表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
To create on CAMPUS  作者: 紫晶 朔実
4/19

迷子の迷子の

 ⇒C科一年教室前

「お待たせしましたぁ……」

 見るからにしゅんっとして、三日月先生が小走りで此方に向かってきた。革ジャンにロングのチェックスカート。そのスカートは、生徒の中の数人には見覚えのあるものだろう。

 しかし当の京極先生は、廊下の端で電話している。

「…はい、はい、わかりました、すぐ向かいます。では失礼します…すみません、三日月先生、申し訳無いんだけど案内頼んでも良いかしら」

「うぇっ、私がですかぁ!?」

 三日月先生は目を点にして、自分を指差した。京極先生は有無を聞かずに、ジャージのポケットから手帳を取り出して

「これ渡しておくから、これを見ながら歩けば迷わないと思いますから……多分」

「……何で今目をそらしました?」

「(大丈夫かなぁこの先生)」

 生徒たちは少しだけ不安を感じていた。外から見たこの校舎は小さめのビルのようで、一見学校とは思えない大きさ。まずエレベーターの階数ボタンが多い時点でお察しである。

「(でももう三回は迷子になってるからきっと大丈夫!!)」

 三日月先生は冷や汗を滴しながら、小さくガッツポーズをした。


「えっと、三日月です、宜しく…ね、早速い、行きましょうか」

 生徒を目の前にして、ガチガチに緊張しているのが手に取るように分かるほど声が震えている。

「先生、声震えてますけど」

 一番前にいた猫耳ヘッドホンの白髪の子が声をかけた。

「せんせー、地図の向き多分こうだよ」

 ドラゴンの子が地図を回して正しい方向に持たせてくれる。三日月先生はほんのり顔が赤かった。

「(あ、意外とフレンドリー…)」

 そして振り替えると、なんかあの顔を隠した男の子の目付きが怖い。自分より背の高い子も居るしやっぱりこっちも目が怖い。

「(全員がそういうわけではなか…)」

「先生キンチョーしてる? まずどこ行くのさ?」

「うわあぁ!?…えっ、と、とりあえずこの階から回って行こうかな」

「あ、驚かせた、すまんすまん」

 急に上から覗き込まれて心臓が飛び出そうになった先生なのであった。


 ⇒7階 創造科フロア

「まずこの学校は、建物の真ん中が吹き抜けになっているドーナツ状の建物で、廊下は例外を除いて全ての階でぐるっと一周出来るようになっています」

 と地図片手に説明をしつつ、後ろを振り替えると、人数があからさまに減っている。

 後ろの方に寄り道しているドラゴンの子と、その後ろをついていくネックウォーマーの子が。

「おーい!ちゃんと着いてきてー!!」

「…ほら行くよ、イト」

「ぷえ?はーい」

 危うく、置いていくところだった。地図に目を戻すと、紹介すべき部屋の前であることに気がついた三日月先生は、急に立ち止まった。急に止まった為か誰かにぶつかってしまう。

「あぁ、ごめんなさい、大丈夫?」

「あ、新しい先生じゃんどもー!」

「んえ?はじめましてみか……誰ぇ!?」

 振り替えると、今度はまさかの人が増えてる。絶対居なかったこんな生徒。赤髪のベリーショート、水色生地に橙色の星のプリントがされたTシャツ、短パンに黄色の半袖パーカー、黒いイヤホンを首にかけた女の子が居た。

「俺?三年の…」

「あー!居たー!ツキガセ!」

 声のする方をみると、皆が居た教室の方向からまた誰かが全力で走ってきていた。

「今度は誰!?」

 三日月先生が困惑しているその間…。

「そういえば君、名前なんて言うの?」

 黒が近くに居る妖精のような女の子に話しかけていた。

「イア・マンデュスリカです。イア、と呼んでください」

 細い高めの照れくさそうな声が、耳を撫でる。

「イアかぁ、私黒記! くろって呼んでも大丈夫、んでこっちは白記」

 黒が白を指して紹介すると、白が小さく頭を下げた。

「はじめまして、イアさん」

「は、はじめまして」

 目を閉じている彼女の顔は儚げで、まるで生気がなかった。

「お花好きなの?」

「…! はい、好きです!」

「そーなんだ! 私も! ここ綺麗なお花畑あるみたいだからあとで見に行こうよ」

「え、私も行きたい」

 話していると前からツインテールの子が話しかけてくる。丸眼鏡がキランと光る。

「私藍紅(あいべにの)吹雪丸(ふぶきまる)です!」

「吹雪丸さん、宜しくー!」

「…へぇー面白い格好してんなぁお前ら」

「ちょっ、ちょっとツキガセ…!」

「いーじゃんオヨネ、ちょっとだけー」

 先程先生の後ろに居た三年生? がこちらを覗き込んでいた。背丈は吹雪丸と変わらないぐらい小さい。止めようとしているもう一人は、後ろに腰まである髪を一纏めにした、紺色のポロシャツとジーンズを履いたマスクの女の子だ。背は高めで、困った表情だ。

「三年生は今日登校日じゃ無いから居ないはず……」

 三日月先生も困惑していた。

「ご、ごめんなさい、用事があってここに来てたんですけど……」

「「「……三年生!?」」」

 この学校は()()()は三年制。つまりこの二人は、皆の先輩である。

「うん!僕三年M(えむ)科のツキガセ!」

「同じく、ヨネクラです」

「えむ科?」

 吹雪丸含め生徒数人が首をかしげる。

「先輩である俺らが案内してやるよ!」

「頼むから大人しく教室に戻ろうよ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