67:町も清潔に
堆肥等の話になっています。
苦手な方、お食事中の方はお避け下さいませ。
「あ、導入されたんだ」
高地から戻った一隊の疲れが取れたら、次の村へ向けて出発となる。
それに合わせ、買い出しをしていた時の事だ。
自転車の部隊がこの町にも出来ると聞いていたが、自転車の導入がされたらしい。
自転車に乗った町の衛兵さん達が、定時の見回りをしていらっしゃる。
「自転車部隊が出来るのは、地球も異世界も変わらないんだな」
体力を使うなどのデメリットもあるが、メリットも多いからな。
「地球にも、自転車の部隊があったの?」
「うん、昔はあったよ」
自転車部隊は色んな国にあった。日本にも、銀輪部隊という自転車の部隊があったんだよ。
自転車に乗った私たちは端に避け、自転車部隊が通り過ぎるのを待った。
「昔は、か。自転車だと疲れるけど、馬の用意しなくて良いから。直ぐ出られて気軽。
優なら無限収納に自転車を収納しておけるから、好きな所で止まれるのも便利」
自転車部隊のメリット、デメリットは、ユリシーズさんの言った通りだ。
それなりの距離を移動すると疲れる。人力だから、それはどうしょうもない事だね。
しかし、馬を維持、管理するより手間もお金も掛からない。
餌もいらないし、調教師さんも不用だし、馬のお世話をする人もいらないし、道にしちゃった糞の始末もなくなる。
この世界の人たちは割と綺麗好きらしく、早朝に道路を清掃する仕事がある。なので、朝は割と奇麗ではあるけど。
昔のヨーロッパでは馬のどころか、人の物も道路に散乱していたからね……。
トイレがオマルになる以前は、王さまの住むお城でさえ城内の物陰の彼方此方で床に、それも床に直に用が足されていて不衛生極まりなかった。
その後、王侯貴族から平民までオマルが使われる様になったが、窓からオマルの中身は捨てられていた。外が道路でも、だよ!
だから通行人に、オマルの中身が掛かる事故がたまにあったりしたそうだ……。
そんな事故には遭いたくないぞ!
そんな事故がありつつ、城内や家の中が綺麗になっても、道路が不衛生だった。掃除をするって聞いた事がないから、多分捨てっぱなしだっただろう。
エリザベス一世女王陛下が水洗トイレを使ったみたいだけど、一般的じゃない。
一方この世界では、道路のそうした汚物は、元々決まった場所へ捨ててはいたらしい。
昨今の下水の普及は、スライムの生態が分かって来たからだって。
スライムはお腹がいっぱいだと、酷く驚かせなければ攻撃してこないのだそうだ。
水族館で、鮫が他の魚を襲わず飼育出来るのに似ているね。
しかもスライムは、岩とか土からは栄養が摂れないからか、余程の事がなければ食べないそうだ。
つまり、岩か土で囲っておく。常に餌を与える。直射日光には弱いから、日陰で程々湿度がある環境なら、スライムは飼えるって事だ。
そして何より、汚物はちゃんと処理しないと、獣人さん達が暮らしにくいって。
どこもかしこもマーキングしてある感じらしく、落ち着かないのだそうだ。
それは落ち着かないだろうな……。
「自転車が増えれば馬に関るお仕事に就ける方が減るかもしれないけど、町は清潔な方が良いからさ。
不衛生だと、病気が流行しやすかったりするからね。
病原菌の温床になる原因を減らすためにも、町では自転車で移動は有効だと思うよ」
「ああ、それで。オオシロ家では、人も家も綺麗にしておくようにしているのか」
「それもあるね。一番は、綺麗で清潔な方が心地良いからかな?」
「そうだな。綺麗なのに慣れた今はもう、普通の宿には泊まれないな」
おお、綺麗なのにそこまで慣れてくれていたんだ。
町も綺麗になって欲しいが、スライムで処理するんじゃ勿体ない。
馬、牛、山羊、鶏の糞は、それぞれちょっとずつ効果の違う肥料になる。
なのに、中世ヨーロッパではほとんど肥料を使わないのだ。
土も栄養がなくなれば、作物がちゃんと育たないからね!輪作の一回転に一度、基肥しか撒かないって……。それ、肥料を撒く回数が少ないから!
作物によって、とても肥料が必要な物もあれば、水が必要な作物もある。
それに合わせて、ちゃんと必要な量の肥料も水もあげてくれと思うが、今はまだそれが分かっていない時代なのだ。
なので、清掃してしまう町もあるが、堆肥作りが可能な町では、以前以上に堆肥作りに取り掛かっている。
出来た堆肥は、畑に肥料として還元するのだ。
小麦栽培には、石灰も欠かせない。
石灰は、採掘から畑に撒くまで全ての過程で、ゴーグルとマスクの着用を義務付けている。
木製フレームのメガネを見た事があるので、ゴーグルの枠は木で作った。レンズ代わりは、スライム革。
どこででも手に入る材料だし安価なので、好評だそうだ。
「優?買い物の続きへ行こう」
「あ、うん。次は……」
今日は買い物が終わったら、ちょっとだけデートなんだ。
ギルドが管理しているマンガリッツァ。捕まえた時には妊娠していたらしく、赤ちゃんが産まれたのだ。
豚や家畜の牛は、一応、年中繁殖期なのだ。それでもやはり、出産ラッシュの時期があるけど。
マンガリッツァもそんな生態だからか、この時期に八匹子豚を産んだのだ。嬉しい事に、そのうち三匹がマンガリッツァだったという!
今日はそんな子豚たちを見に行くのだ。
自分が大きいからか、可愛い小さな生き物がとても好き。
後、先の村で使う物の材料も仕入れる。
大学を出たら、パイロット志望だった。それくらい、空が好き。
ユリシーズさんは泳ぐより、空を飛ぶ方が許せるって事だ。
なら、泳ぐのは諦めて、空を飛ぼうと思うんだー。飛ぶなら、その材料調達しなきゃね!
「……ウ?優?」
「んあ?!」
「……。やっぱり、ぼーっとしてた」
「あ、あはは。ごめんね」
「こっちとこっち、全部?」
「うん。足りるかな?」
この町に来る前から、熟れすぎて売り物にならなくなる直前の野菜を、大量に畑で直に買い付けていた。
野菜や果物の収穫となると、一気に収穫だからね。売り捌ききれない事もあるのだ。
そんなのをメインに、それなりの量は確保出来ている。
それでも、何があるか分からないからね。算出された必要な量の、一割増しで確保を頑張っているよ。
「ありがとうございます。今年は優さんのお陰で、腐らせる野菜が殆どありませんよ」
「乾燥野菜も作っていますが、生活魔法くらいしか使えないもんで……。一日にそう沢山作れないからなあ……」
「女たちが、水漬けも頑張ってくれているがな」
「瓶も只じゃないから、数は作れねえよ」
袋や瓶なら、湯煎で真空パックは可能だ。
樽でも真空パックが可能なら、樽でというのも安直だ。
真空パックに失敗した時のダメージも大きくなるしね。
容器を更に大きくした場合、万が一もある。
ビールとかシロップが、タンクが破裂して洪水になった結果、死者まで出た事例もあるからね。
ある程度まで大きくするのは良くても、技術や管理体制が整っていない中、タンクをあんまり大きくするのも気が引ける。
「無限収納の拡張はできました?」
「ん?ああ、多少なら」
「拡張の練習を続けて、沢山収納できる様になりましょう」
「ああ!それなら只だしな!」
どっ笑いが起こり、一頻り笑ったら、お会計をして畑を後にする。
他の畑も周り、野菜や果物の買い物が終わったらギルドだ。
ギルドでの買い物が終わったら、ユリシーズさんと牧場デート。
うきうきしているからかな?木の枠に板根コルクを貼り、その上から魔物の山羊の革を貼った車輪の自転車は軽やかに進んだ。
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