100:守護と祝福
「お早う、フィリベールくん、リュカくん、ゾエちゃん、アーチュウくん。皆、顔を洗っておいで」
仲良くなったのに今日でお別れだし。後、何か分からない事があっても、フィリベールくんがいれば分かる事もあるかも知れない。なので、フィリベールくんは昨日、リュカくんの部屋にお泊りしたんだ。
朝は、皆で起こし合って起きて来たらしい。
四人ははーいと、洗面所へ向かった。
「まあまあ。あの子たち、貴女にはとっても懐いているわね」
「そうだね。精霊さまが、守護についておられるからかな」
「え?精霊さまが守護に?」
「昨日から様子を見ていたのだけど、多分、間違いないと思うわ」
「ああ。娘たちから聞いた時は驚いたが、守護して下さっていると思うよ」
「気が付いていなかったのね」
「後でゆっくり話そうか。先に食事の用意をしてしまおう」
朝ご飯もオンブルさんとノランさんと作っていたら、そんな事を仰られた。
いや、私、日本人!日本人の守護は、ご先祖さまとか、万分の一の可能性で、日本の神さまか仏さまじゃないの?!
◇
「そうねえ。守護して下さる方は、だいたい信じている宗教に準じているわね」
「貴女の場合、異世界から来た人族だ。その守護から離れたのだろう。
守護がおらず、石を可愛がり、大切にする貴女に興味を持たれたのがきっかけのようだよ」
な、成程。確かに、パワーストーンが好きで、ずっと大切にしている。それはこっちへ来てからも、以前と変わっていない。
「精霊さまが、人の守護につかれる事も珍しいのだけど……。
貴女の大切にしている石を、精霊さまが休憩に利用しているようね。貴女が大切にしている石たちは、心地良いみたい」
「そのお礼に、精霊さまの祝福が与えられた石になっている物も多いはずだ。
アクセサリーに限らず、日用品に付けている魔石なんかもみたいだよ」
「それも、とても高位の精霊さまの祝福のようよ」
「初めて一緒に食事をした時、高位の精霊さまの気配がしたらしくてね。ジャドゥたちは、とても驚いたそうだ」
ああー!それで、豆腐もだけど、私の事も凝視なさっていたのか!
「高位の精霊さまのお言葉を聞き取れ、自らの言葉を届けられる者は、ハイエルフにも滅多にいないの」
「だから、ジャドゥたちの感じた事が間違っていないか。私たちにも確認して欲しいと、そう頼まれて見ていたんだよ」
「ええ。母たちから見ても、同じ意見だったわね」
「間違いなく、貴女は精霊さまが守護についた、稀有な人族だよ」
「そうなんだ……!教えて下さって、ありがとうございます」
精霊さまの守護かあ。なんか、嬉しい!精霊さま、守護と祝福をありがとうございます。
「それから貴方。貴方には、精霊さまは守護にはついていらっしゃらないけれど……」
「君の大切にしているアクセサリーは、精霊さまが祝福しておられるようだよ」
「そうなんですね。あの……。精霊……さまに祝福されたアクセサリーは、どうなるんですか?」
「本来の能力以上の力を発揮するわね」
「それに、滅多な事ではエネルギー不足にはならないよ」
「ああ、分かる……気がします。
このブレスレットは、いつも輝きが凄い。守られているような感覚も、助けられているような感覚も、とても感じる。それでも、弱ったと感じた事はない」
あ。色々使っている魔石が、いつもエネルギー一杯なのって……!皆が忠実にヒーリングをしてくれているんだと思っていたけど、精霊さまの祝福だったんだ!
精霊さま、こちらもありがとうございます。
「感覚でも、人族が分かるのは大したものね」
「本当にそうだね。その感覚を大切にな。きっと、何かの時には精霊さまが助けて下さるだろう」
「はい……!」
◇
「地球では、『パワーストーン』『念珠』と言って、お守りや願望実現の補助に身に付ける人がいるんです」
「まあ。宝石としてではなく?お守りとして、身に付けるの?面白いわね」
「この世界では聞かないね」
「そうみたいですね。
力に満ち溢れたストーンでも、人が身に付けると力を使って力不足になったり、邪気を吸収してしまう事があるとされています。
その為、不足した力の補充や、吸収した邪気を排出する為、毎日『クラスター』に乗せるのが良いとされているんです。他は、新月から満月までの、月が満ちる期間に月光に晒すのも良いとされています。
こちらの世界では聖魔法で浄化して、それからクラスターに乗せます」
普段、石にどんな事をしているのか尋ねられたので、やっているストーンのお手入れをお話したよ。
「後は、沢山話し掛けます」
「話し掛ける?石に?」
「どんな事を話し掛けるんだい?」
「朝、身に付ける時は『お早う。今日も宜しくね』とか。力を貸してくれた、守ってくれたと思う時は、『力を貸してくれて、ありがとう』とか。人と話していて感じた事とか、色々です。
ストーンも仲良くなると、力を貸してくれやすいと聞いた事があって……。それから、色んな事を話し掛けているんです」
人前では、心の中でだ。声に出すと、変な人になってしまうからな。
「成程ねえ。多分それで、貴女の石たちに、精霊さまがお寄りになるのね」
「ああ。見えてはいないようだが、話し掛けられている。大地の欠片を、大切にしてくれている。
それで、興味を持たれ易いのだろうね」
「優はそんな事をしていたんだ。俺も真似しよ……」
「フィリも、いっぱいお話しするー!」
フィリベールくんが、元気よく手を上げた時だ。カップに手が当たり、入っていたホットミルクが零れてしまった。
「ご、ごめんなさいっ」
「良いのよ。気にしないで」
「火傷しなかったかい?」
そう言いながら、無限収納から出して下さったのは白っぽい、薄くて柔らかそうなペーパー!
