75:近場の探検へ
三日間、防具の修理のお手伝いをすると、修理する物がなくなった。
武器製作はドワーフさん達が得意とするが、防具の方はエルフさんやハイエルフさんが得意なんだって。ちょっと意外だったな。
そんなエルフさん達に、修理しようが無くて足りなくなった防具は、村に留まっている間に必要な分の製作の依頼をしていたそうだ。
それもあってこの村で冬を越すんだと、やっと理解したわ。
ユリシーズさんの兜は作ったが、欲しいとおっしゃる方の分を私が作る事になるかもって事は、頭からすっかり抜け落ちていた。
だがバイクのフルフェイスヘルメットみたいな兜も、エルフさん達が作って下さる事になった。スライムも増え過ぎると間引くとの事で、いくらかスライムの革もあるそうだ。
兜は作らなくて良くなると、他にやる事はない。何故なら、エルフさんの村には寺子屋がない。孤児院もない。
子ども達の教育も子育ても、大人全員でしていらっしゃるのだそうだ。
勉強は、狩りや防具作りができなくなったご老人や、怪我や病気で出来なくなった方が教えていらっしゃるそうだ。
孤児になった子どもは、必ず親戚が引取るんだって。親戚がいなければ、孤児と相性の良いご家族が引取るのだそうだ。だから孤児院は要らないって。
子どもがあまり産まれないから。大人たちは我が子の様に、誰の子と言わず、手を貸して欲しいと乞われれば、皆協力を惜しまないのだそうだ。
エルフさんって、凄い種族だな。
そんな社会のエルフさん達の村では、いつものように寺子屋の先生や炊出しの必要がない。
書類とか諸々は、冬の終わりまでに終わる。
そうなると、時間に余裕がある。
「行ってきます」
「行って来る」
「いってきます」
「気を付けて」
「はい!」
「ああ」
「ん!」
デジレさんは書き物に没頭してしまっておられるので、ミラさんに見送られてお出かけだ。
村の近場の探検に、何泊かキャンプへ出かける事にしたよ。
聞いた感じ、地球ではもう絶滅した動物かもしれない物もいるっぽいんだ。
お父さんと話した時、ジャイアントヘラジカは地球で言う、オオツノジカの子孫じゃないかって事だった。
ダイアウルフも、多分そうじゃないかって。
地球では、氷河期に絶滅した種かもしれない生物や、人の手によって絶滅した生物がまだ生きているって、夢があるよね。
というかだよ?この世界では、恐竜が絶滅する何かが起こっていなければ、本当にまだ恐竜が生きているかも知れないよね?!
それに海に出られたら、他の大陸にいるかもしれないステラーカイギュウとかカリブモンクアザラシとか。リョコウバト、ヨウスコウカワイルカ、クアッガなどなど。絶滅した、色んな生き物に会えたかもしれないなあ。
「優、フィリベール。あそこ」
村を出て、暫く馬で進んだ所にある沼地にいたのは朱嘴鸛だった。日本では鸛と言われている鳥だ。
因みにヨーロッパで赤ちゃんを運ぶって言われているのは、朱嘴鸛だよ。
日本へ伝わる時にこの二種は名前が入れ替わったのか、ヨーロッパと日本では朱嘴鸛と鸛の名前が反対だそうだ。
息を潜めて見ていると、朱嘴鸛はかかかかかっと嘴を打ち鳴らすクラッタリングをして飛び去ってしまった。
「初めて見た!朱嘴鸛って、結構大きい鳥なんだね」
「ああ。もしかしたら、南の大陸へ渡るのに、しっかり食べて体力つけたのもあるのかもな」
成程ー!そう言えば渡り鳥だっけ。気を付けて南の大陸へ帰るんだよ。
「鳥さんおっきいね。あかちゃん、鳥さんがこわくて、フィリのおうちに来てくれなかったのかなあ?」
ご両親を思い出させないようにした方が良いのかな?どう応えたものか……。かと言って、あまり間を開けるのもね。
「そうかも知れないね。大きな鳥さんだったもんね」
「うん。フィリ、お兄ちゃんになりたかったな。
あれ?でも、お兄ちゃんになれなかったから、お兄ちゃんができたのかな?だったら良いや」
そう言う、私の前でアークに跨っているフィリベールくんの頭を撫でる。
横からユリシーズさんの手も伸び、やはりフィリベールくんの頭を撫でてあげた。
