85:雪山ご飯はカロリー大事
「それっ!」
だだだっ。ぴょん!……っぶ。
「凄いね!今のでも取れるんだ!」
自分が走らず、クー、ルー、シルバーを十分運動させてあげる方法。フリスビーと、ブーメランを思い付いた。フリスビーは作れなかったが、ブーメランは何とか形になったんだ。それで、今日はブーメランのお披露目。クー、ルー、シルバーは楽しいみたいで、小一時間はブーメランを取ってくる遊びをしている。
近くでは、調査行軍の皆さんが雪山での戦闘訓練をなさっているんだけど……。私は体力的について行けないから、クーたちと時間を潰す事になったんだ。
氷のヒュドラが出た事で、冬季野営訓練は切り上げて村へ戻る案もあった。だが、シルバーが感じる限りでは、もう森はいつもの静けさを取り戻しているそうだ。ならば、続行となったんだよね。
鉄の鎧は、錬金術で直ぐ修理が出来るのが利点の一つだ。しかし、極端に冷えた金属に素肌が当たると、素肌が金属に貼り付いてしまう事がある。
なので、こちらで鎧覆いと呼ばれている物を着てする戦闘に慣れる必要があるのだそうだ。
他にもビバークだとか、雪山ならではの訓練もあるんだって。そう。雪山でしか出来ない訓練があるのが、中止にならなかった大きな理由。ここら辺は、昔の転移者から聞いていたが、あまり実践して来なかったそうで……。慣れていないらしい。
そうこうしていると、朝の訓練が終了となった。
「ユリシーズさん、お疲れさま。いつもと比べて、今日は体冷えていない?」
「ああ。雪山での本格的な訓練は初めてだから。平地と勝手が違って、ちょっと疲れたけど。
冷えは、ないな。今は流石に熱いくらい」
「じっとしていた儂ですら、普段程は冷えておらぬからな。訓練を終えたばかりの者たちは、熱かろうて」
汗かきも暑がりもましになった私だが、自分の体感で良いのか分からなかったんだけど。将軍さまは、鉄靴や籠手からの冷えが堪えると仰っておられた。その将軍さまが、普段より冷えないと仰るのだ。氷のヒュドラのお肉は、かなり効果があるみたいだな。
〘たーのしかった!〙
〘優といーぱい!遊べたの!〙
〘今日の遊びは良かったね〙
熱いのだろうクー、ルー、シルバーは、体を雪に擦りつけながら話に加わって来た。
朝ご飯に、人はひゅうが丼でお刺し身六切れ分くらいの氷のヒュドラのお肉を食べた。クーたちは、それより少し多い。それでも、お刺し身十切れ分くらいかな?
うーん、もうちょっと少なくて良いのかな?冷え性とか、あまり動かない方は多めに。暑がりとか、良く動く方は少なめとか。朝と夜、明け方の夜警の方とか、時間帯でも食べる適量は変わるのかも。
今回は取り敢えず朝晩と、夜警の方は体調に合わせて適時氷のヒュドラのお肉を摂る事になっている。
今日のお昼は、スープパスタ、プーティン、ステーキだ。叩いて薄くしたお肉なら、もう焦がさず焼けるようになっていらっしゃるそうだ。
もっと味のある料理はないかと聞かれ、お教えしたミラノ風カツレツ。これももう誰も失敗せず、皆作れるようになっているらしい。
魔導具シングルバーナーを使う事で、火加減が焚き火より簡単だからだそうだ。だから是非、ステーキをと言われている。
この寒い中では、普通はお肉が常温にならないんだけどね。無限収納、様々だ。
朝は人の準備もだが、馬さんたちの準備もある。だから、朝ご飯は前日に用意し、時間を確保する方向。
急ぎでない時のお昼は、その場で作るようにしているそうだ。戦争中は、朝ご飯の時にお昼ご飯は配って、無限収納で保管しておく事になっているそうだ。
こちら独自かもしれないが、色々考えられているんだよ。
そんな中、朝の内にお昼ご飯がステーキと聞いていた皆さんは、とてもテンションが高い。
