107:補給部隊の発見
[この辺りだった筈だが……]
ブルビィに付いて行くと、元いた地点からさほど離れていない場所だった。
[む。微かな木の燃える臭いと……、肉の臭いに色いろ混ざった臭いがする]
[ブルビィ、その臭いを地上の臭いの元まで辿れる?]
[やってみよう]
私とユリシーズさんは、ブルビィの羽撃きが巻き起こす風の影響を受けない所に位置取り、ぴったり付いて行く。
そして……。
「あ……?何かの匂いがする?」
「……何となくするな。たぶん、煮炊きの匂いだろう」
ブルビィは慎重に匂いを辿り、私たちを誘導してくれる。
匂いのする辺りにはブルビィが降りられる広さの開けた場所がなかったので、私とユリシーズさんが匂いのする辺りを飛んで補給部隊を探す事にした。
「おーい!!イーサン砦へ行く補給部隊の方!いますかーーっ!」
「誰かいるかーー!」
魔道具ウインドパックは静かだ。大きな声を出せば、それなりの範囲に声は届くと思う。
声を張り上げ、匂いがした辺りを何度も低空飛行してみる。
見ただけで、ブルビィがブルビィだと分かる方は少ないと思う。私やユリシーズさんも、下手したら新種の飛行系魔物だと思われているかも知れない。
だから警戒して、なかなか出て来てくれないのかも。
そう思い、飛び続けるのだが……。もう太陽が、山の稜線に完全に隠れそう。真っ暗になる前に、もし誰かいるなら応えて……!
「あ!火魔法が空へ向けて打ち上げられた?!」
「たぶん、火魔法だったな。降りてみよう」
少し北で火魔法が打ち上げられた所は枝葉もなく、ウインドパックで降りるには充分な隙間があった。降り積もっている雪をウインドパックから出る風で撒き散らしつつ、地面へ降り立つ。
すると、木の影から人が現れた。
「も、もしかして、優公でしょうか?それと、ユリシーズ公?」
「はいっ!貴方は北方補給部隊の方でしょうか?」
「はい。私は北方補給部隊所属、リンスランドと申します。ここにおりますのは全員、北方補給部隊の隊員です」
「良かった!見付けられた!」
「三人だけ?他は?」
「はっ!動ける者が三人しかおらず……。他の五人は、近くの雪洞におります」
「怪我?それとも病気ですか?」
「どちらも、です。二人は足をやられ、歩く事が難しく……。一人は、両腕を……。それに加え、五人全員が病を患っております」
「怪我は、ポーションで傷は塞がっていますか?」
「はい。もう切るよりなかったので、該当の四肢を切って、ポーションで傷は治しております」
「ただ……。伝染病がなかなか治らず……」
「分かりました。取り敢えず、雪洞へ連れて行って下さい」
「優、待て。伝染病は危険だ」
「そんなの知っている!でも、助ける為に来たんだよ?!ヒーリングで症状は緩和は出来るはずだから、早くヒーリングしてあげたい!」
手足を失っても、生きていらっしゃる。でも、伝染病で苦しんでおられるなんて……。それも、こんな原生林の中で、もしかしたら助けが来ないかも知れない恐怖と戦いながら……!
