何回目かの終業式
あの後も転入生は数人入ってきた。私からしたらなぜこの時期に入ってくるのか、分からないぐらいだ。
三日月「パウロス君、片目を隠しているのは何か意味があるのかしら?ツキフエさん……あぁ月の裏の子ね。蜜屋 あるろ君、この子は無性別!?え、更衣室どっちにしようかしら……扑 一夏さん、ちぇ、チェイス……?鬼ごっこかしら。井上 亞離素君に、紅連さん、本当にこの書類の性別間違ってないわよね?……そもそも逆……そんなことはないか。朝霧 零君、この子も何かありそうねぇ……」
そう言いつつ、書類を綺麗に机の端にまとめてから。
三日月先生は勢い良く額を机にうつ伏せの状態になるようにおろした。ゴンッと良い音が鳴る。
「っ~……もうワケわかんない……」
私でも追い付けない世界観。それぞれ違う構造。レポートも皆それぞれの文字があり、解読が大変だった。
「なんで私、ここなのかなぁ」
目の前から差す朝日に、手をかざす。ごく一般的な細い女性の手だ。
そしてその時計を見ると。
「……げっもう9時半……9時半!?」
いつもの、時計を見ない悪い癖がまたでてしまった。
いそいでC科一年の教室に向かう。
「皆急いで体育館n……誰も居ないわ……」
荷物がちらほら置いてあるが、人の姿はなかった。
一方その頃、体育館のある7階に向かうため一同は階段を上がっていた。
密屋「ひ、人が多いです……僕帰ってもいいですか?」
吹雪丸「だめです」
イト「ぐるるるるる……」
黒「もうちょっとだから、ね」
イトはそう言われると、黒に抱き抱えられたその胸の中に丸くなり顔を埋めてしまった。朝教室で寝ていたところを無理矢理起こされて、なおかつ大嫌いな人間の集団の中に連れてこられたものだからとても機嫌が悪い。
黒「エレベーターの方じゃなくてごめん」
白「大丈夫よ、少しは鍛えないと」
イェン「もう数段だぜ」
白「えぇ、ありがとうイェン」
白の持つ白杖がこつこつと音をたてるが、たまに誰かに蹴られて別のところへ向いてしまう。
亞離素「どこか落としちゃいそうだね……」
7階についたはいいが、靴を履き替えるために立ち止まる生徒たちで溢れ返っていた。
何とかして体育館に入ると、色とりどりの洋服、和服、中には中華服まで身に纏う男女たち。この中でなら意外と目立たない創造科の生徒もいたが、如何せんドラゴンや、背中の付属物や、浮遊は誤魔化せなかった。
「うわっ、ねぇ見てあれ」
「やべぇ可愛い子がいるんですけどぉ」
「俺らもしかして二次元に迷い込みました?」
「このタイミングで異世界転生ものはないっしょ~」
騒々しい雰囲気がさらに騒がしくなる。
ほむら「やば……」
雨宮「なんか嫌なかーんじ」
天才が集まるここの興味津々な目線は少し恐ろしいものも混じっていた。なにかを探るような目に
「なにあれ、コスプレ?」
「うわぁいってぇ……」
ネモ「…………」
零「……嫌ァな予感がするな」
京極「皆さん?時間過ぎていますよ、早く並んで。」
すると後ろから、背中を押しつつ催促される。
黒「順番はなんでも良いんですか?」
京極「いつも座席が後ろのひとを後ろに回せばなんでも良いです。二列であの場所に並んでくださいね」
副校長「えー、いよいよ文化祭の準備が始まりましたね……」
「いっつも話すの副校長だよなぁ、うちらの校長なにしてるんだろ」
「まず顔も見たことねぇじゃん」
「うげぇ、今年もブラック労働だあ……」
前で人が話しているというのに、ある人は手元の画面に顔を伏せ、ある人たちは小声で話している。それが集まって、この場は少しざわついて聞こえた。
YOU「……文化祭?」
紅連「なにもしてないくない?」
一夏「準備ってなにするんだろう……?」
お互いに顔を見合わせて、キョトンとした顔を浮かべたまま、終業式が終わった。あの後は長い長い表彰式で、ご想像の通り、創造科はまずあるはずがなかった。全国で集ったデザインコンテストや、設計グランプリなどの最優秀賞の表彰だったからで、まず発足したばかりの創造科が出せるものではなかった。
京極「さぁ夏休みだけど……宿題がないからといって、羽目外して学校にこないでくださいね」
文化祭の話が一切でないまま……C科は何度目かの夏休みを迎えることになった。
夏休み、皆さんがどう過ごすのか。二次創作で見てみたいものですね。