「お兄ちゃんのなでなで、つよいー」
「悪い悪い」
文句を言っているが、ユリシーズさんの方を見ているフィリベールくんの横顔は明るい。
小さくて、もしかしたらご両親が亡くなった事がまだ上手く理解できていないのかも知れない。
いつか理解できた時、デジレさん、ミラさん、ユリシーズさんがいるから大丈夫って思ってくれる関係を築けていたら良いな。
そこに、私もいたいな。
◇
〘えいっ〙
ひゅぱっ、どさっ。
〘ぅがうううう……っ〙
〘息の根を止めるまで、絶対に離すなよ〙
フッケバインと呼ばれる、カラスの魔物と遭遇したんだけど……。
クーもルーも、強くなっているな。前は飛行系の魔物は苦手だった。魔法攻撃を思うように制御出来ず、狙った所に思った通り上手く当てられなかったからだ。
それが魔法攻撃を当て、地に落とせるくらい魔法制御も、魔法の強さもコントロール出来ようになっているじゃないか。
一撃で仕留められなくっても、息の根を止めるまで、喉笛に噛み付いても振り解かれない強さも手に入れている。
それもこれも、母フェンリルがいなかったクーとルーを気にしてくれたシルバーのお陰だな。
シルバーには本当に、感謝しかないな。ありがとうね、シルバー。
フッケバインは首にルー、体はクーに噛みつかれてなお暫く藻掻いていた。大変な悪食、かつ大食いの魔物。しかも生命力が強いんだ。だが、やがて動かなくなった。
〘やったー!〙
〘黒い鳥、倒せたのー!〙
〘うん、良くやったね〙
「クー、ルー。倒してくれてありがとう。
ところで、どうして魔法で仕留めてしまわないの?その方が楽でしょ?」
〘え?魔法で仕留めるの?〙
〘獲物は首に噛み付いて仕留めるのよー?〙
〘場合にもよるけど、首に噛み付いて息の根を止めるものだよ。魔法は首に噛み付きやすくする補助〙
あ、あははは……。成程。フェンリルと言えど、やはりそれは狼と変わらない習性が強いんだな。
魔法で華麗に仕留めるって思っていたのは、どうやら私の思い込みらしい。
事切れたフッケバインは火魔法で燃やし尽くし、討伐は終了となる。依頼があって討伐する時以外、肉も羽根も何も引き取られないからだ。
だが、カラスだけあって数が多いので、積極的な討伐を推奨されている。
とはいえ、フッケバインもありきでこの世界のバランスは成り立っているはずだ。狩り過ぎは良くないだろうって思うんだけどね。
アークは……。うん。馬のお世話をして下さる方が暇をみて、軍馬の訓練をして下さっていたから。これくらいでは、もうパニックにならなくなっているね。調教、ありがとうございます。
この日はフッケバインを二羽討伐したが、幸運にも他の魔物には遭遇しなかった。
食事も手持ちの物で作るので、食料のための狩りはしなかったよ。
ただ、まだ木に残っている木の実や果物を少し採りつつ、ココアの実の木がある湖までゆっくり探索をして回った。
さすが海外の湖。着いた湖は、とても広大だ。
湖畔から近い小島へボートで渡り、そこで一夜を過ごす事にした。そこは魔物がいないとお聞きしていたからだ。
〘今日も優と寝るの!〙
〘寝るんだもんねー!〙
〘もう寒いもんね〙
村に着いたら寒くなっているだろうから、そしたら一緒に寝ようと約束していたんだけどさ。
今日も一緒に眠る時間になると、機嫌が良すぎてオーラがダダ漏れになっている様な……。
これなら森でキャンプしても、きっと魔物も普通の生き物も寄って来ないだろう。つまり、安全が確保出来ると確信したわ。
クーたち用のコンテナハウスの中。クーとルーとシルバーに囲まれてぬくぬくだ。
近場の探検の一日目は、細やかな願いが見付かり、クーとルーとアークの成長を実感するという思わぬ一日となった。
明日は何があるだろう?
そんな事を思いながら、私とユリシーズさんとフィリベールくんで川の字になり、クーとルーとシルバーの三匹の二重の川の字で眠りに就いた。
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