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6.二日目

誤字報告や表現不足など有りましたら、遠慮無くお願いいたします。ダブルチェック等していますが、人間ですから。失敗しちゃいますからね。

(意訳:丁寧な誤字報告付きの感想嬉しかったんです)


12/16 加筆



 何処からか泡が揺蕩いながら浮かぶように意識が緩やかに目覚め、緩慢に休んでいる自己を認識すると布団の隙間から入ってくる冷気に目を覚まされる。

 VRから戻る時によく似た目覚めの間隔に見舞われながら、時計へと手を伸ばし手繰り寄せれば、午前6時。


 いつもの時間に起き、いつもと同じように着替え、決まったルーチン通りの朝を過ごし終えては今日が土曜だという事を思い出す。

 確か家族全員が今日は休日だ。故に朝ぐらい皆パンでも齧っていればいいと思えば、陽臣は適当な菓子パンを咥え保温ポットにコーヒーを入れ、玄関で爆睡している徹夜帰りの父親をソファへと引き摺り上げてから自室に戻った。





 ところ変わって一時間程後の『Stranger Online』内の古都近辺にナインは居た。

 AR端末経由で『兄さんご飯は!?朝ご飯作ってくれないのですか!?』などとメールが妹と母親からの二通届いたが、『休日なので私のキッチンもお休みです』と答えると、静かな恨み言がつらつらと返ってきたのでそっと閉じ忘れることにした。


