35:畑の再建
昨夜は炊き出しに、デンマークのハンバ ーグでフリカデラ。付け合せの焼きカブ、それに南仏の田舎風具だくさんスープを作って提供した。
フリカデラは豚ミンチ100%で、牛乳は使うけどパン要らないしクミンも使わない。簡単に作れるが美味しくて好評だったよ。
今朝はベーコンエッグ。焼いたアスパラ。マッシュルームのスープと焼きグレープフルーツ。
田舎では、まだまだ生野菜を食べる習慣がないらしい。こんな時なので、食べ慣れない生野菜のサラダは作らなかった。
代わりに大好きで沢山無限収納に入れてある、グレープフルーツをサラダの代わりにチョイス。
こっちの酸味が強いグレープフルーツだが、焼きグレープフルーツは食べやすいと言って頂けた。
寝る所にも食事にも困らなかったからか、和やかな朝ごはんの時間だったのはほっとした。
海外でこういう事があった時、TVで良く見る暴動がなかったのに一番ほっとしたのは内緒だけどね。
そんな朝ごはんの後、私は畑の方の再建のお手伝いを割り当てられた。
電気柵はそこまで急がなくても、新しい防壁で十分な防衛が見込めるという将軍さまのご判断だ。
◇
「あ、畑。被害はほとんどなさそうですね!」
村の方たちや軍の方たちと、ざっと畑を見渡してみた。
「柵もほとんど崩れてないし、作物もあまり荒らされていない様子…。
本当に、本当に良かったです」
重軽傷者は出たものの、死者はなかった。これは不幸中の幸いだ。
私たちが到着する前に治療した方の内、お二人が退役を余儀なくされてしまっているが…。
お一人は腕を、もうお一人は足を噛み千切られておられたのだ。
千切れた手足を繋ぐ方法は確立した。
だが、いつまで続くか分からない群れ虎との戦闘の傍ら、その治療をする安全な場所がない。また、失血死の危険の回避のためにも、その方法をしているゆとりがなかったのだ。
そういった方には年金があるそうなので、金銭的にはいくらか安心できるだろう。
しかし、これからの人生に、大きな暗い影を落とす事は間違いないだろうな…。
村人の多くを占めるのは農家さん。畑の被害がとても少ないのは、村と村人にとっては明るいニュースだろう。
「これは…、鳴子?蔦は変わった匂いがしてる」
こっちで鳴子は初めて見たかも。蔦は旧王都の城壁では見なかった物もあるな。それも魔物が嫌う匂いがする植物なのかな?
「鳴子は昔の転移者から伝わった物です。光る物、高い音がする物は特に効きますでね。
よく光る、細長い棒で作った物を張り巡らせてます。
こっちの蔦は、虎や猫が嫌う匂いがする植物です」
ウィンドチャイムみたいな鳴子って事か。顰みに倣うに留まらず、ちゃんとこちらに合ったものに改良されて使われているんだな。
猫に限らないが、強い光で失明する事もあるからね。急にぴかって光れば驚くだろうし、嫌がるかもだわ。
蔦は、マタタビの逆バージョン?虎も猫も、猫科獣だよね。
クー達は平気…。ではなさそうだな。
「クー、ルー、シルバー。匂いが辛いんでしょ?村の方に行ってる?」
〘いぃや〜〙
〘いるぅのぉ〜〙
〘二匹がいるなら、僕は村に戻るよ。鼻がムズムズする〙
人が嫌な匂いと思うくらいだ。クーとルーは我慢するようだが、シルバーは我慢できないみたい。村へ戻るそうだ。
「フェンリルにも辛い匂いのようですね。
この蔦を乾燥させて燃やすと、まだ遠くにいる猫も群れ虎も逃げる煙が出るんですよ。
私らの村の者はそれを利用して、腰に下げた香炉で焚きながら森に入りますが、やはり効果があるようですね」
熊よけならぬ、猫科獣避け!しかも意外なところで効果を実感!
「聞いた事があるな。最近出回ってる量が少なくなってるとも聞いたけど」
「服にも匂いが付くのでね。それで嫌がられてまして…」
「あ!もしかして、エブリンさんが昨日から嫌な匂いがそこらじゅうからするって言ってたのって?!」
エブリンさんは豹の獣人さんだ!猫科の獣人さんだから、この匂いに敏感なんじゃないのか?!
