C科1年
【3月20日】ー入学生招集日
春一番が吹き荒れた次の朝。青空の広がる校門前に集まる新入生たち。
そこにひときわ目立つ集団が近づいてくる。
「うわー! たっけー!! これ何階建てだぁ?」
「全部で13階。地下二階と11階建てなんだってさ」
「……広すぎる……」
「宝に地図作ってもらおーぜー」
「……うん」
「ちょっと宝ちゃん、そんなんじゃまたお友達できないよ?」
「しょうがないだろ、慣れりゃ良いさ」
「またはっちゃんは甘やかすんだからぁ」
「乱、またなにか騒ぎを初日から起こすんじゃないぞ」
「咲記に言われなくったって起こしませんよーだ」
「そういって中学校でも起こしたのは誰かしら」
「知りませーん」
周りの生徒の私服よりも大層高そうな、落ち着いた雰囲気の、育ちのよい印象を受ける格好の12人の女の子と1人の男の子。
「私達は…7階だって。」
一人の少女は白髪の少女の手を取りながら、案内書を読んでいた。
「僕の映像科はどこー? 3階? 録ーいこーぜー」
「工芸科は……10階……ですって」
「遅刻ギリギリに来たらアウトかもしれない」
「9階! めっちゃ高いね覚っちゃん!」
「うん、エレベーター使おう」
「手芸科は8階だねー、点、再、いこっかー」
「皆じゃーぁねーぇ!!」
生徒たちはそれぞれ受付を済ませ、エレベーターに乗り込んでいった……
⇒エレベーター内部
「(そろそろだ……どんな人たちなんだろ……)」
黒記はタイル張りのエレベーターの、赤い数字で階数が表示されるパネルを見つめていた。
5階……6階……遂に7階に到着し、扉が開く。
「……着いた。歩くよ白」
黒は傍らの白髪の少女、白記に声をかける。白杖を持った彼女はそのまま、ひとつ頷いて歩き出した。
⇒7階創造科フロア 廊下
茶色のひし形タイルが埋め込まれた肌色のタイル床。色とりどり作品が並ぶ壁。いかにも頑丈そうな開く気配の無い窓の並んだ廊下を歩いていく。日差しが差し込み、電気を付けなくても明るい。
「教室どこだろ」
「歩いてたら着くわよきっと」
「そんな適当なぁ、白が疲れる前には着きたいよ」
エレベーターを降りて左に曲がり、目の前に部屋の扉が現れる。「科務室」と刻まれた看板が壁にかけられていた。
「科務室?」
「先生が居るところじゃない?」
「……でもまだ誰もいないや。」
部屋は机がいくつもあるが道具が置いてあるのはひとつだけ。しかもまだパソコンだけで他になにもない質素な部屋だった。
「まだ来てないのかもね」
「そっかー……」
科務室の前でまた左に曲がると、教室らしき扉が遠くに見えてきた。寄ると3つ教室が並んでいるが、人がいた形跡はない。一番奥にある教室は電気がついている。
「一年……あ、ここだ、ここ」
⇒C科1年の教室
教室に入ると数人、人が……人?がいた。
既に寝ているやつも居る。
「席どこだろ。一番前か」
黒は窓際の一番前、白はその右隣だ。
「ここで良いのね」
「うん、杖落とさないでね」
ゆっくりと座らせて辺りを見回す。
「(なんだか、不思議な子が居るなぁ)」
真っ先に目についたのは翼を持った数人。形が定まらない翼や、紫の薄い翼をもつ同級生。髪が黒くない人も居るし、なんだか皆格好が本の中の人みたいで、ちょっと変わっていた。ほぼ服を着ていないような奇抜な人も居れば、季節外れの格好をした人もいた。
黒板の上にある時計を見ると、そろそろ集合時間になる。
黒は大人しく席で、置いてあった資料を読んで待つことにした。