それは、どれほどの恐怖だろう……。
「人の形の結界張るから、きっと大丈夫だよ。だから、行くよ」
「……分かった。俺も結界張る。それで優に付いて行く」
結界が、病原菌にどこまで有効かは分からないけれど。何もしないよりは良いだろう。
◇
「……っこれは……」
「かなり不衛生だな……」
「は……。着替えがもうなく……」
案内された雪洞には、もうトイレに立つ力もないのか、汚れた服で汚れた寝袋に入って眠っている五人。
「体力的には危険かも知れない。でも、このままでもダメだと思う。簡単にお風呂に入れて、身体を清潔にしよう。その後、清潔な毛布に包んでから移動しましょう」
ドーム型の結界を張り、その中に土魔法で湯船を作る。そして一人ずつ、手早く全身を石鹸で洗って清潔にしてあげる。
私は重力の魔法で、一人ずつお風呂へ運ぶ。そして、体が浮いたままの隊員さんから服を脱がせ、身体を洗ってあげるのは、ユリシーズさんと病気にかっていない隊員さんたちの四人。
湯船とお湯は、一人ずつ変えるから大変だけど。そんな事は言っていられない。
勿論、全員結界に入ってお世話にあたっているよ。ただ、ユリシーズさんたちは球体の結界だから、簡単な作業ではないのだけど。
それでもどうにか身体を洗い終わると、身体を毛布で包んで、二階建てキャンピングカーの寝室へ運ぶ。最後のお一人をお風呂に入れ終わると、お世話していた側もお風呂だ。
お風呂が終わると、ユリシーズさんには雪洞の中にあった物や隊員さんたちが着ていた服など、食料や武器も含めて全部焼却処分してもらった。
どんな病気かは分からないが、聖魔法を使わなくっても、あちらこちらから嫌な感じがしているからだ。
私はその間に、眠っている隊員さんたちにヒーリングだ。
お風呂を手伝って頂いた三人は、リビングで休んで頂いている。病気でこそないみたいだが、弱ってはおられるから。これ以上、無理はさせられない。
安心と疲れからか、すっかり眠り込んでいらっしゃる。
私はお三方を横目に、二階の寝室へ向かう。
病気の方たちの床ずれは、お風呂前にポーションを掛けてもらって癒えている。そのぶん、体が楽になったのか?お二人、意識がはっきして来らたれた。
「お……れ……、生き……て……」
「ここ……は?」
「意識がはっきりした?良かった。水分取れますか?」
お二人、ヒーリングの前に意識が戻られ、水分を取る事が出来た。残りの三人は、ヒーリングでどうにか意識が戻る程度には回復出来てほっとしたよ。
全員にヒーリングが終わる直前、あれこれ焼却処分をしてくれていたユリシーズさんが寝室へ入って来た。
「優。焼却処分は終わった」
「ユリシーズさん、ありがとう。
あ!まだ誰にも連絡していないや。皆、心配しているかも」
「バタバタしていたからな。俺が今から連絡しておく」
「うん、お願いします」
病気には効かないが、ダメージが少しでも緩和されないかとハイポーションを皆に飲んで頂いていると、ユリシーズさんが戻って来た。
「連絡、ありがとう。皆、心配していた?」
「ああ。それは勿論。それより、ブルビィにエルフの村へ向かってもらう事は出来る?」
「お願いすれば、多分行ってくれると思うよ」
「そうか。エルフは薬草や薬学に詳しい。エグランティーヌさんが迎えに来れるなら、こっちへ来てくれるって」
「本当?!有難いお申し出だわ」
急遽、ブルビィにはエグランティーヌさんを迎えに行ってもらう事になった。そして、一時間と掛からず、エグランティーヌさんをブルビィは連れて来てくれた。
エグランティーヌさんは、長老さまと一緒に来られ、すぐさま皆さんの診察に掛かって下さった。
「これは、赤痢だね」
「そのようですね。薬と聖魔法の併用で、明日の朝までには回復はしそうですね」
「そうさね。朝まで掛からんとは思うが……。
随分弱っているからね。直ぐに薬を与えて、聖魔法で回復に掛かろうかね」
「はい。長老」
長老さまがキッチンで薬を作っている間に、エグランティーヌさんはリビングで眠り込んでいらっしゃるお三方を癒やして下さった。
このお三方は、赤痢の心配はないとも教えて下さったよ。良かったあ。
そして、薬が出来ると直ぐに赤痢の五人に薬を飲ませ、エグランティーヌさんと長老さまは聖魔法で病気平癒に掛かって下さった。
光が五人の身体を包み、ほんのり光り続けている。この、光っているのがまだ癒やすべきだっていう目印なのだそうだ。
私や他の人が聖魔法を使っても、こんな光は出ないんだけど……。ヒトとエルフさんの魔法の違いなのかな?
「ふーーう……。やれやれ。回復に向かいかけていたのか、早く終わったね」
「そうですね。今は夜中過ぎでしょうか?」
「長老さま、エグランティーヌさん。ありがとうございました」
「ありがとうございました。時間はたぶん、夜中過ぎ」
「朝まで時間があるね。あたしらが病人は看ているよ。あんた達は明日も大変なんだろう?少しでも眠っておきな」
「そうね。それが良いわ。
私と長老さまで患者は看るわ」
「すみません。お言葉に甘えさせて頂きますね」
「ありがとうございます」
ブルビィはもう眠ると、エグランティーヌさんが言付かっていらっしゃった。
移動ができないのなら、もう出来る事はない。
他にまだ生存者がいらっしゃるのか気になる。だけど、すっかりくたびれていたので、この日はもう体を休める事にした。
生存者が見付かった安堵と、まだどこかにいらっしゃるかも知れない生存者の事を考えて……。あまり眠れなかったけど……。
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