「獣人の方でしたかな?獣人の中にも、この匂いが駄目な方も多いですね」
決定だな。うわあ、村を離れるまで大変だなあ…。
「後で匂いを緩和する葉を届けましょう」
「そんなのあるんですか?」
「はい。葉を摘んで、半日ほどしか保たないんですが、ずいぶん感じる匂いはマシになりますよ」
話をしつつ、壊れた柵を修復していく。ちょくちょくマジックポーションを飲みながら。
だがこの柵と、村を囲う柵を作られた方がいらした。他にも柵を作れる方がいらしたので、お昼には作業は終わった。
今までで一番大きな畑だったが、皆馬に乗っていたので、それも早く柵を直して回れた要因だな。
◇
他の村もなんだが、この村もお昼ごはんを食べる習慣がないそうだ。なので、お昼はいらないとの事だった。
しかし、私は食べる。しっかりガッツリ食べる。
じゃあ食べたい方はどうぞって事で、しっかり食べたい方はハムとチーズのクロックムッシュを。もっと少なくっていい方は、茹でた旬野菜と魔物のキジのタルティーヌを振る舞った。後はスープ。
どっちもフランス料理で、クロックムッシュはホットサンド。タルティーヌはオープンサンドだよ。
クロックムッシュに使うチーズは、グリュイエールチーズとか、エメンタールチーズとか、使うチーズに拘るんだけど、こっちにあるチーズ使用版だ。
お好み焼きじゃないけど、いい匂いが漂えば食欲も刺激されるという物。ほとんどの方がお昼ごはんを食べる結果となったと付け加えておくよ。
そんなお昼を済ませると、畑へ作物の様子を見に行く。
この村の畑は、見て来た中では頑丈な柵で初めから囲われていた。つまり、安全を確保するのが優先と判断しての順位だ。
「踏み荒らされて、少し駄目っぽい物もありますね」
「ポット栽培して、支柱も立てて育てていて…。育生が良くて楽しみにしていたのですが…」
私は悲観はしていない。秘策があるんだ。
皆で支柱を立て直し、作物を改めてその支柱に留めてゆく。
「よっし。じゃあ仕上げしましょう」
無限収納からジョウロとたくさんの瓶を取り出す。ジョウロに一瓶分の液体を入れ、水魔法でジョウロに水を満たす。
そして良くかき混ぜたら出来上がり。
「これを荒らされた作物にかけていって下さい」
畑に水をあげてもらう一方、ユリシーズさんと水魔法が使える方たちと共に、謎の液体入りジョウロを量産する。
「えっ?!これは…!??」
そんな驚きの声が、あちらこちらから上がる。
「ジョウロに入れているのは、私とユリシーズさんがポーションを作る練習してて沢山できた、格安ポーションなんです」
売る予定もなかったので、瓶に詰めただけだからね。何か分からなかっただろう。
秘策とは、格安ポーションを入れた水を撒く事だ。
折れた類はもちろん回復する。千切れた物は、根のない方は千切れたところから根が生える。根の付いている方は、そこからまた成長するのだ。
ポーション作る練習してて、気になって摘んできた物に掛けてみたんだ。そしたら効いたんだよね。
それに、もともとそういう栽培方法もあるしね。モンステラとかポトスとか、切ったのを水に挿しておくと根が出るのだ。
この方法で簡単に増やせるんだよ。
ちなみに地球の実家では、増やしすぎて私の部屋はジャングルと言われていた…。大きくし過ぎないように管理していたら、自然と増えただけじゃんかー。
話を戻そう。水でそうやって増やせるなら、ポーション使えばもっと簡単に増やせるんではないかと思ったのだ。
結果、思った通りだったってわけ。
意図して増やそうとするか、踏み荒らされたかの違いはある。それでも欲しい結果は同じだし、絶対効くと思ったんだ。
「凄い…!これで収穫が減る心配がなくなった!」
「いや、畑を増やさないと!」
作った物のうち、ほとんどが日の目を見る予定のなかった格安ポーション。だが、それがあったお陰で、畑も被害が格段に減ったのだった。いや、畑を増やすし、プラスになったかな?
何にせよ、格安ポーションが無駄にならなくて良かったよ。
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