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51.闘技大会・予選①

大会予選、アリスとナイン編です。


2/22 脱字修正。



 そうこうしている内に、予選の開始試合になったので受付のNPCへとプレイヤーが群がっていくのが見えます。

 それを横目に、姉さんがヒューイをあしらいながら皆に発破をかけました。


「じゃあそろそろ行こうか。解ってるとは思うけれど、本選出場は恐らく八戦全勝。頑張ろう」

「……おう、お前も負けるんじゃねえぞ」

「そういうヒューイはポカして落ちそうっすよねぃ」


 スプークの言葉にマージーさんが頷いて、本人を除いて和やかな笑いが溢れ出します。

 とはいえ、そうしている訳にもいかないので受付NPCの方へと足を向けながら微笑みました。


「では行きましょう。皆さん健闘を」

「うーい、っす」

「ん」

「おう

「とはいえ気負い過ぎず、だね」


 各々の激励の仕方で励まし合えば、NPCへと声をかけました。



「予選参加者の方ですか?観戦希望の場合こちらではありません」

「参加者のアリスです」

「かしこまりました、奥の控え室へとお進みください。また途中で観戦される場合、中にあります階段から向かいお楽しみください」

「わかりました、ありがとうございます」


 私の言葉でなにか名簿のようなものと照らし合わせ、確認が取れたのか兜越しににこやかな雰囲気を見せるNPCに招かれるがまま奥へと向かいます。

 どうやら案内通り、控え室には参加選手専用の観戦席へと向かうことが出来る階段が確認出来ました。


 特にする事もないので、軽く装備の確認を終えては控え室を確認してみると簡素で殺風景な部屋に、長い椅子が幾つか並んでいます。

 そしてふと壁にある張り紙に眼が付けば、その下に大会専用の回復アイテムが収められた木箱が幾つか並んでいました。

 折角なので頂戴した所、タイミングが良いのか呼び出しのアナウンスが脳裏に鳴り響く。


「よし、では行きましょう」


 自らの頬を軽く叩く事で今一度気合を入れ直し、高揚する気分を宥めながら戦いの舞台へと私は繰り出しました。





 歓声の上がる舞台へと入ると、背後で扉が閉まるのが背中に感じられる。

 しかしそれよりも会場内の全周からの歓声に気圧されそうになります。


 プレイヤーにしては数が多いような、そんな気もするので大半はNPCなのかな。と考えていると対面する相手プレイヤーも同じ印象を抱いているようでした。


『試合のルールを確認いたします』


 そう、歓声が落ち着いたところでよく通る声のアナウンスが聞こえる。

 野球などのスポーツのアナウンスの様に感じられたその声は、ルールの説明と再確認をしてくれました。


 制限時間は予選の為15分。

 相手のHPの全損か、試合時間の経過で相手よりも多くHPを保有している、もしくは相手の降参が勝利の条件。

 勝利した後は全回復の後に控え室への転送、負けた場合はデスペナルティなしで控え室へと送られる。

 フィールドは試合ごとにランダムで変更される。

 ハラスメント行為などはAIやGMの判断の元で反則や失格を決定され、反則は三回で失格。


 メールでの告知があった通りの内容に、地形変化の項目が追加されていた。

 現に目の前に岩や窪み等が現れ、荒れ地に舞台が変化していく。

 おそらく疑似的な遮蔽物などが必要と考えたのだろうか。


「どちらにせよ、私なりに戦うだけです」


 細剣(レイピア)を抜き構えれば、相手のプレイヤーも大剣を構え臨戦態勢になりました。

 それを合図の様に、カウントダウンが中央に見え――


『3…2…1、試合開始!』


 負けられない戦いが始まりました。





 アリスが一戦目を始める一方で他の仲間も戦い始める中、ナインは相手の弓士の放つ矢を避けながら観客席の一か所に視線を向けていた。


 石造りのコロシアムの中、一層頑丈に作られた最上階。

