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To create on CAMPUS  作者: 紫晶 朔実
16/19

知らない誰か

 学校か。ここが。

 質素なものかと思っていたが、そうでもない。中は明るいし日とも多く活発的だ。子供と大人の挾間でさ迷っている、どちらでもないような中途半端な数々の声が、廊下にこだまする。

「……意外と楽しそうな感じじゃない」

 部分虹彩異常の瞳がレースの下から覗き込んでいる。

 美術室を通りすぎて、古そうな木の蓋付き下駄箱を横目に、ふと教室の前まで歩き、足を止める。T字路の廊下の左手にふと目を向けると、ちいさなドラゴンの縫いぐるみのような形状の生き物がこちらに飛んできていた。

イト「ぷぅ~~!!!」

??「……!!??」

 満面の笑みで鳴きながら、ぽふりっと胸に飛び込んでくる。慌てて杖から手を離し、その生き物を抱き抱えた。ガンガツン、と重い音が足元から鳴った。

??「貴方、C科の子ね?」

 それは、胸の中で丸まってしまい、動く気配がない。むしろどうしていきなりこんなに懐かれたのかもわからない。

??「(たしか……後ろにいたいつも寝ている子?)」

 どうすればいいか分からず、まだ校舎内を把握もできていないので、届けようにもたどり着けそうにない。方向感覚も先ほど螺旋階段を上り降りしていたお陰で奪われかけており、足も棒になりそうだ。おろおろと辺りを見回していると、この生き物が飛んできた方向に階段がある。その曲がり角の壁に隠れて覗き込むかのように、二人誰かがいる。

??「…………あ、もし、C科ってどこかしら……?」

 とまばたきをすると、もう居ない。ダダダダダダダッと階段をかけ上がる音が聞こえた。

??「(上ね。一階ずつ確かめていきますか)……よいしょっと」

 落としてしまった杖を抱き抱えた腕を片方ほどいて拾い上げる。一周杖を見回して、どこも欠けていないのを確認した後、またコツンと杖をついた。


 イトは最初は嬉しさが溢れるばかりで夢中で飛び込んだが、相手の反応が思っていた通りじゃなかったことが頭に引っ掛かった。特に、飛び込んだ瞬間の表情が、きょとん……としていたのが。いつもなら

「わぁ!……おいおい、いきなり飛び込んでくるなってまったくも~」

と撫でてくれていたのだけど。


??「ごめんくださーい、この子の席はどこかしら」

 ノックもなしにガラリと開いた扉。

四葉「(追いかけてきた!?)」

 誰も答えてはいないが、堂々と足を踏み入れ、胸に抱えていたちいさなイトを机の上にそっと逃がした。少し屈み俯いた顔には黒いレースが垂れ下がっており、全てを覆い隠している。後頭部はレースがなく、ベリーショートの毛先が跳ねている。そしてその顔をあげてこちらを映した瞳は

吹雪丸「……え?」

 上半分が黒、下半分が真っ赤。そして瞳孔は真っ青。

黒「(うわぁ……なんか既視感ある……)」

??「……さて、視察に戻りますか。失礼しました。」

 ふわっとレースを揺らして会釈をし、微笑んでこの場を後にした。


 白の視界は常に真夜中だ。ちらちらと奥に見える灯りが、そこに誰か兄弟がいることを教えてくれる。キラリと振り子のように揺れる光。

白「……今来た人は?」

 これは黒記だってわかる。今来た人は色んなところが光で、形がよく見えなかったわ。

黒「なんかね、えっと……こんな感じ」

 黒は説明しようとしたが言葉に詰まり、ぱっと、座っている白の白い手を取る。そしてそっと自分の頬にそっと当てがった。

白「ふふ、騙されないわよ黒」

黒「本当なんだって!皆にもそっくりだったんだよ」

白「本当?()()()()()()()()()()皆似ているだなんて、面白いわね。」

黒「……ほんとだ。あははほんとだ!可笑しいね」

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