワイヤーワークなんかもお教えしている。
料理はたまにだが、パワーストーンブレスレット作ったりは、エグランティーヌさんご夫婦が割と一緒にしていたりする。
この間の土日はゆっくりしたが、もうすぐお父さんたちと中洲の町で再会だ。今から楽しみ!
今回は、お母さんもサーラちゃんも来れるらしいんだ。お母さんとサーラちゃんは、春以来の再会になる。二人と会うのは、余計に楽しみだ。
サーラちゃんは結婚が決まったから、お祝いしたい!お相手は、なんとカールくん。
カールくんは十八歳になったら、珍しいお酒を集めてお祝いする約束をしたけど。結婚祝いの方が、それより少し先になるな。
お母さんには心配掛けっぱなしだわ、あんまり話も出来てないわだ。少しでも親孝行がしたい!
お父さんとは、ワープロ開発に向けた話をしたい!いきなりワープロ開発は難易度が高くって、一先ずタイプライターの開発となっただけだから。ここからが、ワープロ開発に向けた本番になるからな。
地質とかの調べようがなく、なかなか話が進んでいなかった中洲の町の下のトンネル計画。
今年中には……、といった、日程もまだ決まり切らないあやふやな案件だった。それが、来週の水曜日に中洲の町に集合となったんだ。
それは勿論、ハイエルフのジャドゥさんご夫婦がお力を貸して下さるからに他ならない。お蔭で、一気に話が進んだ。
家にはジャドゥさんのご両親がいらっしゃるそうなのだが、今年は帰るのが遅くなる直感があったって。だから、お家の方は心配いらないそうだ。
うーん。スピリチュアルな方たちだわ。
パワーストーンのアクセサリーとかパワーストーンを入れたワイヤーワークとか、グラスハープとかお好きなのが分かる気がする。
お肉は波動が下がるとの事で、必要以上に口になさらないのも納得。
とはいえ、子どもたちは大人よりお肉は必要らしいけど。
チーズやミルクも上手く取り入れて、良い食生活が送れれば良いなと思う。
ハイエルフさんたちは、独自の文字はないとお聞きした。独自の文字はないが、子どもでも古代言語を含めた三言語話者、四言語話者は当たり前。住んだ国の言葉は覚えるので、大人になれば五ヵ国語以上操れる、多言語話者が普通というね……。書き記す心算なら、覚えている言語で書けるそうだ。
ハイエルフさんたちは、家族単位で秘境で暮らしていらっしゃる。しかし、百年に一度くらいの周期で、次はどこそこに何時頃集まろうみたいな、お互いの無事を確かめ合う集りがあるのだそうだ。
そのため、あちこちの国を渡り歩く。あちこちの国を渡り歩く過程で、色んな言語を習得しちゃうって。
そんな訳で、自然と色んな言語に堪能になるものなんだとか。ジャドゥさんたちは、今、シュシェーナ王国に住んでいらっしゃるので、シュシェーナ王国の共通言語も覚えていらっしゃる。だから、色んなメニューをシュシェーナ王国の共通言語でタイピングしている最中。
一緒に生活する、ほんの十日程ではね。お教え出来る料理にも、限りがあるからさ。
因みに、お教えして一番喜ばれたのは、揚げ出汁卵だった。生卵を深い鍋の油に投入して揚げて、出汁を張った椀に揚げた卵を入れるだけの料理だが……。白身が散らないよう、綺麗な丸に纏めて揚げるのが難しい料理だったりする。
「蒸し鍋はお肉でも出来ます。お肉を一番底に並べて、上に野菜を乗せれば脂は下に落ちます。それならお肉の蒸し鍋でも、あっさり食べられますよ」
クーたちのスペースの小上がり、そこに設えたこたつに食事を運ぶ。皆座ると、食事となる。
「お肉でも出来るのね」
「あっさり食べられるのは有難い」
「子どもたちは大きくなるまで、お肉もそれなりに食べさせてあげなくてはならないものね」
「ああ。だが、大人になると肉は、ね……。だから、一緒に食べれらる肉料理は、とても有難いね」
「ぼく、お魚も好きだよ?」
「わたしも、お肉よりお魚が好き!」
「ちゅい!」
「みんな、お魚の方が好きなの?フィリ、お肉の方が好きなの、ヘン?」
「好みはそれぞれだから、お魚が好きでもお肉が好きでも良いんだよ。
ただ、お肉は、食べ過ぎには気を付けようね」
「お肉も、食べすぎは良くないの?」
「どんな食べ物も、食べ過ぎは気を付けなきゃいけないの。お肉とお魚を比べると、お肉は気を付けなきゃいけないかな」
「そうなんだ。フィリね、お魚もがんばって食べるの。だから、たまにはお肉も食べて良い?」
フィリベールくんは、お魚苦手らしいんだよね。こちらの煮付けとか食べたけど、味付けも微妙だが、生臭さが気になる事が多かった。それが嫌なんだと思う。
少なくとも、私が作った魚料理は普通に食べてくれているもん。
「うん、良いよ。今日のおやつは、ポップコーンバードと、ミートクロウで細かく割いた豚肉と、魚のフライのバーガーと、野菜のバーガー作るからね」
ポップコーンバードは、ポップコーンチキンをチキン以外の鳥で作った物。鶏以外の鳥肉の時は、ポップコーンバードと言っている。
ポップコーンみたいに、ころころダイスカットしたお肉だからポップコーンチキンって言うみたい。
ミートクロウで割いた豚肉は、プルドポークみたいにお肉を割いた魔物の豚のお肉。これなら多少硬くても、とても食べやすいから最近良くする調理方法だ。
「おやつ!」
「いっぱい!」
「ぱい!」
四種類作って四つに切り分け、四ピースで一つのバーガーの大きさになるようにするのだ。野菜もちゃんと入れるし、野菜バーガーも作るよ。
これだと色々食べられるから、リュカくんたち三きょうだいにも好評。それに、この間の魚の頭みたいな食べ慣れない物でもなければ、出された物はきちんと食べるお利口さんたちなんだ。
なので、手間でもついつい色々作っちゃうんだよね。
でも、今は……。
「さ、朝ご飯にしよう。今朝は魚の蒸し鍋、色々きのこのオリーブオイル鍋、揚げ出汁豆腐、室蘭焼き、野菜の切れ端の餡かけだよ。頂きます」
この時は、うずらの卵を殻ごと焼いた室蘭焼きに引かれた。そして卵を殻ごと食べるのが衝撃だったそうだ。
バロットは衝撃的だろうけど、これは許してよ。
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