11:双頭隊
「さ、優さま。どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「優さま」
「優さま」
ちょっとずつ、色んな隊や学者さんたち、炊事洗濯をして下さる女性たちに黙認された娼婦さんたちと打ち解けて良好な関係を築けていると思う。
しかし、中でも地球でいうところの神聖隊みたいな隊。この国では双頭隊というらしい隊の方たちの構い方がおかしい気がする…。
師匠側の方はまだましなんだけど、弟子側の方たちが妙に構いたがっているように見えるんだけど…?
おかげで日々ユリシーズさんの顔が険しくなって来ているのは明らかだ。
カーニバルの皆さんに言わせると、世話好きが多いから気にするなとの事。
まあね。お師匠さんから一子相伝みたいに戦いのノウハウを教わりつつ、身の回りの細かな事までお弟子さんとしても恋人としてもお世話する方たちだから世話好きかもしれないけどさ。
「優さま」
「優さま」
「あ、ユリシーズ卿」
「ユリシーズ卿」
ユリシーズさんにも追っかけというか、ユリシーズさんを構いたがる方たちがついて回っている。
「俺は自分の事は自分でできるから、構わなくて良い。あと、卿はいらないから」
ユリシーズさんを追いかけている方たちは、師匠がいない方たちなのだそうだ。つまり、フリー。
あれ?もしかしてユリシーズさん、狙われてる?!
「優公、お困りごとはございませぬかな?何かあれば、弟子たちに何なりとお申し付け下され」
「お気遣い、ありがとうこざいます。前も旅をした事がありますし、大丈夫ですよ」
この方は確か双頭隊の隊長さん。お名前がカーン・ナベリウスさんだったかな?
「カーンが弟子、ショアラなどは世話好きでもありますが、何より向上心が旺盛でな。貴女から何か学べればとついて回っておる。
いつか魔法の手ほどきをしてやってくれたら嬉しく思う」
なる程。私について回っている方たちにはそんな思惑があったのか。
「移動中は憚られますが、町や村ででしたら」
ポーションもあるし、様々なポーションを作る薬草もあれば錬金術師さんも魔法使いさんもいる。だから、ポーションがなくなっても作れるから問題はない。
とはいえ、道中では何があるか分からないからさ。練習に魔力を使うなら、町や村で安全が確保できている時がベストだろう。
「夜はシルバーが警戒してくれておりますから安全ですが、昼には大物も出始めておりますからな。それで構いませぬよ。
では、人里に着きましたら頼みましたぞ」
昼は生態調査のため、クーもルーもシルバーにも気配を消してもらっている。夜は安全のため、気配を少し遠くまで放ってもらって安全を確保しているんだ。
町や村では常に気配を放ってもらう事にしている。だから安全は確保されてて、魔法の練習に魔力を使っても大丈夫ってワケ。
「はい、分かりました」
って、何を教わりたいんだろう?教える事なんてあるのかなあ?
今までにも軍で無限収納の拡張や、絶対零度とか教えた事があるんだけど…。
重力操作や無限収納の拡張は難航している。
重力操作の成功者はまだいない。魔力を使っても追いつかないイメージを賄って発現できるに至らないんだろうと思う。
逆にお父さんは重力が分かるからか、難なく使えるようになった。
無限収納はたぶん、ただ別の空間に入れたりそこから出すと言うのが理解できないのが一つ。
無形の空間より、有形の袋状の空間って想像する方が想像しやすいのも一つ。
且つ、固定観念でイメージが固まってしまっているからと思われる。
魔法においてイメージが固まってしまうと、修正が難しいと感じる。
絶対零度は魔力が多いと発動出来るっぽい。これに成功しているのは、ほぼ魔力の多い方だからね。
「優さま、ユリシーズ卿、温かい麦茶をどうぞ」
「食器は私が」
カーンさまが去っても、元々私たちの周りでお昼を摂っていた双頭隊の方たちのお世話がまめまめしくて落ち着かないぃ。
そう言えば双頭隊はただ双頭だけど、鷲とかドラゴンとか付かないのかな?
双頭のドラゴンは実在するのか分からないが、双頭の生き物は結構見つかっている。
何かそういう生き物から名前を取ってるのかな?
「双頭隊の名前の由来ですか?」
カーンさまの弟子、ショアラさんは森蘭丸が西洋人だったらこんな感じかなという金髪碧眼の美男子だ。
その整った顔で柔らかく微笑み、由来を教えて下さる。
「この隊の初代隊長さまと、そのペアが由来です。
男色への風当たりが強かった時代においてお二人は仲睦まじく、元は一つででもあったかのように一心同体の波状攻撃を得意となさっていたそうです。
そんなお二人は双頭の鬼神の名をほしいままになさっておられ、それが隊の名となったと伝わっております」
武勇に長けていらっしゃったなら、連理の枝や比翼の鳥といった雅なイメージは合わないな。ただ双頭の方がしっくりくる。
「お二人は男女ですが、私たちの理想です。憧れているペアも多いんですよ」
ショアラさんの言葉に、周りの双頭隊の方たちも頷いている。
「私たちは、何人かの中から武芸を仕込むのに相性の良さそうな一人を師匠が選びます。
ですが、皆が良好な関係とは言えません。
お二人は元々師弟の関係で、今は睦まじいペアになられてます。そして武芸の実力も、大変お高くていらっしゃいます。
まさに理想の関係なんです」
それにと、ショアラさんの言葉を別の方が引き継ぐ。
「有り体に申し上げると、優公は見目麗しい男性にしか見えません。
それが尚、良いんです」
逆ナンされた経験しかない男顔してるからな…。
「初代以降、そこまでの実力を持ったペアはいなかったんです。
そんな中、お二人は理想が顕現したような存在なんですよ」
もはやユリシーズさんと二人、笑うしかない。てか、ユリシーズさんの顔が強張ってる。
これはユリシーズさんがストレスでいつか爆発しない事を祈るしかないな。やれやれ…。
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