現代人が思っているよりは、中世は美味しい食事をしていたらしいけど、それでも中世くらいだ。中世にはまだない美味しい食事は、テンションも上がるか。
◇
「フライドポテトにチーズを掛けて、今出来たソース、グレイビーソースを掛けたらプーティンは完成。
これでお昼ご飯は出来上がりです」
今日はステーキから出た肉汁で、グレイビーソースを作った。グレイビーソースを、チーズたっぷり乗せフライドポテトに掛ければ、カナダの国民食、プーティンになる。
ステーキソースは、以前から事あるごとに集めてもらっていた肉汁で作って常備されている赤ワインソース。
私は、雪山でカロリー摂るなら食べるけどね。常食するには、カロリーがさ……。カロリーが怖過ぎる。
しかし、ここにはカロリーが分かる人はいない。揚げたじゃがいも料理も、滅多に食べれない部類の料理だ。それが、美味しい味付けで食べられるので、とても人気になった。
フライドポテトに塩だけでも美味しいけど、機会があればガーリックバターで和えるのとか、チーズペーストにディップして食べるのとかするのも良いかも。
マヨネーズも全卵だけじゃなく、卵黄だけ使うタイプ、卵白だけ使うタイプも増やしても良いかもね。
マヨネーズの料理も、もっとしてみるかな。マヨネーズでグラタン風が、簡単に作れるし。カロリーもある。
「優?考え事、終わった?」
「ん?」
あれ?空が何だか……???
「もうすぐ夕方だけど……。長時間考え事していた自覚は、やっぱりないんだな」
うええ?!って事は、お昼ご飯から三時間くらい過ぎたって事?!
「いくらか聞き取れた内容は、書き留めておいたから」
「あ、ありがとう。後、ごめんね。私に付き添ってくれていたみたいだから、訓練受けられなかったね」
「自分の意志で付き添っていたんだ。優は気にしなくて良い」
「滅多にない機会なのに……」
「お金を掛ければ、優やオオシロさんが食べる様な食事は出来るかもしれない。優は、皆が真似しやすいご飯を考えていたんだろ?そっちの方が大事」
優し過ぎる一言に、申し訳ない気持ち半分、もう半分はとても嬉しくなってしまった。
「皆お腹空かせている。今日も美味いご飯を頼むよ」
「うん!任せて!」
夜は鮭とほうれん草のバターパスタ。コンソメがここにはないんだけど、オーク肉を信じて……、ドイツのシュヴァイネブラーテン風。まだ赤くなる前の品種らしい、白いビーツのスープ。後、氷のヒュドラのタルタルステーキだ。
朝はご飯と焼き味噌玉のみそ汁。それに野菜たっぷり入りの、厚切りのリオナソーセージのソテーと目玉焼き。ここにも、氷のヒュドラのタルタルステーキ。
お昼はドーナツがバンズになっている、ルーサーバーガーを二種類とスープ。
ちょっとコストが掛かる物もあるけど、ちゃんとしたご飯を。
地球と違い、野菜も王侯貴族の食卓に上がっているけど、バランスの良い食事は大事だよ!王侯貴族に糖尿病や痛風の方が多かったのは、良くない方へバランスが崩れた食事が基本だったからだと思うんだ。
でも、山から降りたら、体に優しいご飯を食べようね。
◇
「ただいまー」
「ただいま」
「あら!お帰り……、まあ!優!ふっくらして、健康的になったわね!」
「優!ふわふわ!」
うええええ?!食べる量は減らしていたのに、太った?!クーたちと、それなりに運動もしてたんだよ?!
「うん、やっと少しふっくらして安心」
安心したユリシーズさんには、すっごく申し訳ないない。私は暫く、ダイエットに勤しむからね!!
この体型を維持させたいユリシーズさんと、痩せたい私の攻防戦が展開されたのは言う間でもない。
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