4:お供え物の狩りと冬キャン
「やっば。忘れてた…っ」
「何を?」
「冒険者や猟師は一月から三月が終わるまでの間に、狩った獲物を森に供える習慣があるんだ。
俺、今年はまだしてない」
ばたばた準備を整え、急いでクーとルーと、別の日にユリシーズさんとも出会った森の奥深くへ分け入る。
コンテナハウスを出してもいいが、たまには普通の野営をしようって事で狩りをしながら冬キャンだ。
キャンプは久しぶり。三月には入っているが、まだまだ雪深いシュシェーナの冬キャンってどんなのかな?楽しみ。
お父さんに許可がもらえないかと思ったけど、そこらの冒険者より強い二人と二匹で行くっていうんだ。行ってもかまわないとあっさり許可がもらえた。
お父さん、ありがとう。
しっかし、なぜ獲物の少ない真冬に?
「だからだよ。夏は多くの人がお供えする。でも、冬でもお供えしないと神さまの食事がないからするんだよ」
なるほど。帰ったら詳しく聞いて、しっかりまとめよう。
〘優と狩りー〙
〘久しぶりなのー〙
「そうだね、いつ以来かな?
最近は二匹だけで狩りへ行っているもんね」
〘そうなのー〙
〘ねーっ〙
クーとルーは顔パスで門を出入りする許可をもらったので、週一くらいの頻度で二匹そろって鮮度の良い食事をしに出かけているんだ。
まだまだ遊びたい盛りだし、運動不足解消とかもろもろ込みでの対策でもある。
私は魔物の馬のアイルに、ユリシーズさんは普通の馬のアークに跨がりクーとルーの先導で冬の森を進む。
〘この辺ーっ〙
〘この辺でよく獲物獲れるのー〙
「クー、ルー。教えてくれてありがとう」
「ありがとう」
クーとルーが教えてくれた場所の近く。テントを張るのによさそうな、僅かに開けた場所に冬用テントを張る。
夏用より厚手で、寒さも割と凌げる素材のテントだ。下は温かくなる加工のされた敷物を、隙間なく敷いてある。
その上にコットを設置して、コットの下に簡易ヒーターを置く。寝具の筒型の毛布を敷き、天井から簡易ヒーターとライトを吊るす。前室に調理場を作って完成だ。
「温かい加工の敷物で底冷えがかなり抑えられてるし、簡易ヒーターも使っててかなり温かいんだね」
「俺は簡易ヒーター使うのは初めてだけど、温かい加工の敷物だけの時よりかなり温かいな」
簡易クーラー兼ヒーターを登録した頃には、もう一緒に行動してたもんな。
それにその年の秋はキャンピングカーで移動してたから、使う機会もなかったよね。
「お父さんや私の作ったものが役に立ててて良かったよ」
「うん。冒険者仲間にも評判」
冒険者さんたちは狩猟小屋を拠点に狩りをされているわけではない。基本テント生活だ。もう少し快適に過ごせる、安価なテントを作れないか考えても良いのかも。
〘優、ぼくたちご飯に行ってもいい?〙
〘ご飯に行きたいのー〙
「良いよ。夜には帰って来るんだよね?」
〘うん!〙
〘ユリシーズは?〙
「俺は夕方が近いから。止めとく」
〘ふーん、そうなの?〙
〘ま、いいや。行ってきますなのーっ〙
「いってらっしゃい」
「頑張れよ」
二匹はあっという間に冬の森へ消えて行った。
「私たちは晩ごはんの用意しようか?」
「温かいもの飲んでからにしよう。作ってくれる?」
「じゃあホットカシス」
ホットカシスはすぐにできるので、二人でアイルとアークのお世話をしてあげる。
それが終わるとホットカシスを飲み、晩ごはんの支度にかかる。
飯盒とお米を用意して、まずはご飯を炊こう。
「朝の分も炊いちゃうか。三合…。余るかな?」
「それ何?」
「ん?飯盒?この内蓋で二合、蓋で三合が量れるようになってるんだ。
飯盒に線が入ってて、水加減も楽ちん。
ご飯は四合炊けるようになってるよ」
「こんな便利なのあるんだ。これは登録してないの?」
「してないよ。だってほとんどの方がパン食べるから要らないでしょ?」
「そうでもないよ。パンは米に比べて嵩張るから、量を持ち運ぶのは大変。それで米が人気になって来てるんだ。
ただ、米と水の加減が分からないのが難点」
「飯盒は米を炊くために改良されて出来た品だから、普通の鍋とかより使うのに向いてるね。
帰ったら登録するよ」
「うん、頼む」
こうしてキャンピングカー生活では知り得なかった事を聞いたりして、手早く食事の用意をすませる。
今日はユリシーズさんの作ってくれた、ミルフィーユ鍋みたいな物。出汁は入っていないが、オーク肉がいい仕事をしていてとても美味しかった。
鍋の方に小さじ1くらいのしょう油を入れたら、それだけで絶品グルメになったよ!
〘ただいまーっ〙
〘お腹いっぱいーっ〙
「クー、ルー。お帰り」
「お帰り」
食事が終わってしばらくすると、クーとルーが戻って来た。顔周りを拭いてあげて、皆で眠る。
ユリシーズさんとそれぞれ分かれてコットに横になり、クーとルーは敷物の上で寝たよ。
「お早う。早目に獲物が狩れたら良いね」
「頑張るよ」
なかなか快適なテント泊だったためか、目覚めもすっきり。
そのためか、体も軽くて早々に大きな鹿を仕留められた。
「神さまの好物って言われている、大きな鹿をお供えできるなんてツイてるな」
「神さまの好物が狩れて良かったね」
「うん」
こうして予定外のお供え物の狩りは、大きな成果をあげて無事に終わった。
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなどお気楽に、下の
☆☆☆☆☆
にて★1から★5で評価して下さいね!
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしてます!