61:たまには教わる方
問題です。
問一。日本の首都は東京である。
問ニ。タイの首都の正式名称に、バンコクという言葉が含まれている。
ちく。たく。ちく。たく。ちく…………。
タイムアーップ。
問一の答え。日本の事実上の首都は東京であるが、法律で定められた首都ではない。
問ニの答え。カタカナで百ニ十三文字もある首都名だが、バンコクという言葉は含まれていない。また、愛称などでもない。
なお、正式名称は長すぎるので割愛。
今、シュシェーナ王国の事をちゃんと勉強しようと、寺子屋でたまに歴史なんかを教わっている。
シュシェーナ王国、王都が二つある国だった。知らなかったわーっ。
地球にも、首都が二つ以上ある国もあれば、首都がない国もあるよ。
東京みたいに事実上の首都って国もあれば、バンコクって首都名は愛称でもなければどこから来た名前?!って国もある。
これは、村の名前を聞かれたと思って村の名前を答えたのが、正式名称にかすりもしていない理由らしい。
「東部に王都が移って爾来ニ百年、国王陛下がお住みになった事はありません。ですが、西部南端に最初に作られた王都は、この国の始まりの地として王都のままとなっています」
シュシェーナ王国は、西部南端で王国が肇国されたのか。
でも、西部で暮らすのは大変だからね。人がどんどん東部へ移動して、西部の王都は三年しか国王陛下の住む都ではなかったのだそうだ。
「王都ファータイルは、豊かな実りが約束されたかのような土地です。他の地が凶作に見舞われていても、王都ファータイルは豊かな実りで人々を飢えから救ったのです。
そのため、国王陛下がお住みにならなくなっても、豊かな土地に感謝を捧げるため、今でも王都のままとなっているのですよ」
◇
「歴史、面白かった〜!」
雑学とか歴史って、私は大好きだ。
今日の講師をなさった女性の語り口もとても穏やかでさ。私が子供なら、お母さんから昔話を聞かせてもらってる感じだった。
優しくて穏やかでありながら、興味を引くように話して下さるから。ぐいぐい話に引き込まれちゃったよ。
子供向けだからか、庶民向けだからかは分からない。ただ、年表と事柄を覚える歴史と違ったのも、面白かった理由だわ。
「ユリシーズさん?」
しかし、ユリシーズさんは面白くなかった模様。
「…。体、動かしたくなる」
だった。
「国って、やっぱり感覚が薄い?」
現代人と中世の人では、国って意識も感覚も違う。
「俺は冒険者だから。まだ国の感覚はあるよ。後は傭兵と、大店くらいかな。
それ以外の人間は、町長か村長、それに領主が分かって、住んでいる所の周りの事が分かれば事足るから。国って言われても…」
情報も、生活圏も酷く狭い時代だからかな?意外と、国の概念や感覚が薄いのが普通らしいんだ。
「フィリ、優のえほんが楽しかったよ!」
「そっかそっか。シスターさんが読んでくれたんだね」
「ん!」
私とユリシーズさんが寺子屋で授業を受けている間、フィリベールくんは教会で預かって下さっていたのだ。
そこで前に寄贈した、絵本の読み聞かせをして頂いたらしいな。
「えほん、お母さんのおはなしとはちがったの」
「ん?違ったの?」
フィリベールくんが聞いていたのは、別解釈とか、他の話と融合したか融合する前のお話とかだったのかな?
「…だったの」
「へえー!そんなお話だったんだね!」
「ああ、それも聞いた事があるな。もう一つ、別のもあるよ」
ユリシーズさんから三個目のバージョンを聞いてみると、それはそれで興味深い内容だった。
そうだな。インドの叙事詩みたいな印象かな?
勇者が目的の為に転生して、こういう話もあれは、更に転生してこういう話もあるよって感じなんだ。
インドの神話以外、他の神話で転生してっていうのは知らないから。
「その男は、死ぬと同時に炎に還り、すぐさま赤ん坊として蘇る事を繰り返していたらしい」
「不死鳥みたいだな…」
まあ、だから奥さんが変わっているのが納得。時代もちょっと変わっているのも納得。
「その男は、人の形をした不死鳥の一種か何かなんじゃないかって、親父は言っていたな」
「妖精とか精霊とか、神霊なんかの可能性は?」
「妖精はごくごく稀に現れるけど…。精霊や神霊、それ以上の者は姿を現さないから。ないと思う」
ファンタジーなこの世界でも、精霊以上の存在は姿を現さないのか。
「あ。そう言えば、魔物から魔石って出ないよね?」
気にしてなかったけど、魔物倒して魔石回収もファンタジーの定番だよね?
「魔物から魔石?地球の生き物は体内に魔石とか、何か石を内包しているの?」
「いや、内包していないよ」
あってもせいぜい結石くらいだな。
「ここでも石を内包している生物はいないよ。もちろん、魔石も」
個人的にはそれは納得。
「じゃあ、普通の生物と魔物の違いは?」
これも聞いた事がなかったな。
「曖昧なのもいるけど、身体強化なり何なりの魔法が使える生物が魔物。
殆どは身体強化しか使えないけど、竜やフェンリルみたいな様々な魔法を使う強い魔物もいるな」
〘む?ちょっと違うかな〙
「シルバー、どう違うの?」
〘今は魔力を持つ生き物は全て魔物だけど、昔は違ったらしいよ。
神々と悪魔の戦いに加わった者だけが、本来は魔力を持った生き物、魔物と呼ばれていたらしい。
悪魔の邪気にあてられ、狂った生き物も、今は魔物と呼ばれているみたいだけどね〙
「へー!そうなんだ!」
「それは初耳」
これはシルバーがいたから知れた事だろうな。
たまにはこうして聞く側に周ると、面白い話が聞けるな。
この日はシルバーから他にも色んな話を聞いて、ユリシーズさん共々、色んな事をシルバーから教わった。
まだまだ教わる事、知る事は多いようだ。
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