47:ご馳走とペアサイダーと
マンガリッツァみたいな豚のほほ肉で、ローマの郷土料理、グリーチャを。但し、ローマのチーズ、ペコリーノ・ロマーノなしね。
フィレでピッツァヨーラ風を。風なのは、本当は牛肉で作るから。
これはイタリアの、味付き焼肉みたいな料理だ。味付けはトマトなんだよ。
マンガリッツァみたいな豚の料理は、以上となる。
マンガリッツァみたいな豚は、十一頭の群れに、雄一頭、雌ニ頭の合計三頭がいた。
三頭の内、雄雌各一頭は繁殖用に残すでしょ。食べれるのは残りの一頭。それを私たちと軍で分けたので、そんなに沢山量はないんだ。
いつか増えて、たくさん食べれたら良いな。
「お待たせしました。
ほほ肉を使ったパスタ、グリーチャ。フィレでピッツァヨーラ。ピッツァヨーラは、トマト味の味付き焼肉…、かな。
他に縮みほうれん草のグラタン。木立ちトマトのチーズ焼き。三色トマトと、三色パプリカのチョップ・ド・サラダ。オニオンスープ。
あ、パンとご飯もありますから、食べる方はどうぞ。頂きます」
月曜日の夜。待ちに待ったマンガリッツァみたいな豚を使ったご飯だ。
八百屋さんでライ麦パンと交換した物も楽しみ。木立ちトマトやパプリカ、縮みほうれん草がそうだ。
最近の皆のお気に入り、ナッツとドライフルーツの香りバター。りんごバター。蜂蜜ミルクジャムも常備しているよ。
今日は更に、牡蠣のタルタルソースもある。
牡蠣は八百屋さんが親戚から頂いた物なんだけど…。食べ方が分からず、どうした物かと困っていらっしゃったんだ。
活きの良い生牡蠣なら、レモン絞ってそのまま食べても美味しいのにね。この町は海からちょっと離れているから、海産物には慣れていらっしゃらないらしい。
お話を伺って、それならと牡蠣も交換して頂いた。冬に頂いて、凍らせて無限収納に入れっ放しになっていたとは勿体ない話だ。
さてさて、考え事はそれくらいにして。楽しみにしていた、マンガリッツァみたいな豚さんを食べよう。
ほほ肉が手に入らないので、いつもベーコンでしていたグリーチャを口へ運ぶ。もちろん、マンガリッツァみたいな豚のほほ肉も一緒にだ。
「ベーコンとは全然違う…!マンガリッツァだからか、ほほ肉でもそんなに硬くないな。コリコリした食感も良いし、脂も美味しい!」
「こっちの、ピ、ピ…ッツァ…ヨーラ?いつもの味付き焼肉とは違うけど。薄い肉と棒みたいな切り方の肉が混ざってて、トマトと合わせても味がしっかりしてて美味い」
「んー!!パスタが美味しい…!コリコリとプリプリが堪らない…!」
「チーズたっぷりでこってり気味なのに、美味しいわね!」
「もうないのが残念」
「また食べたいねぇ!」
「見付けたら捕獲したり、繁殖させて数を増やさなきゃね!
あ、本当!いつもの焼肉と違うけど、このトマト味のも美味しい!」
「こっちの縮みほうれん草のグラタン!これも白いのが少ないけど、とっても美味しいわ!