 そこをよく見れば全身を華美な鎧で固めた騎士を侍らせる初老の男性、とその子供たちだろうか。

 無意味にNPCを配置するはずはない、ならば選手を見下ろす彼らはさしずめ今後に関わるNPCなのだろう。



 そんな事を考えていると、相手から疲労と怒気が込められた叫びが発せられる。


「おまっ、え……ちゃんと、戦、っえ!」

「……すまない、攻撃していたんだ」

「ッ!?」


 若干申し訳なく思いつつも、戦場(FwF)で飛び交っていた銃弾に比べれば生温い矢に、つい煽る様な言葉をかけてしまう。

 それを聞いて更に憤慨した様子を見て取れたが、この程度の挑発で我を失うようでは話にならない。


 故に躱しながら距離を詰め、それを嫌って逃げる相手を舞台の端へと追いつめて、ナインは手堅く勝利を握った。



 そして次の試合――


「さっきの試合見てたぞ」

「へえ、それが?」

「躱すのは一人前でも、近寄れなければ話になるまい!」


 そう言って魔法使いの風体をした相手の少女は、試合開始直後にナインを囲むように炎の壁を作り出す。

 するとナインは困った顔で肩を竦めるので相手の魔法使いは意気揚々と叫んだ後に呪文を唱え始める。


「遠隔攻撃を覚えておくんだったな!近接脳はここで僕の勝ち点になれ!」

「はいはい」

「……?」


 諦めたというよりは呆れた様子の彼女に相手は詠唱しながら首を傾げる。

 しかしその首は元の角度に戻される事はなかった。


「……が、ふっ」

「使ってないだけ、と判らないのかな」


 失笑しながら投擲した短剣が、深々と魔法使いの喉元に突き刺さり彼女の首を固定していた。

 痙攣するように身体を震わせる相手のその姿を確認した後、火の壁を隠れ蓑にして鋭い破裂音を響かせ――


「う、そ……」

「悪いね。嘘でも冗談でもないんだ」


 どんな攻撃を受けたか解った相手が崩れ落ちるのをナインは見守り、その後も勝利を手繰り寄せた。





「ふう」


 また視点をアリスへと戻せば、大剣使いと魔法使いのプレイヤーを何とか仕留め、三戦目へと望んでいた。

 三戦目は双剣士。高い敏捷値をを活かしたプレイヤー故に、魔法も扱うアリスにはステータスの差から戦い辛い相手となる。


 しかし試合の結果はそう簡単には運ばない。



 試合開始の合図と同時、双剣士の方が高い敏捷を活かして突っ込み、あっと言う間に距離を詰めてきます。

 こちらは迎え撃つ構えで待ち受けて相手の剣先を見据え……二本の剣が振り抜かれ、振り下ろされる瞬間を確りと見て――


「――ふっ!」

「……え?」


 双剣が二本とも打ち上げられ、相手は万歳のように両手を上げたまま呆然としています。

 その隙見逃さず、胴を乱れ突けばあっと言う間に耐久力に乏しい相手のHPは全損。

 彼は訳が判らないといった声音を漏らしながら戦闘不能となりました。


「いなし易い相手で助かりました……」

「畜生……」


 勝利の表示を見て安堵しては、呼吸を落ち着けて居れば相手の悔しそうな声が聞こえます。

 確かに双剣士ならば速攻は悪手では無く、大抵は二本ある剣の内片方しか防御や受け流しは出来ません。

 ただ、それならば纏めて受け流す一瞬だけの軌道で剣を振るえばいいだけの事。


 PSとゲームの知識。それに戦術を組み合わせた以上、やすやすと負けるつもりなど有りません。

 しかし油断も禁物。程々に気を引き締めてこれからの予選も望まねば、本選で待ってくれるであろう姉さんに失望される事でしょう。


 故に驕らず、次の試合も勝利を握る。

 ただそれを繰り返すだけなのですから。



 踵を返しアリスが控え室へと転送される。

 この時絶好調の彼女は間違いなくこの闘技大会で上位の勝利時間を刻み続けていった。



残りの三人は次回にダイジェストされます。

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