3:パワーストーンのある生活
「アメシストドームぅ〜」
はあ、頬ずりしたくなる美人ちゃん!留守にしていた間に届いてるなんて、すっごい嬉しいな。
「それ、"成れの果て"だよ?」
ユリシーズさんはとても濃い紫色の、直径50センチくらいあるアメシストドームにはしゃぐ私に戸惑っている。
「地球との価値観の違いだね。地球でアメシストは、こういう色の濃い物が良いとされていたんだよ」
こちらでは同じアメシストでもラベンダーアメシストとかピンクアメシストとか、光を通す物はとても珍重されている。
逆に濃い色のアメシストは、"成れの果て"と呼ばれてて不人気。
というか、ラブラドライトとかムーンストーン、オパールなどの極一部の光を通さなくても好まれる物以外は不人気だ。
ルビーとかサファイア、エメラルドの濃い色の物は別枠扱いらしい。ややこしいな。
ラブラドライトはラブラドレッセンスが、ムーンストーンはシラーが、オパールは遊色効果が珍しいと、これらも別枠扱い。
ラピスラズリみたいな例外もある。ラピスラズリの場合、含まれているパイライトがどうも金だと思われているからと感じる。
それ、金じゃないからね…。
光を通さないストーンは日焼けした"成れの果て"。だから美の基準から外れるって考えられているっぽい。
光を通しても、水晶とかは取れすぎて価値がないって判定。
「"成れの果て"が日焼けって言われているけど、私の知っている石の日焼けは"褪色"と言って、色が薄くなる事を指すよ」
ボヌールの一角で話していたら、ばっとこちらを見られて恐い!
「オオシロ方伯、そのお話しは真ですの?」
「え、ええ。本当ですよ」
「石が日焼けしましたら、お色が薄くなると?」
「アメシストなんかはそうです」
あんまりにも詰め寄ってくる方がいるので、ユリシーズさんがかなり警戒してしまっている。
オーダーのお品ができるまで時間がかかるため併設してある喫茶スペース。そこに移ろう。
◇
「はあ、凄い迫力で恐かった…」
「確かに。かなりの迫力だった」
ストーンの褪色の話しの後。喫茶スペースから従業員の休憩室に場所を移した。ちらちら見られ、落ち着かなかったためだ。
そこでさっきの話の原本は紙に書いてまとめ、それを火魔法で木簡にコピーした物を作っていた。
喫茶スペースで時間を潰す方向けの読み物の一つにするのだ。
クラスターのお手入れ方法。さざれのお手入れ方法。浄化方法など、パワーストーンに関する物もいくつか置いてある。
ぶっちゃけ、パワーストーンは聖魔法で浄化もエネルギー補給もできる。が、クラスターとさざれは持って頂きたい。
持って頂きたい理由だが、クラスターはパワーストーンにとって浄化してくれつつエネルギー供給源でありベッド。
さざれは浄化機能付ベッド。
クラスターはポイントの向きがエネルギーの出てる向きなので、なるべく向きのそろった物がお勧め。
さざれは小さいとすぐ機能不全になるので、大きな物がお勧め。それに加え、取り込んだマイナスエネルギーを放出するのが不得意。そのため強力な浄化をまめにする必要がある。パワーストーンのエネルギー補給が別で必要なのも注意点だ。
クラスターやさざれのエネルギー補給は、月に一度程度の月光浴を。細部の埃まで払うのに、流水浄化もお勧めだ。
さざれは目の詰まった天然素材のざるを使って流水浄化して、しっかり乾かす事。
この世界ならパワーストーンと同じく、聖魔法でエネルギー補給可。
など、つらつら書き綴った。鉱物にお世話が必要なのが不思議らしく、でもとても人気になっていると喫茶スペースの方たちから聞いている。
「さ、これ置いたら帰ろうか」
「そうだな。し…、優は癒やされに来たはずなのに疲れただろう?帰ろう」
昨日、王都であった貴族院に出席して法案を通し帰って来たばかりだ。
女性の賃金の値上げ、最低一年生活できる程度の財産分与権他、いくつかを通すのに荒れた荒れた。
荒れて疲れたが、案が通ったので疲れた甲斐があったのは幸いだ。
「詰め寄られたのには驚いたけど、パワーストーンの事を話したりするのは好きだからそんなに疲れてないよ」
「なら良かった」
以前より他の人にもわかり易くなった笑顔で、ユリシーズさんが穏やかに微笑む。
◇
「あっちは窓際だし、天窓からの光も差すから。やっぱりここかな?」
東側の壁、キャスター付クローゼットよりちょっと南側にアール・デコ風に作った棚を設置。その上に持ち帰ったアメシストドームを飾る。
「うん、良いな」
心なしか、アメシストドームもご機嫌に見える。
今までお世話になっていた水晶クラスターはそのまま。明るい場所に置いてある。
そこはユリシーズさんのお気に入り。虹のたくさん入った天然クラック水晶のペンダントやブレスといった、お日さまの好きなストーンを任せている。
今日からアメシストドームには、あっちの水晶クラスターに乗せておけないストーンをお任せする。
ずいぶん前、サーラちゃんと河原で拾ったストーンの中にも、母竜にもらったお宝の中にも結構日光浴不可の物がある。
何というストーンか分からないから、日光浴は念のため避けようかな、みたいな物がほとんどだけどね。
「優、終わった?頼まれた紅茶入ったよ」
「あ、ありがとう。うん、終わったよ」
後は部屋に観葉植物がほしいけど。植物浄化にも使える生命力の強い鉢植え。
そんな事を考えつつ、パワーストーンのある生活に欲しい一応の環境が整ったのだった。
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