 頭を切り替え、彼女の今は昼頃の森を歩いて目当てのものを探し終えての帰路だ。

 目的は幾つかの薬草や兎やオオカミの素材で、ログインして直行で向かった冒険者組合にて受注した日間のクエストとなる。

 何度か繰り返し行うことが出来るらしいが、需要と供給が有るようで一定数を超えると受注出来なくなるらしい。

 他にもアイテム――武器防具や消耗品においても同様のようで、疑似的な商業の循環が良く出来ているものだなと感心させられる。



「ゴルドさん、戻りました。あとコレ」

「……おう、助かったよ嬢ちゃん」


 古都の門前へと至れば、そのまま街中へと入らず脇の守衛小屋へと顔を出す。そうすれば休憩中らしかった体格の良い男の人が迎えてくれた。

 頭上のネームアイコンは白文字、デフォルトでNPCに設定された色だ。


 そしてNPCである彼が私を女性として認識しているのは、アバターもあるが少々悪ふざけで女性らしい声と中性的な振る舞いを試しているせいでもある。

 アリス――愛梨がこの世界で『姉』を望むのであれば、これもまた一興だろう。


「でも災難でしたね、捻挫だなんて」

「本当にな。だが助かった、ありがとう」

「別にそれ程では。でも気を付けてくださいよ?」

「まさかここまで悪くなると思わなくてな……」

「……はあ。痛みが引いたら、温めてくださいね」


 クエストを受注し近場の森へ納品物を探しに行く際、門を通る際に彼の挙動がおかしく思えたのがそもそもの始まりだった。

 話を聞いてみれば寝起きに足を痛めたが、無理をして門番の仕事へついて悪くしていったらしい。

 なので違う門番に話しを通し休んで貰い、森へ行ったついでに消炎や鎮痛作用のある薬草を多めに採取してきたという訳だ。


 小言の後にもう一言二言の会話を終えて小屋を出る。そして相変わらずここでもAIの精巧さに驚かされた。

 人と話しているのと何ら変わりないように感じられたし、屈むのも辛そうな彼の足首の処置に触れた時もしっかりと肌から体温を感じられた。



「本当に、『世界』だなぁ」


 のんびりと冒険者組合へと足を向けながら思う。ナイン――もとい陽臣が今までに身を浸していたのはFPSの世界だ。

 多少の物語は有れどそれはおひとり様専用(ソロプレイ)の限りであって、主流たる対戦においては物語など不要の代物。

 故に戦闘前の打ち合わせや後の反省会、それ以外はクランのメンバーとの雑談程度がゲーム内での交流だった。


 その為にNPCとの会話でさえ新鮮に感じる一方で、殺伐さと温かみの比率が真逆のこの世界に違和感を感じたまま、組合の門を潜る。

 幾つかの薬草と、毛皮や骨に牙。そう言った納品物を受付に渡し報酬と幾つかのアイテムを貰い、受け渡しついでに受付嬢さんへと声をかける


「すみません、今大丈夫ですか?」

「はい?どういったご用でしょうか」

「近くにあるダンジョン……お墓?についての情報が聞きたくて」

「ワーズ墓所の事ですね?少々お待ちください……」


 一礼して受付の奥へ消える受付嬢さんを見送り組合の中を軽く見まわしてみれば、ここにもプレイヤーに混ざってNPCの冒険者が目に付く。

 彼らの装備しているものは鉄製と見られる物が多く、中級者相当なのかなとのんびりして居ると受付嬢さんが戻ってくる。


「お待たせしました、こちらをどうぞ」

「どうも、ではまた」


 頭を下げつつ差し出された概要を纏めた紙を受け取れば、それらがウィンドウとして表示される。

 推奨レベルは浅い所で15以降、最奥で20レベルとなっている地下へ降りるタイプの三階層のダンジョン。

 敵はゾンビにスケルトン、後は稀に蝙蝠系列のバット程度……この辺りはネットでも調べられた内容と同じだ。

 ただネットの情報はベータテストのものと注意書きにあるように、ここで貰った情報では地下一階には多少のトラップがあり地下二階には未探索エリアが存在するらしい。


 どちらも事細かには示されてはいないが、総合すると罠や行き止まりと最奥のボスの存在には十分注意する事が解っただけでも十分とする。



「じゃ、後はレベル……か」


 クエストと狩りでナインの現在のレベルは12。一方ダンジョンに赴くのであれば最低ラインとしたいのはレベル15。

 余裕を持とうとすれば、もう数レベルを加算したい所ではある。と考えれば装備も……と考えてしまう訳で。

 そして圭との待ち合わせ時刻まで、昼食などの時間を考えればあと約三時間。


「……とりあえず狩ろっか」


 思考がループしてしまう前に、身体を動かす事にしたナインだった。





「あっははははははははァ!」


 太陽がすでに没しすっかり夜の森の中。現実時間ではもうすぐ昼を迎える手前の時間に、木々の間を走る音と騒がしい鳴き声と狂声が駆け抜けて行っていた。

 先頭を行くのはもちろんナイン。装備を引っ掛けてしまわないように流れを意識して木々の間を走り続けていた。

 一方でそれを追うのはオオカミやゴブリン達。仲間を討たれた上にたった一人に掻き回されては、彼らのプライドが許さないのだろう。

 喧嘩を売ったナインに追いつかんと目を剥き歯を剥いて駆けている。しかし追いつく事が出来ない。


 時に大きな岩が行く手に立ち塞がれば腕を突き、反動と脚力をもって身体を斜め上へと捩じり上げて超える。

 時に倒木が有れば湿った腐葉土を踏み抜いて濡らした靴底で、剥がれかけている硬い外皮の上を滑り降りる。

 森の中で暮らすモンスターの地の利を活かさせない方法でナインはエネミーを集め(トレインし)ていた。そして――


「せーの……ッ、っとぉ」


 視界に腕ほどの丁度いい木を見つければその幹を掴み、前進する運動エネルギーを反転させて追う先頭にいたゴブリンの顔を蹴り砕き、ついでにと身体を捩じり追い抜いてしまったオオカミの背を切り伏せる。

 そしてナインに気を取られ全力で走っていた大多数の敵は……その勢いを殺せずに哀れな悲鳴を宙に吐き出しながら崖下へと転落していった。


「さってっと、そろそろ時間だね」


 全身に感じる疲労の悲鳴や荒く切っている自らの呼吸さえも楽しみながら手を払い、現実での時刻を確認し一息ついてからまだ生き残った敵を前に嗤う。

 殺気立っている相手を目の前にしても微塵も恐怖が訪れない、むしろただのスキンシップだとでも言いたげに機会を窺う敵を(わら)う。

 それを挑発と取ったのか、オオカミもゴブリンも一斉にナインへと躍りかかった。


「愛梨を怒らせると怖いから、早めに切り上げないと……っね」


 苦笑しながら正面から突っ込んでくるゴブリンへは盾で叩き伏せ、歯を剥いて飛びつくオオカミへはその喉奥へ剣を握ったままの拳を突き入れる。

 そのまま地に伏すゴブリンの背を突き刺しては引き抜きながら腕を払って宙に浮いたオオカミを斬っては、数分で対峙していた敵を全て倒し終え、安全な場所でログアウトする為に古都へと戻っていき――



「でもな、時間と格好には気をつけような。嬢ちゃん」

「ハイ……」


 真夜中に装備も身体も血塗れで門を通ろうとして、門番に止められ怒られるプレイヤーがいたとかなんとか。




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