表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/63

44.職業とアーツと落とし穴



 日曜、時刻は朝の七時。


 陽臣はその日珍しく部屋に籠っていない母と、休日の父親との朝食を済ませゲームにログインしていた。

 愛梨はまだ起きて来ていないようだが、今日は父が面倒を――朝食を温めるだけだが――見てくれるだろう。


 などと考えながら、ログアウトした宿屋から出てゴルスクで職業案内所へと向かって居た。

 ゲーム内でも朝方のに運びで若干混み始めている通りを通れば、目的の建物が見えた。

 遠慮無く扉を通れば、冒険者組合とは別の意味で役所の様な室内に、カウンターと受付のNPCが並んでいる。


「ようこそ、職業案内所へ。登録ですか?」

「ええ、これで大丈夫です?」

「えっと、はい、ありがとうございます。レベル40を達成されていますので……こちらが、ナイン様の現在選択可能な職業となります」

「ふむ……」


 冒険者組合と変わらない対応であったので、もしかしてと組合の登録証を出せばそれでよかったようだ。

 そして手元にウィンドウが表示され、それに目を通す。すると――


 《戦士》に《騎士》、なぜか《処刑人》といった職業から《シーフ》や《武闘家》に《曲芸師》といった物まで様々であった。

 しかし、ナインが一番目を引かれたのは……。



「すみません、この《???》ってあるのは……?」

「え?ああ……。それは、選択可能になる条件を満たしかけている職業ですね」


 ナインが指差したのは、一覧の最下部に表示された二つの《???》だ。

 それを問えば、どうやら特殊な職業のようだった。


 他の職業の説明を見る限り、文字通り物理戦闘に特化していたり、重装備だったり軽装備だったりするものばかりだ。

 その中でも、いくつかの選択肢は生まれるが……彼女にとって、その未知に好奇心を擽られた。


「これだと、もう少し待ってみるのもアリですね」

「そうですね。特殊職業は希少なスキルを得られるものもございますから」

「じゃあ今回は見送りますね」

「はい、またのお越しをお待ちしております。」


 頭を下げあい、苦笑を漏らすナインの職業の習得は見送りとなった。



「しかたない、か」


 そう残念がるナインの足は、近頃通い詰めていた坑道へと向けられていた。

 その目的は鉱石では無く、分岐がある場所の広い空間で、そこでアーツやスキルの再確認をしようと思っていたのだ。


 なぜそんなところで。

 と思われるかもしれないが、そこはインスタンスダンジョンとなっており常に本人かパーティのメンバー以外と出会う可能性が無いからだ。


「さくっと終わらせようっと」


 そう呟く彼女の言葉は、適う事はなかった。





 丁度良い広さ、坑道の中に関わらず何故か教室程の広さの有る空間で、ナインは適当な岩に腰掛けてウィンドウを開く。

 そこに表示されるのは彼女が習得している称号と、スキルと、アーツ。


 レベル40を達成した特典は、なにも職業だけではない。

 アーツの性能のカスタマイズや、作成を行う事が出来るのだ。


 具体的には、元々のアーツの性能……準備時間や硬直時間、火力などの数値を元の合計値と同じように振り分けるものだった。

 これが有るから、プレイヤーそれぞれの個性というものが光るのだろう


「さってと、まずはアーツの確認を……」


 そう呟くナインは、開いたウィンドウの中で使いそうなアーツだけをピックアップしていく。



《ファストブレード》片手剣スキル。

コンボの始点だが単体でも出が早く使いやすい。


《ワイルドエッジ》片手剣アーツ。

減ったHPが多い程与えるダメージの倍増。


《ブレードソニック》片手剣アーツ。

斬撃が飛ぶ、意外と便利で使う事が多い。


《シールドバッシュ》盾系統アーツ。

文字通り盾で押し出す、防戦一方の時に使うかもしれない。


《パリィ》片手盾アーツ。

こちらも文字通り盾で受け流す。


《ペネトレイト》投擲アーツ。

投擲物の貫通力上昇とクリティカルダメージ倍増、積極的に使っている。


《ヘビースロー》投擲アーツ。

こちらは貫通力上昇だけだが、より風などの影響を受けなくなる。


《ファイア(ウィンド)アロー》魔法アーツ。

詠唱が早いので牽制に使える魔法の矢。


《ファイア(ウィンド)ランス》魔法アーツ。

威力がある分詠唱が遅く、サイズが可変の槍を打ち出す。



 大体使って行こうというスキルは固まった。

 後は調整だが……ここは、ピーキーな感じに極端に仕上げよう。


 出の早いアーツは更に早く、火力よりも詠唱などの硬直が出来るだけ短くなるようにする。

 逆に威力の高いアーツは、火力の値を伸ばしていく。


 数値を弄っては実際に宙へ向かって試し、また弄りを繰り返していった。

 その試行錯誤が数十回を超え、三桁に達しようとする辺りで彼女は満足そうに腰を下ろした。


「じゃ、次はスキル作成かな?」


 今迄見ていたウィンドウを閉じ、新たなウィンドウを開いてナインは思う。

 思い浮かぶのは妹と悪友の顔、だけではない。


「……アリスやヒューイだけじゃないよね、強敵は」


 よくよく考えれば大会なのだ。

 他の出場者の対策などもしなければならない為、汎用的である必要もある。


 目の前のウィンドウに表示されている作成可能回数は二回。

 であれば、対身内用と対汎用の二種類で決定だろう。

 意外性を求めた身内や奇襲の為の物、そしてとにかく誰にであろうとも使えるもの。


 そう色々と思考しながら、新スキルの作成から実験、特訓にナインは勤しんで行った。

 その結果――



「どーしてこう、私は落ちる事に縁があるのかな」


 崩落した坑道の下に合った空洞に彼女は滑落していた。




堕とすのも墜とすのも好きなんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし気に入って貰えたようでしたらブックマーク評価感想を頂けると励みになります。

小説家になろう 勝手にランキング

小説家になろうSNSシェアツール
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