58:楽しい時間は過ぎるのが早い
「あっつーーーい…」
「そうだな。この時間からこの暑さは…」
ユリシーズさんと並んでキッチンで食事の準備をしていたのたが…。
早朝から、日本の夏を思い出させる暑さとなっている。
「クーたちには、狩りは別の日にしてもらお…」
海老の卵炒めを作りながら、そんな言葉も漏れる暑さにうんざりしてしまう。
「クーたちも暑いのは得意じゃないから。良いんじゃない」
そう言うユリシーズさんは、隣でツナとトマトの冷製パスタの仕上げに掛かっている。
パスタを今まで食べてきて、ブロンズダイズ使用のパスタっぽいと思った。表面がザラザラしているんだ。
表面がザラザラしているから冷製パスタには向かないパスタかも知れないが、ひんやりした食事のバリエーションを増やしたい。
日本の夏を思い出すような日は、ひんやりした食事を摂りたくなる。
「そうだね。こう暑いと、動き回るのは避けたいね」
コンテナハウスは冷暖房完備だ。ただ、暑がりな私に合わせた冷房にすると、他の人には冷え過ぎになる。よって、ほどほどの冷房にしている。
夜はユリシーズさんと眠っていて、それが寝苦しかったりする。
水枕みたいな物とか作って、ちょっと対策はしているけどね。
孤児院で買った豚肉の味噌漬けにスープもでき、朝ご飯の時間となる。
「冷たいパスタ…!これも美味しいね!」
「うどんサラダも冷たい食事で驚いたけど、夏には冷たい食事も良いわね!」
「ちゅるちゅる、もっと」
「んん~っ!これも作り方教えて!」
「覚えないと損だわ!」
ゾーイさんたちは無言でバクバク食べていらっしゃるし、デジレさんたちにも好評か。なら、また冷製パスタ作ろうかな。
個人的には、手に入るパスタは冷製には向かないと思ったけどね。パスタが食べれるだけ良しとしよう。
◇
食事の後、暑いので皆コンテナハウスに引き籠もるらしい。もちろん、冷房があるからだ。
私はパワーストーンブレスなどのメンテナンスを。ユリシーズさんは、メスティンで焼くパンの練習をする事にした。
ちなみにこのメスティン。鉄製なので、かなり頑張って育てたのは言うまでもない。
「薄力粉で作るパンは、焦げ色薄め。しっとり系になるよ。で、強力粉のパンは、焦げ色しっかりめに付く。で、どっしり系になるのが特徴かな?
どっちも、弱火でじっくりじっくり焼くのがポイント」
発酵しないパンの種だけ一緒に作ると、ユリシーズさんはメスティンでパンを焼き始めた。
それを見つつ、私はパワーストーンアクセのメンテナンスに取り掛かる。
十ニミリ玉の、総クラック水晶のブレスレット。ユリシーズさんのお気に入りのブレスレットだ。
ゴムがないので、細い糸を縄編みした物を代用してブレスレットは作っている。
鋏を入れ、縄編みを断つ。そして、一玉一玉丁寧に外していく。
「…どの玉も虹が凄いね。嫌な気配もないし、弱っている感じもしないわ」
「毎日聖魔法で浄化とエネルギー補給しているし、優のと一緒に、夜とか外している間はクラスターに乗せているから」
「それしないと、パワーストーンとしては死んでしまうからね。死んでしまったら、お守りにはなってくれない」
力がある事がパワーストーンだ。力をなくしてしまえば、それはパワーストーンではなく、ビーズと変わらない。
話は変わるが、魔石は元々使い捨てだった。試しにこの方法でメンテナンスすると、過剰な使い方をしなければ半永久的に使えると分かった。
もちろん、報酬が大変な事になったよ………。
見たり触ったりしながら、一玉一玉確認して全部縄編みから外す。
「大きな傷がついた玉があるね。気になる?」
「いや」
「なら、この玉のまま組み直すね」
「頼む」
〘優、僕のは?〙
〘優、私のは?〙
にゅっと、左右の脇からクーとルーが頭を出して、顔を覗き込んで来た。
「この後ちゃんとするから。待っててね」
コンテナハウスの一階。外へ行かない代わりに、クーたちのスペースで作業をしている。
