誰かの香りはあの世の近く
ちょっと不思議に思ったこと。
あの子だけ、匂いが違うこと。
そんでその匂いが、同じようにもう一人いること。
ネモ「……んで、それが?」
イト「変じゃね?」
吹雪丸「全然よくわからない」
といっても、最近来たあのつきふえ?って子の匂いが不思議。
イト「生きてる人の匂いがしないの」
ネモ「死んでるって」
吹雪丸「えっやめて?」
肩が強張り、少し退くような体制をとる。ネモは特に気にすること無く、スマホをいじり始めていた。
イト「なんだろ、死んでるって訳でもない、よくわかんない」
吹雪丸「なんじゃそりゃ」
四葉「もう一人って誰?」
吹雪丸「うーわビックリしたぁっ」
吹雪丸の座っている椅子の後ろから上から見下ろす形で覗き込んだ四葉に、また吹雪丸は心臓を止められそうになった。
イト「せんせ」
四葉「先生?ってどの先生?」
イト「魔法の先生」
ネモ「名前覚えてないし」
吹雪丸の頭に、またひとつ影が落ちる。
隠岐「……三日月先生?」
吹雪丸「だあああああもうビックリするっ……」
イト「草、だよね確か」
また後ろから同じように話しかけた、悪気はない隠岐にそろそろトドメを刺される直前まで来た。
四葉「なんの話?」
吹雪丸「ツキ姉と三日月先生が不思議な匂い?がするんだって」
隠岐「ちょっとよくわかんないかな」
そう話しているとパウロスがなんの感情を抱いているのか分からないような顔つきをして教室のドアを開けていた。
隠岐「どうしたのさ」
パウロス「なんか変な人いた……肩に宝石生やしてた……」
四葉雨宮「「なにそれすごい気になる」」
二人は聞くや否や、すぐさま扉を飛び出していってしまった。
パウロス「……あー……副校長先生が、すごいペコペコして……たよ?」
イトの尻尾がなにかに反応したようにビタン!と弾けるような音をたてた。
イト「……!この臭い知ってる」
彼女はその席の上で姿を退化させて、ぴょんっと飛び降り、開きっぱなしの扉からテトテトと出ていった。
ー六階廊下
??「ごめんなさいね急に来ちゃって」
副「いえいえとんでもありません……」
カツン、カツンと何か固いものが当たる音が、ヒールの足音に合わせて鳴る。すれ違った生徒は会釈をするものの、その後は目で追ってしまう。それほどの美貌だからではなく、単に変な格好をしているからだ。
頭に斜めに金属の和を着けており、そこから垂れ下がるレースが本人の顔のほとんどを隠してしまっている。両肩から石が生えるように付いていて、袖は自分で切ったかのように半袖ほどのところで二つ三つほどに輪切りに切れ目が入っている。半透明のスカートを履いてその下にさらにスーツのズボンを履いていて、その裾も輪切りになっていた。ヒールは爪先にひし形の宝石が大きく付いており、右足が白、左足が黒色のハイヒールだ。杖は接続部分以外全部色が違う宝石で、先端針のように鋭く尖っている。これは誰でも困惑して振り返る。この世界では。
雨宮「……あいつかな」
四葉「……あれ横の副校長だな……?」
イト「……ぷぅ」
曲がり角に隠れてこっそり見る二人の足元にイトがすり寄る。そのままその杖をついている人の所へ飛んでいってしまった。
四葉「……うわぁ~」
雨宮「アレはあれだ、うん、アレ」