じゃが芋の団子も癖になるわね!」
「あ、それ。ベシャメルソースっていうソースを使わず、生クリームで作るグラタンなんですよ。
じゃが芋の団子はニョッキって言います。また何か、ニョッキの料理を作りますね」
「ありがとう。グラタンも、色んな作り方があるのね」
ワイワイ言いながらも、料理はどんどん皆の胃に収まっていく。
エブリンさんとゾーイさんは、ホットプレートでシャモアの焼肉までしている。それにも関わらず、他の料理を食べるスピードが私たちと変わらない。
お招きしたタドリィ親方、親方の弟子のセーマルくん。それに統括ギルドの職員、アベラさん。
三人は初めから、黙々と無言で食べている。かなりお気に召したようだ。
タドリィ親方が差し入れて下さった、町の名産品のペアサイダー。梨で作ったシードルも、爽やかな酸味が口内をさっぱりとリセットしてくれるので、ついつい酒量が増える。
パスタに入れていたほほ肉はコリコリ&プリプリしていたが、ピッツァヨーラに使ったフィレは聞いていた通り。豚っていうか、牛肉っぽいのが良く分かる。
味はしっかりしているが、ペアサイダーのお陰で最後まで美味しく頂けた。
オリーブオイルと岩塩を掛けた三色トマトと、三色パプリカのチョップ・ド・サラダも、とても良い箸休めになっている。
トマトは赤、緑、黄色。パプリカは紫、黒、茶色と、変わった色のものだ。
完熟しても緑色したトマトの品種があるのは知っていた。
ここのはなのか?地球で緑のトマトを食べた事がないから比べようはない。
初めての緑のトマトは意外と甘みが強く、程よい酸味もあって、洋食の箸休めにはありがたい品種のトマトかも。
「どれも本当に美味しい。
カーニバルの皆さんが食べ物に惹かれて、ここを拠点にするのが分かります」
「でしょ?」
「大寒波の後、西部に残った二つの町の一つでもあってさ。ちゃんとしたギルドがあるのも、ここを拠点にした理由ね」
「ギルドって、町には必ずあるけど、村は統括ギルドだけって所が殆どでしたっけ?」
「そうよ。例外は、薬草が凄く採れる土地なら薬師ギルドが。魔石や宝石がたくさん採掘できる土地なら、魔石ギルドが。
そんな風に、持ち込まれる物の量によって、統括ギルドの他に、該当ギルドがある所があるくらいね」
「逆に、統括ギルドもない村もあるよ」
「へー、ギルドがない村もあるんだね。
マンガリッツァみたいな豚は、ここの冒険者ギルド主導で増やすんだよね?
そんな事も冒険者ギルドがしてるって、ちょっと意外」
「持ち込まれた物の解体が多いからな」
「そうね。解体もするけど、希少種や有益な物の繁殖、栽培も、冒険者ギルドの重要な仕事の一つよ」
「下級ポーションに使う薬草とか、畑で栽培した方が、野山を探すより効率が良いしね」
「下級ポーションに使う薬草は、どれも年中枯れないけどさ〜」
「山野を探して集めるとなると、すっごく手間ぁ。魔物に遭遇する事もあって、意外と危険だしぃ」
「ああ、それでか。冒険者ギルドが採取日と行き先を決めて、護衛まで付けて薬草摘みの人を募集してるのが不思議だったんだ」
「薬師ギルドや、魔法使いギルド、錬金術師ギルドでは薬草を育ててるけどね」
「下級ポーションは消耗品だから!」
「採取してぇ、栽培もしても薬草が足りないぃ!」
「ポーション絆創膏や、一瓶の小分け購入で随分マシになったけど。
前はポーション使う時は、一度で一瓶使い切ってた。そういうもんだって思ってたから。
ポーションを使う人口が増えてるし…。ポーションに使う薬草の栽培が始まっても、慢性的に不足気味になってた…」
「ポーションを使うレベルの怪我でも、必ず一瓶使わないと治らない怪我ばかりじゃないよね?なのに必ず一瓶使い切るのは、すっごく勿体ないじゃない」
勿体ないの精神。それは日本人の誇る精神だ。この世界にも広げようじゃないか。
「美味いっ!嬢ちゃんの作る飯は、相変わらず美味いの!」
びっくりした…!
「僕、孤児院でこんなに美味しいご飯食べた事がないや」
「く…、苦し…っ。お腹一杯だって分かっているのに、後一口、後一口って…!」
黙々と無言でご飯を食べていた三人が喋り出し、この後もご馳走を食べ。酒精強化ワインなんかのお酒も追加したり。
今夜も夜遅くまで、ご馳走とお酒を味わいながら、話に花が咲いた。
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなど、お気楽に下の
☆☆☆☆☆
にて★1から★5で評価して下さいね。
いいね!も、宜しくお願いします。
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしてます。