こんにちは 異世界
⇒7階 C科一年 教室
「皆さんおはようございます。これから担任を勤める、京極です。これから3年間宜しく。」
紺色のジャージを着た、いかにも体育教師の見た目をした京極先生は、自分の名前を黒板に白チョークで書き記して生徒たちにお辞儀をした。顔にはシワが入っており、薄化粧よりも薄い化粧をしたショートの中年女性だ。
「さて、今日の予定としては……」
京極先生は教卓に乗り出すような姿勢で、これからの日程を話し始めた。
「最初に校内見学をします。本当は先生の紹介をしたかったのだけれど、まだいらっしゃらないのよね……なので皆さん、貴重品を持って廊下に並んでくださいね。」
先生は黒板の上にある時計を見て
「5分後には出発しますよ。」
と言って、解散を促した。
「(普通最初は自己紹介じゃないの……?)」
黒はそう思いながら、
「白、行く?」
「勿論行くわ、一人で歩けるようになるのよ」
「……うん、そりゃ頼もしいや」
白を立たせて、廊下に出る。教室に居た生徒たちもぞろぞろと廊下に出てくる。
⇒7階 教室前廊下
人数は通常の1クラスの人数にすら満たない少数クラス。黒や白を含めて10人ほどしか居ない。それ故か廊下は混雑せず、一人一人の顔が見えた。
「……僕の後ろに立たない方が良い」
不意に目の前に立っていた男の子が小さく振り向いて、気力のない眠たそうな声でそう呟いた。
「えっ?あ、わかった」
見上げると顔のすぐ目の前に霧のように曇った視界が広がった。驚いて固まっていると、彼はすぐに列の一番後ろ、黒と白の後ろに回っていた。
「(どういうことなんだろう?)」
振り替えって顔を見ようとしたが、鼻から首までネックウォーマーで覆い隠されており、表情が分からない。
諦めて前を見ると今度は背の高い奇抜な格好の細い人がいた。へそが見えており、腹部に緑の模様が入っている。所々見受けられるパーツからヘッドホンが連想された。そして頭にもヘッドホンを着けており、少し音漏れが聞こえる。
「(噂には聞いてたけどやっぱり服が凄い人はいるんだなぁ……)」
その前で少し縮こまった姿勢の男の子が見えた。茶髪に赤ジャージの彼はそちらに気がつくとビクッと体を震わせて、すぐ視線を反らした。どうやら周りの生徒に怯えている様子。
「(怖い人でも居たのかな?)」
その前からは話し声が聞こえる。
「イトさんが居るって思ってなかったからビックリした~!」
「私もふぶちゃんがいてえぇ!!??ってなったよ」
紫のキラキラする角張った角と青く大きな翼が見える。その下には長い長い太いしっぽが動いている。
「(ど、ドラゴン!?完全にドラゴン……でも立ってる……)」
その隣には、身長が少し小さめの水色のツインテールの女の子。現実にいそうだけれど、ファンタジーな格好の彼女は季節感的にも少し浮いている。
「(可愛い~……でもなんだか厚着してるし、寒がりなのかなぁ)」
そのまた前には猫耳のヘッドホンを着けたブカブカな白パーカーを着た女の子?が居るのも見えた。ファッショナブルだ。
今気がついたのだが、横に少しポーズを決めた……もう性別が分からない、多分女の子の髪に青いメッシュが入っているのに親近感が湧いた。
「……ねぇ黒?足元に誰か居ない?」
「んえ?」
はっとして足元を見ると、薄紫髪の少女……?身長が中学生の平均にも満たないような背丈の女の子がいた。
「うわ!ビックリした……」
「ごめんなさい」
「あー!違うの!気が付かなくてごめんね!」
「(うわーすごいちっちゃい……でも綺麗だなぁ……)」
見とれて顔をじっと見ていると
「あの……なにか付いてますか?」
「…え?あ、いや、なんでもないや、えへへ」
気まずくなりとっさに顔を反らした。すると
「京極せんせーい!!!すみませんーー!!!!」
と叫びながら紙をバラバラ落として走ってくる女性が一人。
「このタイミングで来た……大遅刻ですよ三日月先生!あとプリント落とさないで下さい!」
「寝坊と遅延です!一時間です!」
「今から案内なので早く準備してきてください」
「ゼー……はぁーい……」
京極先生は振り替えって
「さ、三日月先生が来たら出発しますから騒がないように」