9:カーニバルとの生活
「これでお風呂とトイレ、洗面所の使い方は大丈夫ですか?」
カーニバルの皆さんは、終始ポカーンとなさったままだ。使い方、大丈夫かな?
「風の噂で聞いてたが…。とんでもないね…!」
しばらく反応を待っていると、ようやくアレクサンドリーヌさんが感想をもらした。
「実物を見ると、とんでもなさが良く分かるね」
「アタイは腰が抜けそうだよ」
「あたしは顎が外れそうだわァ」
リーダーのアレクサンドリーヌさんに続き、ハーフエルフのマルゴーさん、豹の獣人エブリンさん、最後にの鷲の獣人ゾーイさんが一言ずつもらした。
アレクサンドリーヌさんとマルゴーさんは耳が長い以外は普通の人間と変わらない。エブリンさんとゾーイさんは、見た目はただの人間。
ただ、エブリンさんは体温が上がると肌にうっすら豹紋が浮かび上がり、ゾーイさんは夜目が効かないって事だ。
「食べる物はどうですか?」
ご飯は私が作るので、そこは改めて尋ねておく。
「野菜中心と肉中心になるけど、以前食べた感じで大丈夫」
「分かりました。じゃ、あんな感じで作りますね。ご飯までにお風呂とかして、こちらは気にせずゆっくりなさってて下さい」
王都にいる間に二度、食事にご招待したのだ。あの感じで良いらしい。
「本当に手伝わなくて良いのかしら?」
「ええ。このくらいの人数分なら、ユリシーズさんと二人ですぐ出来ます。だから大丈夫ですよ」
お風呂なんかの使い方は大丈夫との事で、ゲストルームを適当に別れて使って下さいと案内する。
「ふかふかのベッド…」
「ここも温かいわね」
「アタイはこっちの部屋が良い!」
「あたしもこっちぃ!」
ダイニングキッチンの直ぐ隣は、私とユリシーズさんの部屋と最初から決めていた。その隣の、アコーディオンカーテンで仕切れる二人部屋をエブリンさんとゾーイさんが使う事になった。一番奥の、一番窓が多いアコーディオンカーテンで仕切れる二人部屋をアレクサンドリーヌさんとマルゴーさんが使う事に決定。
やはりエルフさんは明るい部屋がお好きなのかな?と、つい思ってしまった。
ちなみに部屋は全部同じ大きさで、同じ壁側に並んでいる。通路を挟んで反対の壁に各二つトイレとお風呂が並んでいる作りだ。
コンテナハウスが変形になったわけは、トイレとお風呂を二つずつにしたから。
お風呂は片方は私やユリシーズさんが湯船に浸かっても寛げるサイズ。もう片方はちょっと小振りだが、こちらの体が小さい方たちが使うには十分な広さがある。
「人心地ついたらお風呂すませて、食事ができるの待ってて下さいね。できたらお呼びします」
「ああ、じゃあお先に。片付けはするからね」
「ありがとうございます。助かります」
カーニバルのみなさんが部屋で荷物を解いたりお風呂をされている間に、ユリシーズさんと晩ごはんを作る。
「今日は親子丼、煮物、小鉢ニつ、豚汁、大皿で焼肉にしましょう」
「分かった。皮むきと切るのは任せて」
そんな事を話しながらキッチンへ向かい、ご飯を作る。その後、匂いにつられてか、皆さん早めにダイニングに集まってお風呂が凄いって話し込んでいらっしゃる。
「お待たせしました!大皿の焼肉は適当に取り分けて食べて下さいね」
できた料理を運び始めたら、みなさんも手伝って下さる。
「頂きます」
「頂きます」✕5
「んん~っんっ、野菜が美味しいっ」✕2
「肉が美味しいって!」✕2
野菜のお浸し、煮物を口にしたエルフのお二人も、焼肉を口にした獣人のお二人も美味しいと言ってせっせと口に好みの物を運んでいる。
「お代わりも作れますから、足りなければ言って下さいね」
「それは嬉しいわ」
アカザさんたちとの旅を思い出す、賑やかな食事はあっという間に終わった。追加までいらなかったが、どの料理もきれいに空になったよ。
「はあ〜。ずいぶん前に金の大鷲亭でニホンショクを食べたけど、やっぱり好みの食事だわ」
「え、おじいちゃんたちの宿で食べられたんですか?!」
「あそこ、おじいさんの宿なんだ?部屋も清潔で食事も美味しいって聞いて泊まった事があるよ。その時だね。ツヨシ卿の作るご飯の日に当たって食べたよ」
「へえ、そうだったんですね」
「まだニホンショク食堂ができたばかりとかでかなり混んでたけど、他に行かなくて良かったよね」
「今でも混んでますけど、昔はもっと混んでたのかな…?」
「出来たばかりの頃は凄かったよ。この国には並んで待つっていう事がないから、ツヨシさんが何度か鉄拳制裁しながら並んで待つって事を広めてたよ」
あー、わざわざ並ばなくても空いている店へ行けばいいって文化なのかな?
「そういえば店を出た頃に表が騒がしくなって、振り返ったら吹っ飛んでるヤツがいたね」
「吹っ飛ぶ…」
お父さんを本気で怒らせた事がなくて良かったわ…。
「えっ、外もうこんなに真っ暗ぁ?!明るくて気付かなかったぁ!!」
「本当だ!こんなに明るいと、ゾーイも助かるね」
「何度暗がりで躓いて転けたかぁっ」
「鳥目で暗い所は大変ですね」
「戦闘中はもっと大変だったぁっ」
それ、命に関わるやつーっ!
「良かったらこれ、どうぞ」
「これ、何ぃ?」
「ヘッドライトです」
朝マズメで使ってからしまったままの一つを無限収納から取り出して、ゾーイさんに差し出す。
「夜でもかなり動けるぅ!!」
「本当に、ねっ!」
外で試しに使って頂くと、かなり助かるとの事でそのまま差し上げる事にした。
ただ、今のままだと動くとズレるので、明日にでも非戦闘員の魔道具師さんに改良をお願いしないとね。
この夜はちょっと遅くまでカーニバルの皆さんと多岐に渡った話ができて、楽しい一時を過ごせた。
明日からも頑張ろう。
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