「それ!ティッシュペーパー?!」
「て、てっしゅ……?」
「私たちは、『柔紙』と呼んでいる物だよ。これがどうかしたかい?」
「大声出して、すみません。
はい、鼻をかんだり、ちょっとしたテーブルの汚れを拭く時に使う、柔らかい紙の元を探していたんです。
お使いの柔紙が、地球で使っていたティッシュペーパーに良く似ていて……。
それで、驚いたんです」
「そうなのね。柔紙は、偶然作り方が分かったの」
「私たちは、人と余り関わらないからね。人にはまだ、柔紙の作り方が知られていないのか。
これの元は、土地枯らしだ。材料には困らないだろう。作り方も簡単だよ」
「何を差し上げれば、作り方を教えて頂けますか?」
「土地枯らしを減らしてもらえるなら、それで良いわ」
「あれを食べる生き物はいないからね。人や私たちが減らさねば、中々減らない厄介な植物だ。
何かに役立てて減らしてくれるなら、対価は必要ないよ」
「そうそう。
他の大陸にしかなかった厄介な植物は、精霊さまの秘術で駆除出来たけれど」
「これは、駆除し続けなければ増える植物でな。私たちにも駆除は、大変な労力が必用な植物なんだよ」
「あの、他の大陸にしかなかった厄介な植物って……」
私はジャイアントホグウィードと、ギンピーギンピーみたいな植物の事をお話してみた。
「聞いた限り、その植物みたいね」
「他にも一種類見付けて、それも駆除したよ」
「凄い!分かる範囲の物は、駆除なさったんですね。
危険だと分かっていて、駆除も難しい植物で……。見付けても、どうしたら良いかと思っていたんです」
「あれは、人族の手には余ると思うわ」
「あれはなかなか厄介な植物だったね。
私たちは、土地から土地を渡り歩く。その中で、精霊さまの下僕としての努めを果たすんだ」
「お努めの殆どは、他の大陸から来た物や、人族の手に余る植物と生き物の駆除なの」
「精霊さまのお力をお借り出来るのは、この為でもあるからね。これからも、しっかりお努めを果たすよ」
「へ……、へー!!それで、ハイエルフさんたちは、定住地を持たれないんですね!」
本当は、皆さんが畑仕事をする頃にお暇する予定だった。
でも、色々お話を伺わせて頂けてさ。親切なご両親と話が盛り上がっちゃって……。
結局お暇したのは、お昼を過ぎてからだった。
「色々教えて頂いて、ありがとうございました。もしかしたら、また、お会い出来るかも知れませんよね?
それまでお元気で!」
「ありがとうございました。お元気で」
「ええ。そうね。また、会えるかも知れないわね」
「それまで君たちも、健やかでな」
「こちらこそ、色々ありがとう。
それに、色んな物を交換してくれてありがとう。ストーン、大切にするわ!」
「ああ。心地良いアクセサリーと、素晴らしい楽器をありがとう。本当に、大切にするよ」
名残惜しいが、個別識別可能スマホをお渡し出来た。連絡を取る方法があるから、きっと会えるチャンスだってある。
そう思い、小さくなって行く人影に、いつまでもコンテナハウスの窓から手を振る。
「……。もうジャドゥさんたち、見えませんよ。そろそろ大丈夫?」
「……は、はいぃ……」
アベラさんは、ハイエルフさんたちの近くは極度に緊張するからと……。コンテナハウスで、クーとルーとシルバーと、ずっとひっそり過ごしていた。
そんなに緊張する方たちだったかなあ?
私は一人、首を傾げた。
いや、そう言えば……。ユリシーズさんも、お父さんと話す時くらい丁寧に喋っていたっけ。
こちらの方たちがハイエルフさんと対峙するというは、そういうものなのか?
お読み下さって有難うございます。
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