86:異世界初の地下施設
「ボルダリング、踏み台昇降、登り綱、反復横跳びに縄跳び。うん、体動かすぞ」
「これは前にやったな。この台と、線と、太いロープと細いロープは何……?」
本当はプールも欲しかったけど、欲しいなって考えただけで諦めた。
「外で運動は難しい季節でしょ?だから、屋内で体を鍛える場所を作ったんだよ」
ボルダリングは最後に説明するので、他の物からやり方の説明をしていく。
「これは『踏み台昇降』。体を前に向けたまま、階段みたいに登り降りするんだ。同じペースでするのが肝心」
そして何回か、実際にやってみせる。
「そんなにキツくはなさそうだな」
ふふふ。やってみると分かるよ。
十分の砂時計を使い、先ずは一セット目。リズムは、手拍子をお願いした。一分の砂時計で、インターバル。これを三セット。
「ゔーっ!運動不足を痛感っ」
ぜえぜえと肩で息をしつつ、床に伸びる。
「続けると、結構キツ……っ」
ユリシーズさんには、ほどほどの運動らしい。普段の運動量の差が出るわー。
「次のは『登り綱』。天井から垂れているロープを登るだけだよ。
出来る人は腕だけで登れるけど、腕と足を使って登るの」
これは子どもの頃から得意。するする登り、しゅるしゅるっと降りる。
しかし、子どもの頃よりは体が重いな。後、ちょっとだけ、思うように体が動かなくなってもいるかも。
「……。ロープがゆらゆらするから、登り難そうだな」
そう溢し、ユリシーズさんはロープに取り付いた。
初めての事で、ちょっとコツを飲み込むのに時間が掛かった。が、コツが掴めれば、するする登れたよ。最後は腕だけで登っちゃったし。さすが、鍛えているな。
「この線は、『反復横跳び』をするんだ。こうやるよ」
「地味にキツそう……」
ここは、誰でも使えるように。そう思って村の長、エグランティーヌさんに許可を頂いて、お借りしている広場の地下に、土魔法で作った広い施設。
かなりの人が集まり、熱気で熱いくらいになっている。
そんな中、反復横跳びを始める。二十秒の砂時計はないが、体を鍛えたいだけだから、まあいいかと思っている。しかし、一分の砂時計はあるため、反復横跳びは自然と一分する物になっていった。
これ一分とか、かなり地獄なんだけど?!
反復横跳びの次は、縄跳び。縄跳びでの体力作りには、布製かビニール製が良いと聞いた事がある。勿論ビニールはないので、布で作った。
「ただ跳ぶのも良いけど……」
ちょっとした悪戯心で、前跳びから二重跳び、綾跳び、二重綾跳びから駆け足跳び。
次は後ろ跳びを一通り。後ろ跳び、後ろ二重跳び、後ろ綾跳びからの後ろ二重綾跳びでフィニッシュ。
布の縄跳びで跳び難くて何回か引っ掛かったけど、思ったよりちゃんと跳べてほっとした。
「……凄い!細いロープで、こんな事が出来るんだな」
驚いて、一拍間が空いたらしいユリシーズさんの言葉に続き、皆から凄いと絶賛のお言葉を頂いた。
ちょっとやり過ぎたな。後ろ跳びは、そこまでする心算はなかったんだけど。久しぶりなのにそれなりに跳べて、ちょっと楽しくなって調子に乗っちゃった。
少しして場が落ち着くと、大きな声で話す。
「ここを使いたい方は、好きな時に使って頂いて構いません。ただ、始めにラジオ体操と、ストレッチをしてからして下さい。
筋を痛めたり、切れる予防になりますから」
見学だけで、まだラジオ体操とストレッチをしていなかった皆さん。さっそくラジオ体操とストレッチをして、思い思いの物をやり始める。
なお、ラジオ体操は私が事ある毎にしているので、あちらこちらに広がっている。
それぞれのやり方の実演が終った私とユリシーズさんは、ボルダリング担当。一番怪我人が出るかもしれないと、内心で思っていたからだ。
「ほえーっ。皆さん、身体能力が高いな」
「うん。簡単って言った通りだろ?」
皆さん、割とすんなり中級はクリアしてしまう。そこで急遽、上級のボルダリングゾーンを拡大した。
これは適当に、突起物を変えて頂くのが良いかも知れないな。何回か挑戦すれば、上級ゾーンもそこまで苦もなく、結構な人数がクリアされているもん。
「痛っ」
「おわっ」
逆に、ミミズ腫れやらの軽い物だが、怪我人が多かったのは縄跳び。
登り綱は補助ロープがあるから、落ちて大怪我をする方はいなかった。掌を擦り剥くのは、それなりにあったけどさ。
しかし、棒登りからが良いかな?って事で、登り綱の横に、棒登りを設置。こちらは割とすんなり、登れる方が多かった。
反復横跳び、踏み台昇降をしている方が少ない。見た目が地味で、人気がないのかな?
