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47.ノフス鉱山 地下③

30,000PVとユニーク閲覧5,000、ありがとうございます。

こうも見て下さってる人がいるんだなぁ、と。




「だあぁぁぁぁぁ、勝てるわけないだろあんなのぉぉぉぉぉ」


 ゴルスクの教会の中でナインの悲痛な叫びが響き渡る。

 案の定、地底の神殿で黒騎士に負けたのだ……それも片手片足のハンデでもって。


 黒騎士と対峙したナインは、自分自身の強さを信じる故に驕っていたとはいえその自覚があった彼女の背筋に悪寒が走り抜けた。

 それによってまともに動けず、また動いた箇所もとても鈍い動きであったのもあるが、純粋に能力の差でもって呆気なく負けたのだ。


「……覚えていろ」


 響いた叫びに苦笑していた他のプレイヤーとNPCが、その顔を凍り付かせる低い声を吐いてナインは教会を後にする。

 それからナインは、日曜日の夜を全て使ってアルゲンルイムへ戻りいくつかのアイテムを買い求めてゴルスクへと戻った。





「で、さっそく遊びに来たという訳か」

「そういう事」


 月曜日。

 普段大人しい口調のナインが荒っぽい口調で黒騎士の待つフィールドへと踏み込む。

 昨日と同じ直立不動の姿勢で彼は驚きと呆れの声を上げるが、彼女は気にせず進み剣を抜く。


「負けっぱなしというのは好きじゃないんだよね、私」

「はっは、なるほどな」

「せめてハンデ有でも、一本は取りたくってね」

「ならば来い!暇潰しには丁度良いぞ!」


 笑い哂う二人が切り結ぶ、というよりはナインの斬撃に合わせて振られた黒い剣がサーベルを弾く。

 直後、僅かな隙に捻じ込む様に片足分の踏み込みの突きが神速で迫るが、今度はナインが剣の腹を叩いて弾く。


 黒騎士は余裕といった様子でナインの攻撃をいなすが、彼女はなんとかギリギリで攻撃を捌いている。

 その様々な要因による差に、苦々しい顔をしていれば……返す刃が黒く煌めいてナインへと迫った。


「っすがにコレ、はあっ!?」

「ほう」


 飛び退いて躱せばいい。

 そう考えたくなる気持ちを抑え横薙ぎで迫る剣にサーベルを斜に構えて斬撃を逸らす。

 関心の声を上げられるも、答える余裕もなくナインは弾いた反動で地面に縫い付けられる。


「良い反応だぞ」

「それはどう……も゛ッ……ぉ」

「……まだまだ足りんな」


 だが賞賛とは真逆に容赦なく振り下ろされた刃に、ナインは粒子へと還る。

 そして静寂が再び訪れた空間に、黒騎士の呟きが漏れ出した。



「次ッ!」

「は?」


 ナインの死に戻りからきっかり10分後、再び地下闘技場の扉が乱暴に開かれる。

 今日はもう戻らないと思っていた人影に黒騎士が呆けた声を上げるが、それを彼女は気にしない。


「だから、次ッ!」

「お、おう」


 動揺して居ようとも勝負は勝負と言いたげに、彼女が定位置に着けば互いに剣を抜く。

 その後、まるで大人と子供の様に遊ばれながらも、その日何度もナインは黒騎士へと挑み続けた。


 ――月曜日、死亡回数 19回。平均戦闘時間 1:41。



「今日も、か。闘技大会とやらの用意はいいのか?」

「まずはあなたに勝ってから」


 次の日も懲りずにナインは黒騎士へと挑んでいた。

 だが昨日と違う点は、録画用の光球を従えている事。

 こちらに至っては、映像を見て反省や改善を行う為と教えれば彼も納得してくれた。


 その為に一戦一戦の間でかかっていた時間は10分では済まない時が多々出てくる。

 ちなみにデスペナルティはリアル時間で一時間ほどだが、それをナインは短縮アイテムを使う事で連戦を可能にしていた。

 しかも神殿でリスポーンポイントにもなるタイプのテントを使うなど、完全に挑み続けるつもりだ。


 そして彼女は熱の入った様子で黒騎士に挑み、散り続けて行った。


 ――火曜日、死亡回数 15回。平均戦闘時間 2:13。



「ふむ、今日は趣向を変えて来たか」


 更に翌日、黒騎士に挑むナインはサーベルと盾では無く、両手に短剣を握っていた。

 まずはあの速度に眼と身体を慣らす事、そうナインは考えたからだ。

 しかしその結果は――


「ッぐ、ほぁ……」

「筋は良いのだがな。まだキレが足りんな」


 地に伏し粒子となっていくナインに黒騎士が苦笑する。

 確かに一撃与える事は出来たが、その傷は鎧の表面を削るだけで直後の反撃で倒されてしまったのだ。


 剣では速度が足りず、短剣では威力が足りず。

 そのどっちつかずに強者相手への器用貧乏さをナインは感じ始めていた。


 ――水曜日、死亡回数 12回。平均戦闘時間 3:34。





「ッはー…………」


 木曜日の午後。

 月末の学校の屋上で陽臣は欄干にもたれかかりながら総菜パンに齧り付いていた。

 昼食はとったものの、脳に栄養が足りない感覚から購買で買い求めこうして食べている訳だ。


 溜息の理由は勿論あの地底の黒騎士。

 あの速度も一撃の重みも桁外れの相手から、どう一本取るかで彼の脳内は満たされていた。

 どちらに特化させればもう片方で倒され、かといって両方というと確実に敵わない。


 あれこれと考えていても、脳内で考えが延々とループしてしまう。

 しっかりと対策と練りたい所ではあるが、闘技大会のイベントが明日に控えている為に……。


「レベルも時間も足りない……」


 ぼうっと宙を眺めながら、二日の戦闘の動画を見続けてはいるが糸口がそう簡単には掴めない。

 だがその中で、陽臣はふと閃いた。


「足りないなら補えば良い。だが何で……?」


 装備を変えたとしても、おそらく変わりはない。

 ならば変えるのは意識か立ち回り。


 立ち回り方、その事に一つ思い至る節を感じて、動画の一点を再生する。

 そうすれば問題のシーンには――


「あった」


 あの黒騎士に一泡吹かせることが出来る手段が、陽臣とナインにはあったのだ。




いつも読んで頂きありがとうございます。

筆者風邪気味につき少々更新の頻度が下がります。

ご了承ください。

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