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49.vs剣闘王

日間PV数3,000越え、累計PV数4万越え、またユニークPV数6,000超え、ありがとうございます。


……へへへー(嬉しみの舞)



 大ぶりな剣と黒い鎧を相棒に一層と凄みを身に纏った剣闘士が舞台で待っていた。

 昨日までの稽古でもしてるような空気など無く、威圧感だけがぴりぴりと全身を叩いてくる。

 そんな相手へと相対すれば、彼は声をかける前にナインへと声をかけてきた。


「今日は特段と気合が入ってるではないか、ナインよ」

「そりゃ手加減して貰うの(お遊び)は今日で最後にしたいから」

「ぬかしおるわ」

「ふふ、そういうあなたも本気なのかな?」

「いや。武者震いというやつだな」


 彼の前の地に刺す剣に手をかけたまま語られる言葉に、彼女も笑みを嗤わせた表情で語り返す。

 そのような笑顔に、相対する戦士は悲しげに問うた。


「それがお前の本質か」

「概ね、その通り。武人って柄じゃないから」

「だろうな」

「ごめんなさい、流石に明日の為にこの感覚を取り戻しておきたかったからさ」

「死を望み死を振り撒く存在。出来ればお前のような者は、この地の底に封じてしまいたいぐらいだ」

「あっはは、それは困る。私の死に場所はここじゃぁない」


 軽薄に酷薄に笑うナインへ、独白のような声が漏れ出す。

 それを彼女は緊張しながらも哂い飛ばすと、続けて問いが飛ばされる。


「一つ問おう。その狂気は誰に向けられるものや」

「私自身と、私と仲間を害する存在へ」

「……そうか」


 返される言葉に安心したのか、若干尖った空気が和らぐ。

 しかしその鋭さはまだ触れた物を傷つけられるほどに保たれている。

 そんな中でもナインは平然と笑みを崩すことはなく、目の前の相手を見据えていた。


「ならば、始めよう」

「うん、死合おうか」


 その言葉を引き金に、両者ともに己の獲物を構えて動き始めた。





 二人が剣を交え数十秒。

 やはりというべきか、片足での身体捌きと片手でのみ剣を振る相手にナインは押されていた。

 しかしながら、それを予見するかのように剣を、盾を斬撃の軌跡へと置くことで凌ぎ続ける。


 重低音の金属が鳴く音を響かせる度にナインは苦しげに笑う。


「さ、っすがに……まだまだキっツい、ね!」

「それでも、よく耐えているではないか!」


 お互いの剣は標準的な重さであったが、相手の剣は技術か能力値(ステータス)の差かとても重い。

 力比べなどは愚の骨頂だ。


 一瞬たりとも気が抜けない、もし気を逸らしてしまえば一瞬で終わりの剣戟が飛んでくるだろう。

 故に、彼女は耐える。



「どうした!守ってばかリでは勝つなど妄言に等しいぞ!」

「そう、だ……ねッ!」


 吼える様な言葉と同時に背筋が凍りそうな速度での刺突がナインの心臓に迫る。

 しかし彼女は、息を呑むその軌道にサーベルの腹を押し当てて左へと逸らし、笑う。


 それを見た彼は訝しむ雰囲気を一瞬だけ発したが、剣先を回し横薙ぎに剣を振る――


「そこォ!」

「ッ!?」


 ――事はできなかった。

 刺突が終わり次の動作へと移行する、剣が緩い動きをするそのほんの僅かな瞬間にナインは左手で剣を掴み、後ろへ流す様にザガンの体勢を崩した。

 そして、思い切り胴体へ目掛けて袈裟斬りにする。

 思いがけない一撃によろめいて体勢を崩していた彼は、避けれずにHPを僅かに削った。



「まだぁ、まだァァッ!」


 追撃をナインは試みる。

 だがサーベルではその重みによって次の動作が遅く、その間に相手の被弾による怯みが解けてしまう。

 ならばどうするか、それに対するナインの答えは――


「《瞬時換装》ッ!」

「ぬおぉぅッ!」

「ぜえぇぇあぁっ!」


 《装備変更》の上位スキル《瞬時換装》でサーベルと盾を短剣に、重い鎧を軽装鎧へと変えて仰け反るザガンへと肉薄する。