狩りの代わりの、コミュニケーションタイムでもあるからだ。
クーとルーの頭を撫でてあげると、ユリシーズさんのブレスレットのメンテナンスが終わるのを、お座りをして大人しく待ち始めた。
「フィリもほしい」
フィリベールくんは、あぐらをかいた私の膝の上だ。
「フィリベールくんも、パワーストーンが欲しいの?じゃあクーとルーの次ね。順番ね」
「んっ」
後で作ってもらえると、先程までと同じように、膝の上で静かになったフィリベールくん。
待っててね。フィリベールくんが喜ぶブレスレット作るからね。
ユリシーズさんのブレスレットを組み終わると、日向にブレスレットを置いて、日光浴浄化をする。
光が収斂して火事になる事もあるので、長時間はしない。
クーの首輪のメンテナンスが終わるまでの、しばらくの間だ。
「クー、お待たせ。首輪、きつくなってる?」
〘前に緩くしてくれたから、平気だよ〙
「じゃあ首輪はこのままで大丈夫だね」
〘うん〙
クーとルーの首輪は、以前は私のハンドメイドの物だったんだけど。今は貴族御用達の服飾店で見つけたベルトを流用している。
調査行軍に出る前に見付けて使い始めたから、そんなに劣化していない。
「…はい。青水晶、元気になったよ」
ハンドメイドの首輪の時から使っている、家族全員お揃いの青水晶の浄化をしたらメンテナンスは終了。
〘くふん。優の気配がいっぱい!〙
青水晶の浄化をしてあげると、いつもそう言ってご機嫌になる。
ポイントの青水晶もきらりと輝いて、まるで同意しているようだ。
〘次、ルーのー!〙
「うん、そうだね。ルー、お待たせ」
成長すると単体生活になる割に、クーとルーには明確な序列が存在している。
私が一番、二番はクー。三番がルー。これを破ると後が大変なので、この順番は絶対だ。
他はかなり曖昧で、よく分からない謎序列でもある。
そんな事もあり、じっと順番を待っていたルーの首輪と青水晶のメンテナンスをしてあげる。それだけでルーもクー同様、とてもご機嫌になる。
〘ルーのも、優の気配がいっぱいなのー!〙
…。これはクーと変わらないけど。
因みにシルバーは、はしゃぐクーとルーを気にしているが、我関せずの体で寝そべっている。
「さて。フィリベールくん、お待たせ。フィリベールくんのを作ろうね」
今度はフィリベールくんのブレスレットを組む時間だ。
「ん!」
絨毯の上に、小皿に入れた色んなパワーストーンを並べる。
ローズクォーツなんかのピンク系から、ブルーレースアゲートみたいな水色系。翡翠なんかのグリーン系。アメシストなんかのパープル系に、琥珀などのイエロー系、水晶などなど。
「フィリベールくんのは、どのストーンが良いかな?」
「きらきらがいっぱい!」
フィリベールくんは並べたストーンに目を輝かせ、ストーンを選んで行く。
ん?ユリシーズさんが気になるらしい。チラチラこちらを見ている。よそ見していると、パン焦がすよ?
「んっと、これとー。この青いのと、これ!」
この国にも水色という表現がないので、青いのと選んだアクアマリン。それにブルーレースアゲート。最後に選んたのが、グリーンフローライト。
うん。色味が柔らかくて良いな。
八ミリ玉で、何玉使うと指一本分のゆとりがあるブレスレットになるか合わせてみる。そして玉の配置を決めると、ブレスレットを組み上げる。
ユリシーズさんも、何やら選んでいるね。
「って、ユリシーズさん!パン、パン!焦げ臭いよ!」
「あ…!」
こうしてこの日、ちょっとしたハプニングがあったのが最後。
夏期休暇が終わるまで、料理を皆に教えたり。クーとルー、シルバーと狩りへ行ったり。海釣りに海へもう一度行ったりー…。
ハプニングらしいハプニングはなく、目一杯楽しい夏期休暇を楽しめた。
楽しかった夏期休暇はあっと言う間に終わり、私たちは西部の不思議な町へと戻ったのだった。
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