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To create on CAMPUS  作者: 紫晶 朔実
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ワンドロ用番外編 黒記 小さなキャンパスたち

 私のキャンパスは、未だ真っ白だった。


 私の兄弟は十四人いる。同い年が十二人と年が離れた二人、まだ小学生と幼稚園生。他はもう高校生だ。下の二人は分からないけど、上の十二人は何かしらの特殊な「能力」を持っている。私はある漫画に影響されて、それを勝手に「個性」と呼んでいる。

 (らん)は見えない遠くが見える。それでたまに暴れたりするんだけど。(さく)はあらゆる物の耐久力を少しだけ強化できる。壊れたものは直せない。(あま)はたまにこれから起こることを予言する。タイミングは操れない。(ほう)は物の状態を少し前に戻すことができる。人だと傷を浅くする程度。(ろく)は本やポスターとかの文字に限り、完璧に長期間覚えることができる。羨ましい。(はっ)ちゃんは数メートル範囲なら一瞬で移動できる。たまに転んでるけど。(てっ)ちゃんは天候を操れる。といっても風を吹かせる程度で、怒ったら嵐を呼んじゃうぐらい感情に左右される。(あい)は目を合わせた人の心を読むことが出来るらしい。ガラスが間にあると効果が薄まるから眼鏡かけてる。(かっ)ちゃんは壁一枚先までなら透視が出来る。プレゼントの中身が開く前にばれちゃう。(ゆう)は幽霊になれる。ただずっと幽霊になってると体が死んじゃうから一時間以内に戻らないといけない。(さい)は聞いたことない。けどお父さん曰く持ってるらしい、たまにふわふわ飛んでるから。(はく)は五感異常、むしろデメリットだけど、彼女は彼女なりに、なにか別のものを感じてるみたいに見える。

 私は……なにもない。これといった特殊な「個性」も一般人にあるような「個性」もあまりない、平凡な女の子。

 自慢じゃないけど、絵は得意なほうだと思ってる。ポップなのは描けないけど、写真みたいに描くことなら。でも人に見せたことはない。

 昔、孤児院……あれは絶対孤児院じゃないけど、そこに居たときに、大人の人に絵が見つかって、ビリビリに破かれてしまったことがある。その日から私は、今の兄弟にも、お父さんにも、誰にもばれないように絵を描き続けていた。隠すのも大変で、作品が増えていく度に少しずつ移動して、なんとか事なき事を得ていた。だからこそ、目の見えなくなった白の援助をするふりをして、背中に隠れてちょこちょこ描いてたの。一番大変だったのは、家に来るとき、なにも荷物がないから隠して持ってくることができなくて、誰も見ていないときにこっそり車のトランクに隠して、後々忍んで取りに行った。トランクが開かなくて、鍵を壊しちゃったけど。

 辞めれば良かったじゃないかって?

 私には描き続けなければならない、大事な理由があるんだ。

 急に別の話になるけど、乱は首に写真入りのロケットをぶら下げている。親の写真でも入った大事なものだと思うでしょ?

 ……乱が持ってたのは、孤児院の院長先生の顔写真だった。乱がそれを開いて眺める度に、遠くで見てても分かるぐらい歯を食いしばって、殺気立ってるのを私は知ってる。乱の夢も、そのロケットの写真を持っているのと同じ目的だろうし……一言で言えば復讐ってことだけど。


 私の絵は写真のように紙に残る。

 カメラを持てない代わりに、小さな紙に、プリント写真のようにその時の思い出を描くんだ。家族全員で笑ってる夕食とか、海に遊びに行ったときとか、寝顔とか。いつか失くなってしまうかもしれない、取り戻せないかもしれない今の幸せを忘れないように。

 まぁでも、これだけ目があると、流石に隠すのが難しくなってきちゃって。夢は幽霊で壁すり抜けてきちゃうから怖いし、乱は急に入ってくるし、部屋の掃除はメイドさんがしてくれるから見つかりそうだし、最近は紙とペンを前にしても手が震えてなにも描くなってきてしまった。から……高校はその環境を手に入れちゃおうと思ってたんだけど。


黒「(なぜかここに入っちゃったんだよねぇ~)」

 創造科。白も私も、なにも知らずに入ってきてしまった、ここ。人間のほうが少ないってどういうこと?幸い、人数が少ないし、誰も詮索してこないから、安心してるけど。

 皆個性的で、すごくカッコいい。この中に居れば白の「個性」もちょっと輝いて見える。ドラゴンとか、魔法が使えるとか、悪巧みできちゃうとか……神様みたい。こんな人たちが居るんだ。

 でも、私には見せられる「個性」がない。絵は絶対に見せちゃいけない。もしも回りの人にバレたら……バレたらどうしよう。多分もう逃げ場が失くなるかもしれない。それだけは怖いんだ。


 少し前から、この学校で起こったことも描き始めた。

 でもなんだかおかしいんだ。アルバムは、描いた順、日にち順に並んでいるはずなのに、季節がバラバラになってしまっている。私は順番に入れたはずなのに、その前を見ると冬から夏になってたり、春に戻ってたり。しかも時間が進んでなくて、一年を繰り返しているような紙の裏の月日表記。私は混乱して、部屋の中で珍しく絵を散らかして、頭を抱えていた。

 メンバーが違う。席数が違う。先生が……違う!

黒「どうなってるの……?なにが起きてるの?私のミス?でも何回も犯さないわ……!」

 入れ換えようとしても、日付が重複してたり、辻褄が合わなかったりで無理だった。

黒「(皆気がついてるのかな、私がおかしいのかな、どうしよう、どうしよう)」

 考えても思い付かない。

 とにかく描き続けよう、起きたこと全てを。そうすれば何かわかる気がする……!


 黒記の「個性」……カメラアイ

 その目で見た景色を、まるでカメラで撮って印刷したかのように描き写すことが出来る。正確には、見たものを細かいところまで忘れないという能力。文字だけの場合は例外。

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