39:ライ麦パンでサンドイッチ
ドイツでは、ライ麦パンにはライ麦の配合率で種類分けがされる。
ロッゲンブロート。ライ麦粉を90%以上使用したパン。
ロッゲンミッシュブロート。ライ麦粉を50~89%使用したパン。
ミッシュブロート。小麦粉とライ麦粉が1:1で配合されたパン。
ヴァイツェンミッシュブロート。小麦粉を50~89%使用と、ライ麦粉より小麦粉の配合が多いパン。
ヴァイツェンブロート。小麦を90%以上使用したパン。
以上の五種類に分けられている。
日々小麦のお粥なら毎日食べれているので、ヴァイシェンミッシュブロートとロッゲンブロートを作ろうと思う。
サワー種を使うとどうしても強い酸味が入るが、サワー種ならライ麦と水で作れるのでタダだ。
しかし、パン屋さんで酵母を買うと、お粥より高くなる。
味を取るか安さを取るか…。その辺は皆さんにお任せしようと思う。
ライ麦は小麦とは違い、しっかり完熟してから、なおかつ乾燥している状態で刈り入れをする作物だ。
その刈り入れをどうしたものかと思っていたのだが、休みの軍の方たちが手伝って下さった。
昨日の今日と随分急な話にもかかわらず、有難い事だ。
「ありがとうございました。バタバタした後で疲れていらっしゃるでしょうに、助かりました」
「この麦があればお粥の日がなくなるかもしれないんだ。私たちにも益がありますから、気にしないで下さい」
何と?!軍の方たちにもお粥の日があるの?体が資本なのに、お粥じゃ物足りないだろうなあ…。
「この後ライ麦を挽きますから、夕食にお出ししてみますね」
「楽しみにしてますよ!」
皆さんはこの後も手伝って下さり、脱穀どころか製粉まで済み、ライ麦粉が手に入った。
サワー種はまだ出来てないが、他の酵母で早速ライ麦パンを作ろう。
◇
駐屯している方たちの食事を作る厨房をお借りし、ヴァイシェンミッシュブロートとロッゲンブロートを次々焼き上げて頂く。
各村の駐屯している方たちの宿舎の厨房は、普段から補給部隊など、さらに先へ進む方たちの移動中のパンを焼くのにも使われている。
移動中に焼くとなると、移動時間がなくなるからね…。
そんな事もあり、すんなり厨房をお借りする事ができたんだ。今回は勤めていらっしゃる料理人さん付きだ。
「この辺りのじゃが芋は、皮を剥かなくても食べれる種類なんですね?」
「ああ。ここから南の地域で採れるじゃが芋は、ほとんどがそうだ」
「じゃあ皮付のまま大きめのさいの目切りにして、玉ねぎとベーコンと一緒に炒めて頂けますか?」
「よっしゃ。任せな!」
料理長さんはニホンショクの作り方を直に見れると仰って喜び、とてもフレンドリーな方で作業がやり易い。お願いもとてもし易くて、スムーズに作業が進む。
今夜のメニューは、ライ麦パンのサンドイッチ。具はオーストリア名物、チローラーグレーステル。
チローラーグレーステルはじゃが芋を茹でてから玉ねぎ、ベーコンと一緒に炒め、目玉焼きをトッピングした料理だ。
オーストリアではチローラーグレーステルに入っているじゃが芋は、なんと皮付きだ。この地方も皮付きで食べられているそうなので、それに倣う。より本当のチローラーグレーステルっぽくなりそうだしね。
食べて問題ないなら剥く手間が省け、皮を剥いた分の量が減る事もないのでいい事だと思う。
茹でたじゃが芋を、玉ねぎとベーコンと合せて炒める。目玉焼きは別の方が作って下さっているよ。
更に別の方は、アメリカザリガニみたいなザリガニを茹でていらっしゃる。
日本では馴染みがないが、スウェーデンではザリガニパーティは夏の風物詩だったりする。それくらい、ヨーロッパではポピュラーな食べ物なのだ。
そんなザリガニだが、こちらでも広く一般的に食べられているとの事。
私としては、オーク肉より抵抗なく食べれたよ。オーク肉なんて地球にないからね。見た目もアレだしさ………。
オーク肉の事はさておき、こちらのザリガニなんだが、カニに近い味がしてかなり美味しい!
伊勢海老と間違えそうなくらい大きいので、食いでもある。
普通、食事は一汁一菜か二菜が一食に使える食材の限度だそうだ。
日本でも食料に困らなくなったのは、そんなに昔の事ではない。
ここは中世か近世に近い世界。いつでもあれこれ手に入れられ、好きなだけ食べれるには至っていない時代だ。なので私も、少しの量でバランスの良い食事を出す様に方向転換した方が良いかも知れない。
そう考える様になってきているので、今日はライ麦パンのサンドイッチ。ザリガニの塩茹で。ありあわせの具のスープ。以上にした。
ただ、サンドイッチは、一つは先程のチローラーグレーステルを挟んだ物。もちろん目玉焼きも挟んである。もう一つはアボカドとチーズの物。この二種類あるけどね。
一汁一菜でも、可能な限り栄養は気にしたいところだからさ。
「おお!本当にパンが黒いな!」
「ちょっと酸っぱいが、腹持ちが良いと聞いたぜ」
夕食の時間になり、駐屯地勤めの方たちが食堂へ集まり始めた。
「食べ慣れない味のパンだと思いますが、少し小麦も入っていてライ麦粉100%の物より食べやすいと思います。食べてみて下さいね」
「もちろん!ニホンショク楽しみにしてたんだ!食べますよ!」
いや、これはニホンショクではないんだな。黙っているけど、ごめんなさい。
ご飯を受け取ると、さっそく物珍しいサンドイッチに齧りつく屈強な男性たち。
「…確かにちょっと白いパンとは違うな。
あ、いや?黄身があると、食べやすい味になるな」
「こっちのアボカドとチーズの方は、パンが更に堅いな。味の方は、チーズのお陰で酸味は抑えられてて…。炒めた野菜入りの方と同じくらい食べやすい」
「ああ。パンがそれぞれ違うようだが、どっちも具が食べやすくしてくれているな!」
「これなら慣れれば普通に食える味だよな」
「おう。何より、黒くてちょっと酸味のあるパンでも、お粥より良いよ!」
「俺はこのパン、慣れるまで辛そうだわ…」
ライ麦パンが苦手な方ももちろんいらっしゃるが、どうにか受け入れられそうで良かった。
そんな話を聞きながら、料理長さんにローストポーク。シュークルートとキャベツの水煮のどっちにするか悩んだが、キャベツの水煮。水煮を選んだ理由は、水煮の方が使う調味料が少ないから。後は鯉のフライ。以上を作りながら、レシピをレクチャーするのだった。
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