放浪者
図書室。
保健室も近く、どの科もあまり使わない二階にあるこの部屋は時間さえも忘れて読み耽ることができる。
司書「そういえば君は、どの科の子だい?」
灰色がかった髪の少女が、そう声をかけられてぱたんと読んでいた小説を閉じる。
「んーわかんない」
司書「わ、わからない...?」
少女は席から立ち上がり、本を仕舞う。大きく伸びをして少しものを考える仕草をしたあと
「この中ふらふらしてたらあいつみつけられるかなぁ~」
そういって扉を潜り抜けていってしまった。
司書「ぶ、部外者......?」
三日月「ごめんください、えっと、緑髪の丸眼鏡の男の子と、白髪っぽい和服の女の子見ませんでしたか?」
司書「二人とも見たねぇ、男の子と入れ違いで女の子が来て、いま出ていったところさ。誰かを探してたみたいだけどねぇ。」
三日月「げっ...すみません有り難う御座います。」
四葉さーん!と誰かを呼びながらまた出ていってしまった。
司書「またこの時期が来たねぇ...いつ終わるかねぇこれも」
ため息をついて、図書館の司書は事務室に戻っていった。
......屋上だ。
いつの間に屋上に上がったんだっけ。そうだ飛びたかったんだ。
でもうちは真ん中に立ったまま、なにかを見ている。
高い柵。でもその柵の奥に誰かがいて......。
あれ、いつの間にか皆がいる。耳、おかしくなっちゃったかな、なんも聞こえなくて。変な感じ。
目の前の子が消えた。
......助けなきゃ。
でもなんで助けなきゃいけないんだろ。
なんかすごい、嫌なことが起きるような、すっごいモヤモヤして......。
「......さん.....とさん...イトさん!」
はっと視界が切り替わる。ぼやっとしてまだ頭が追い付いていない。
ia「移動ですよ、起きてください......」
横で小さく服を引っ張ってiaが起こしに来てくれたようだった。イトはゆっくりと目を擦って、次の授業の荷物をまとめる。
イト「(さっきまですごく悲しかったような...なんだったっけ......まぁいいや)」
急いで階段をかけ降りる。次は科学室で実験授業だ。
そのとき、曲がり角で誰かとぶつかりそうになる。
四葉「うわぁ~!びっくりしたぁ~!」
イト「うわぁぁ!!めっちゃビックリした!!誰だおまえ」
ia「どうしたんですか...?」
イト「あ!やべ遅刻しちゃう!」
走り去っていくイトの後ろ姿を少女は目で追いかけていた。
四葉「ちょっとついていってみよ~...イヒヒッ」