2:パワーストーンショップ
「じゃあ、今日から宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」×七人+α
旧王都に住んでいて、母子家庭で生活が出来ない方って条件で該当する方を探した結果。仕事と住む家が欲しいという、七家族を見付ける事が出来た。
土地はちょっと広めに確保して、そこに土魔法で社宅と店舗を建てて、そこへ入って頂いたよ。
部屋の広さは子供さんの数によって、1Kから3Kまでの部屋を割り振っている。
守衛さんや事務の方も、勿論雇っているからね。
料理教室の時に学習したので、今回は初めから店長さんも雇っている。
副店長さんは近いうちに、店長さんに店員さんたちの中から決めて頂く事にしているよ。
料理教室は立ち上げてすぐ離れて、あげく意識不明になって…………。さらに妃殿下方のご出産を見守る事にしたので、ほぼサーラちゃんに任せっきりだったからね…………。
サーラちゃんが寺子屋の中級課程を終えたのを期に、サーラちゃんが校長先生で、副校長先生にはリラさんに就いて頂いて体制を整え直したところだ。
話が逸れたね。パワーストーンだが、この世界には今のところ人造ストーンはない。あるのは天然石のみだ。
しかもだ。内包物のある物、幻影の類は、ほぼただみたいな扱い!
茶系のストーンもそう。宝石の茶系が嫌厭されているからか、煙水晶なんかもほとんど無価値とされている!
日本だと、どんなに希少で高価か!
そんなストーンも含め、日本ほど種類を取り扱ってはいないが、10ミリの丸玉メインで効果を書いたポップを付けて陳列してある。そこからお客さまに使いたい玉やルースを選んで頂いて、店員さんはマクラメ編みでブレスレットやネックレスにするのだ。
でもね。人気が出るのは、多分、多面カット水晶かスターカット水晶だと予測している。
透明度がとても高くて、ちょっと多面加工しただけで凄くキラキラするんだよ!
個人的には多面カットは邪気は跳ね除け、良いエネルギーだけを集めると言われているから、効果的にもお勧めだ。
「あの…………。こちらで手持ちのお守り石を、ネックレスやブレスレットにできるって本当ですか?」
「いらっしゃいませ。
はい、させて頂きますよ。こちらの見本から、どのデザインにするかお決め下さいね」
社宅兼パワストショップは、大通りから一本裏道に入った場所にある。しかし、妃殿下方にレッドルチルを差し上げた話が広く広まっているからだろう。それなりにお客さまがいらっしゃる。
手持ちのストーンの加工も承るので、その持ち込みもやって来る。
「お、オオシロ方伯さまでしょうか?もし良ければ、私に合う石を選んでもらえませんか?」
このお願いは非常に多い。多いが…………。
「パワーストーンは自分で選ぶと、仲良くなって力を貸してくれやすい物を選ぶと言われてるんだ。一口にパワーストーンと言っても、一玉一玉個性はあるからね。
ほら、人同士でも、仲良くなれる人とそうでもない人に分かれちゃうでしょ?」
「石に個性、ですか?!」
女の子は目を剥いて驚いている。
「うん、そうだよ。パワーストーンって不思議で面白いでしょ?」
にっこり笑ってそう言うと、女の子は「じゃあ選んでみます」と、ちょっと赤くなって離れて行った。
それを見て、隣でユリシーズさんがしぶーい顔しているよ(笑)
逆ナンしかされた事がない顔立ちだから、仕方ないだろ。
「優さま、すみません」
「はい、どうしました?」
問題の発生か?
「ブレスレットやネックレスなどの効果の一覧を、作ってどこへ置きましたか覚えていらっしゃいますか?」
「ああ、それなら…………」
問題ではなくてほっとする。
カウンターへ入り、探している一覧の場所を案内してあげた。
「あ、ここでしたね。すみませんでした」
「気にしないで。接客に戻ってね」
小さなお子さん三人を抱え、困っていらしたナラさん。彼女を見送ると、補充する物がないか見て回る。
「ストーンの出し入れ可能なヘンプ編みネックレスが人気だな」
ポリエステルなんてないので、麻紐で作ったストーンの出し入れ可能なネックレスが良く減っている。
麻とパワーストーンの親和性は高く、ストーンが働きやすくなる効果が見込めてかえっていい。
「子宝のお守り、レッドルチルは完売いたしました!」
おお、もう完売か。三十個あったんだけどな。
庶民には宝石なんて買える人はほぼいないが、キラキラした多面カット水晶各種も良く減っている。それらも補充してっと。
「レッドルチル!次はいつ入荷しますか?!」
「次ですか?」
…………貴族のお家のお使いの方とかかな?着ている服が、とても仕立てが良いな。
「産出地が見付かっていないので、未定です」
「そんな…………」
へなへなっと座り込むほどなのか…………。
「子宝のお守りとしてお持ちになるなら、女性ならローズクォーツ、男性ならアンバーも良いとされてます。一度ご検討頂けませんか?」
パワーストーンは、あくまで願いを叶えるサポートをするのだ。
王太子ご夫妻もキナル王子ご夫妻も、ちゃんと子供が授かりやすくなるためのヒーリングも受けていらっしゃいましたからね?
◇
「ははは、やっぱり女の子はキラキラした物が好きなんだな」
パワストショップ"ボヌール"初日を終え、家でその話しをしながらの夕飯時。
「そうみたいだね。この世界にはパワーストーンがなかったのに、かなり賑わったよ」
カリカリに焼いた豚肉と、根菜たっぷりの豚汁をすすってほっと一息つく。
「サーラちゃん、また腕をあげたね。豚汁、とっても美味しい」
「ほんと?嬉しい!」
今日の夕飯は、交代で料理教室の仕事がお休みだったサーラちゃんが作ってくれた。
「俺も願いがあるな。優、後で頼むよ」
「お母さんも、お母さんもっ!」
「サーラもして!」
「俺も」
…………。おいおい、全員じゃないか。ふう。
「はい、おしまい」
ユリシーズさんで耳かきは全員終了だ。私はお蔭で肩が凝ったぞ。
「ありがとう。これは知ったら病みつきになる」
世界には、耳かきがないところも結構ある。シュシェーナ王国では、細い棒に布を巻いて耳を軽くこするのが一般的な耳かき。
いつだったか、お父さんがあんまりにも耳が痒いっていうので、耳かきしてあげたんだ。それを見たお母さんに、私もしてって言うので、耳かきしてあげたら嵌った。
そしてみんな嵌った。やれやれ。
「耳かきはしてあげられないけど、寝る時に抱っこで許して?」
「…………うん」
パワーストーンも好きだが、ユリシーズさんの抱っこも好き。今はまだ恥ずかしいけど、これが私の癒やしになりつつある。
こうしてこの夜は、パワーストーンショップを持てた喜びを噛み締めながら、ユリシーズさんの抱っこで眠りに落ちて一日を終えた。
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