 それを許さないと苦し紛れに跳ね上げられた剣先が振り下ろされるが、それを見切っていたかのようにナインは重心をずらして躱し取り付く。

 怯んだ相手でなら、一撃の重みなど関係ない。更なる怯みを与えるための一撃を与え、細かいダメージを重ねていく。

 そうしてようやく……ザガンのHPの数パーセントを削り取った。


「!?ッ、はっ」

「ぐぬう」


 そこで気を抜く事をなく、彼女が飛び退いた所を恐ろしい速度で剣が通り過ぎていく。

 寸での所でそれを躱せば悔し気な声が耳に届き聞こえる。



「……これで、少しは見返せたかな?」

「……ああ、少しは見直したぞ」

「まさか狡いだなんて言わないよね」

「それこそまさか。あの手の化かし合いなど、ルールの内よ」

「よかった」

「……いい顔で笑えるではないか」

「ん……そんな顔してた?」

「ああ、好い顔だ」

「そっか」


 今一度向き合い、剣の代わりに言葉を交わせば一瞬だけ弛緩した空気が流れた。

 一瞬前までの壮絶な笑みから、ナインの顔には純粋な笑みが浮かぶ。


 それに驚いたような声を上げられれば、流石に彼女の表情は自嘲へと変わる。


「自分じゃもう、意識して出来ない貌だから。レアだよ」

「ふむう、そうか。なら幸運というものだな」

「うん。それにしても……はは、ここまでして一割も削れないんだ」

「怖気ついたか、異邦人」

「いいや、『今』の私じゃあ無理だと、解っただけ」


 あっさりとした様子で、しかし戦意を失わずにナインは鎧を纏いサーベルを向ける。


「せめて一割ィ!持って行かせて貰うぞッ!」

「来ぉいッ!」





 両者が再び剣を交え十数分。

 ナインは地に伏して荒い息を吐き、傍らに疲れを感じさせないで立つザガンを見上げていた。


「ぐぅぅぅぅぉぉんのぉぉぉぉぉぉぉ……」

「人の(なり)で魔獣のような叫びをあげるでないわ」

「畜生。あと1ドット、あと1ドットで一割ィぃぃぃ……」

「こやつめ……」


 あれからナインは一度カウンターを決められて警戒する彼から、二度体勢を崩させる事に成功していた。

 だがあの手この手を試した為にそこで手札が付き、あえなくノックダウンの憂き目にあった訳だ。

 その上、啖呵を切ったにも拘らずザガンの頭上のHPゲージはギリギリで九割を超えている。

 故に、血の滲むような声を上げて地を叩いているのであった。


「むしろ、その(レベル)でよくやったものだ」

「……今出せるほぼ全力は絞り切った、はず」

「そうか。ならば格の差が埋まった時が楽しみというものだな」

「…………」


 ようやく、無駄な行為からの疲労の為に彼女は大人しくなる。

 そんなナインへと、好々爺の様に彼は笑う。


「では、散々付き合って貰った礼をしておこう」

「ぉ……毎日押しかけて鬱陶しいから無し……っと言われるかと」

「そんな器の小さい事などせんよ。気にせず受けとれい」

「……そう言いながら、なんで距離を?」


 事実、毎日の様に挑んだのだ……それも連続して。

 故に礼などされる事はないと思っていた彼女は、何とか身体を起こしながら首を傾げる。


 礼をするというのに、なぜ歩き去っていくのか。

 その疑問はすぐに明かされる事となる。



「征くぞ」

「待って、これはどう見ても――」

「《瞬歩》《疾脚》《縮地》――」


 十数歩離れた所で、彼は振り向き剣を構える。

 その仕草に嫌な予感を感じたナインは反応する暇すらなく――


「斬絶」

「ッ!?」


 瞬くよりも遥かに短い時間で迫るザガンを視認する瞳しか動かせないまま、粒子へと還された。



 ――木曜日、死亡回数 1回。戦闘時間 37:42。




闘技大会?ナインにとってはここが二章の山場でした。

という訳で次回からイベント期間の闘技大会の内容となります。


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