しかし、やってみた方たちは「何でこれがこんなにキツいんだ?!」と、異口同音に叫んでおられたけどね。
そりゃ、そういうのを選んだからね。侮ってもらっては困る。
午前中一杯様子を見ていたが、大丈夫そう。なので、後はまだやりたい方に使って頂く事にして、コンテナハウスへと戻る。
施設にもお風呂はあるが、コンテナハウスのお風呂の方が気を遣わず、ゆっくりできるだろう。
そう考えて、コンテナハウスのお風呂に入ってさっぱりした頃。
「えっ?!もう二つ目の施設を作りたい?!」
「広げるんじゃなくて?」
「そう、新しく作るの!
今あるのはそのまま残して利用するのに、丁度良さそうな広さなの。
でも、使いたい方が多い……、いえ、多過ぎなの。それなら潰す事前提で、使いたい人数に合った広い施設を作りたいなと思ったのよ」
あー、確かに。無駄に広い施設にして、また先で小さく作り直すより、潰すの前提の広い施設作るのも一案かも。
「そうなんですね。構いませんよ。二つ目は、エグランティーヌさんが作られるんですか?」
「ええ。一つ目を手伝ったから、作り方はちゃんと分かるわ。だから、私一人で作れるわよ」
魔法が得意なエルフさんなのだし、お任せする方が良いものが作れると思う。うん。お任せしよう。
「それじゃあ二つ目を作るのは、お願いして良いですか?」
「許可をありがとう。早速作るわね!」
この冬の間に、全天候型のレジャー施設として、この地下トレーニング場は急速に王国内に広まった。
先ず王都に、この施設の事が電話で伝わったそうだ。国王陛下からのご依頼で、旧王都で、お父さんと国の魔法使いさんたちとで、試しに一つ作ってみたって。
で、その魔法使いさんが王都へ登り、王都で作り方を他の方に教えるでしょ。作り方を覚えた方が、行ける範囲の軍の施設の地下に、順次作って行かれたそうだ。
それは冒険者ギルドや、傭兵ギルドにも作られ始めたって。
村人などは冬の仕事があって忙しく、あまり必要がない施設だ。しかし、軍や冒険者、傭兵といった、体が資本の方たちにはこの上ない鍛錬場として認知されたみたいなんだよね。
「ユリシーズさん、夕方の鍛錬しよう」
「優はしなくてい良いだろ。何か、痩せてきていないか……?」
「そんな事はないよ。さ、行こう」
私にとっては相変わらず、痩せるためのトレーニング施設なんだけどね。
食事も工夫して、朝晩汗を流す生活。それはしっかり効果があらわれ、以前の体型に戻る事ができた。
ユリシーズさんには酷く嘆かれたけど。自分の体重の事は私の好きにさせて欲しいと、切に願うのだった。
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