12:一つ目の原石
「うっわ、この個体も大きいな…」
エア89式小銃で仕留めた魔物の猪に近寄った感想だ。
西部の方の生物は、魔物も普通の動物も他の地域の個体よりニ周りは大きいとは聞いていた。それをまさに実感する大きさだ。
「大きさもですが、凶暴性は比較になりませんぞ」
そう、個体の大きさと凶暴性。それこそが西部の開拓が遅れている理由だったと知った。
だってね、そこら中がジェヴォーダンの獣とか、ツァボの人食いライオンとか、チャンパーワットの人食い虎で溢れているようなものだと考えてみてよ?
ブルッ。自分で考えて寒気がしたし…。
ま、まあそんな訳で、冒険者なら全員がBランク以上のパーティーでなければ太刀打ちできない生き物しかいないらしいのだ。
つまり、普通の人が住むには治安にも交通にも難が大ありって事。畑仕事もほぼ不可能だから、食料生産も自給自足もできないらしいのだ。
「大きくなるのは、肥育促進剤みたいな効果のある何かを食べてるのかな?それとも、遺伝的なものかなあ?」
聖魔法で探ってみても、嫌な気配はない。だから、食べても問題はないんだけどね。んー、病気とかではなさそうなのだが…。
凶暴性については、西へ行くほど興奮作用のある草が繁茂している事が分かっているそうだ。恐らくそれを食べているので興奮状態となっているのが原因だろうというのが定説らしい。
「ヒークソクシィンザイにシデーシティキとは?何でしょう?」
学者さんは肥育促進剤と、遺伝的という単語を聞き逃さなかった。
「肥育促進剤は、牛や豚を効果的に体重増加させると言われている薬です。
遺伝的はー…」
人なら人、猫なら猫と言ったその生物を作る設計図。その設計図に誤りがあると、誤りに応じた特徴を備えて生まれると説明した。
「白いカラスとか、白い鷹の報告例はありませんか?目も赤いと、尚可能性が高いです」
この世界でも分かりそうなアルビノの事を話してみたが、いるかな?
「稀なる使者が?!」
あ、いるんだ。稀なる使者として崇めておられるようだが、アルビノと仮定して少し詳しく話すと納得しておられた。
「オオシロ公の先程の攻撃が…!」
「集団暴走を食い止める際に、多くの魔物を一撃で仕留めたという技!」
偵察部隊が戻ると、今度は双頭隊などの方たちが姦しくなった。
私やユリシーズさんは、普段は非戦闘員の方たちの護衛をしている。そのため前線に立つ事なく過ごせていた。おかげで今日まで戦う事がなかったのだ。
「あ、ユリシーズさん!お帰りなさい」
どこに逃げようかと思っていたら、偵察に出ていたユリシーズさんが戻って来た。ちょっとホッとしたよ。
「ああ、ただいま」
「アークもお帰り。怪我しなかった?」
アークの首筋をかいてあげると、ご機嫌な声でブルルと嘶く。怪我はなさそう。良かった。
「将軍さまが野営にはまだ早いけど、今日はここで野営するって」
「ほんと?」
妙に嬉しがる私の様子を訝しがるユリシーズさんだったが、そんなの関係ない。
ちょっと戻った所で気になる物があったんだ。そこまで戻りたい。
ユリシーズさんにそう伝え、土魔法で女性たちのアパートやお風呂を作る。そして将軍さまの許可を頂いて、気になった物のあった場所まで戻る。
「うーん、たぶんこの辺から見えたんだけどな…」
ユリシーズさん、クー、ルーと戻り、それが見えた辺りからその方向を見てみる。
大きな岩がちらほら点在している辺り。そこから南を見てて…。
「あ!あった!ユリシーズさん、見つけた」
「凄い紫の部分があるな…」
「思っているパワーストーンなら、こんなもんだよ」
ユリシーズさんは成れの果ての一つとされているだろうこのストーンに、どんな効果があるのかと眺めている。
いそいそと無限収納に岩をしまい、他にもないかと近くを探してみる。
残念ながら、これだけのようだ。
「これだけみたいだね。暗くなる前に戻ろうか」
「そうしよう」
〘もう戻るの?〙
〘まだ明るいよ?〙
「ここまで来る許可は頂いたけど、遅くなってご心配や探すご迷惑はかけないようにしたいから。だからもう戻るんだよ」
クーとルーに説明をする。すると二匹は心配をかけないためなんだと、すんなり納得してくれた。
◇
食事やお手伝いをすませ、自由時間。
コンテナハウスの外にテーブルと椅子を出して、地面は岩が置ける程度に土魔法で均してキレイにする。
そしていつくかストーンの名前を言っていく。そして本命。
「スギライト」
大きさにしては軽いドシンという音をたて、無限収納から岩が出てきた。
「やった!これスギライトだった!」
スギライト。世界三大ヒーリングストーンの一つ。必要なストーンだとは思わなかったが、また実物が見れたら良いなと思っていたストーン。
なんならインペリアル・スギライトも見たかった。
「インペリアル・スギライトって思ったら出てきた…!」
これは多分、母竜にもらった物の一つだろう。
「嬉しそうだな」
ユリシーズさんがホットアップルジンジャーを飲みながら、柔らかく目元を細める。
「うん!日本だと、本物か偽物か疑わないといけなかったからね。ここならそんな心配ないし、原石で拾うとか嬉しいよ!」
着色なら、白いゴムでブレスレットにしているとゴムに染料が染みて染めだと分かる事がある。
だが、焼きとかだと分からないし、水晶が原料の水晶なんて見分けようがない。
霊能力のある方などは、波動で見分けが付く方もいらっしゃるそうたが一般的ではない。科学的ではないと言われちゃうと、それまでだしね。
この世界でなら、無限収納にしまってルビーならルビーと念じれば、しまわれているルビーだけが出てくる。
無限収納は、真贋を見極めるのにも役立つ優れ物だと気付いてからあれこれお世話になっているよ。
「何なに、どうしたの?」
そうこうしていると、カーニバルの皆さんも出てきてしまった。
そしてパワーストーンの話をし、近いうちにカーニバルの皆さんにもパワーストーンのアクセサリーを作る約束をしてこの日はお開きとなった。
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなどお気楽に、下の
☆☆☆☆☆
にて★1から★5で評価して下さいね!
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしてます!