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43/63

43.鍛冶場と食卓でのお説教

総合評価300pt、ユニークPV4000越えありがとうございます。

もっと進め……止まるんじゃねえぞぉ、となっています。


説教をする側、される側。


2/14 誤字修正。



「で、闘技大会まで一週間を切ったというのに、採掘ヒャッハーしてたっすか」

「面目次第もございません……」


 ゴルスクの鍛冶場《蒼の火》の工房にて、ナインは正座させられていた。

 それを説教するのはスプークで、普段彼女に向ける表情そのままにこめかみに青筋を浮かべている。


「素材を入手するのはいいっすよ?でも連絡の一つも寄越せなかったっすか?」

「いや、その……掘るの楽しくて、ね?」

「ね?じゃねーっすよ!」


 ちなみに客に邪魔になるという配慮も込めて、カウンターの有る店舗では無く鍛冶場で説教は行われていた。

 鉄をも熔かす熱によって暑く、また床に飛び散っている細かい金属片や切粉がとても痛い。



 そしてその音声をBGMに、煌々と燃え盛る火を擁する炉の前で店主とマージーが鉄を打っていた。


「出すのが早い、もう少し白んでからだ」

「……はい、っ」


 その横顔は汗を垂らしながらも充実しているといったふうに、普段表情の良く解らない彼女の口元が緩んでいた。

 ちなみに彼女達は、連絡を送らないナインを見かねてゴルスクへ商人の護衛の依頼を受けて来たようだ。

 呑気に鉱石を抱え納品しに通りを歩いていたナインは、そこを捕まったという訳だった。


 そしてよそ見をしていれば、脳天に太い樫の枝が振り下ろされる。


「いッ……」

「話はまだ終わってないっす」


 あまり怒らない人間を怒らせてはならないという、典型的な教訓をナインは学んだ。



 その後。

 一時間程こってりと、(FwFで)のことまで掘り起こされて説教し終えたスプークはふと話を切り替えて、問う。


「そう言えば、結局どれ位の素材が集まったんすか?」

「えっと……ちょっと待ってね」


 彼女の言葉にナインがインベントリを見、ウィンドウを操作する。

 そのウィンドウに表示される文字列を見て、彼女は呆れかえる。


「……ハイになり過ぎっすよ総長」

「ごめん、私もそう思ってる」


 そう二人が顔を見合わせるウィンドウには、これだけのアイテムが表示されていた。



+--------------------------------+


銅x362

銀x29

金x7

鉄x185


黒曜石x18

火山岩x193

褐色の岩x288

歪な鉱石x97

研磨石x47

砥石の欠片x141

錆びた何かx12

化石x4


黒鉄x200

白鉄x100

蒼鉄x30



+--------------------------------+



 これが、平日の夜数日と土曜日を採掘に費やした者のリザルトだった。

 その内最後の三つはクエストの報酬であって、他はクエストで納品した残りとなる。


「ま、これだけあれば色々試作は出来るっすね」

「うん。良く解らないアイテムは後に調べればいいよね」

「っすね」

「すっすか」

「……?」

「ん、マージー。お疲れ様?」

「……ん」


 ふと仲直りしたように笑い合って居れば、いつの間にか鍛冶場の隅に居た二人の傍にマージーが槌を片手に歩み寄っていた。


 終わったのかとナインが問えば、緩やかに首が横に振られる。

 先程から彼女は店主――ミグルというらしい――と鍛冶の鍛錬を行っていた。

 どうやら気に入られたらしく、マージーは一段階高位の鍛冶スキルを学んでいたのだ。


 しかし彼女の腕と熱意をもってしても、まだ炉の火には勝てていないようだった。


「休憩」

「そっか」


 短く言葉を交わせば、インベントリから適当な飲み物とタオルを渡す。

 頑張る姿というのは応援したくなるものだと思っている内に、休憩が終わったのか彼女はまた炉の方へと向かい鉄を打ち始めた。


 それを見て、感心したようにナインは独り言つ。


「本当に凄い集中力だね」

「そっすね。怖い位っすよ」

「だよなあ」


 ナインの言葉にスプークと、休憩し始めた店主が同意する。

 ならばと、話に混ざったついでにナインは問う。


「ミグルさん。マージーはどうです?」

「あいつか、無口で何考えてるのか解んねえが……教え甲斐があるぞ」

「それは良かった」

「そうだな……あと数日で、今学んでる事は飲み込めるだろう」

「となると……」

「お前さん達の装備を、作れるってこった」


 返される返答につい笑みが漏れる。

 ちらと横を見れば、スプークも顔がニヤついていた。


 そんな二人に、呆れた店主は炉に向かうマージーの元へと戻っていく。


「じゃ、私は素材の選別をして、落ちるかな」

「お疲れさまっすよぅ」


 リズミカルに鉄を規則正しく打つ音を背景に、ナインはゴルスクの宿屋へと向かった。





 ふっとナインの意識が陽臣へと切り替われば、VRギアを外しぼんやりと部屋の天井を眺める。

 先程まで火照るほどの熱さや通りの寒さがまだ身体の芯に残っているようだったからだ。


 その余韻が引いていくのを感じ取れば、身体を起こしてリビングへと向かう事にした。

 時刻は夜11時。眠ってもいい頃合いだ。



「……おっと、兄さん」

「愛梨?」


 物音がせず灯りもついていないリビングに灯りを付ければ驚きの声が聞こえる。

 その声に陽臣が苦笑しながら確認すれば、彼女はココアの入ったマグカップを片手にソファーに座っていた。


「邪魔したかな?」

「いえ、考え事に耽っていたので……」

「闘技大会の、か」

「ええ」


 答えてる小さな唇が言葉を紡ぐのを止めてココアを含む。

 それを聞き、なら邪魔をするべきではないとキッチンに向かい珈琲を淹れ始める。

 すると、その背中にか細い声がかけられた。


「兄さん」

「ん?どうした?」

「闘技大会、出るんですよね」

「……出て欲しくない、かい?」


 とぽとぽとフィルターを通り黒く染まる雫の音を楽しみながら、妹へと意地の悪い事を問い返す。





 そんな言葉に愛梨()の心は簡単に掻き乱された。

 それほど、今の私の決意は弱かったのだろう。


「出て欲しいです。そうして、私と戦って欲しい」


 ココアで潤っている筈の喉からは掠れる様な声しか出ない。

 言葉では兄に勝つと豪語しているものの、その自信が無いのだろうか。


 自分自身で考え直す度に、泥沼にはまっていくような心境で居ると、いつの間にかソファ越しの背後に兄が居た。


「なあ、愛梨」

「……はい」

あの世界(『StOn』)に誘って貰ったお礼、そう言えばしてなかったよね》」

「……はい?」

「色々と喪失感を抱えてた私に、漠然としているけれど目的をくれたようなものじゃない」

「そう、なるんですか?私はただ兄さんと……」

「一緒に遊ぶ、そして倒して超える。それだけが目的じゃあないでしょ」

「……ッ」


 綴られていく言葉に、不意に振り向かさせられる。

 すると、兄の何も見ていない瞳がこちらに向けられていて、本能が怯えてしまう。


「ん?ああ、ごめん。ちょっと嬉しくってさ」

「嬉しい?何がです?」

「愛梨が、わがままを言ってくれる事」

「……私はいつもわがままですよ?」

「嘘。いつも物分かりが良い顔で自分の欲求を隠してる。それなのに周りには不審がられない……不思議だよね」


 慌てた反論は正面からねじ伏せられ、私は俯き黙るしかない。

 そんな様子を見かねたのか、兄は身を乗り出して私の頭を撫でながら言葉を漏らす。


「愛梨、賭けをしよう。闘技大会で勝った方が、負けた方に何でも一つ言う事を聞かせる。なんてどう?」



 兄の言葉の意味が分からず、呆けた顔で思ったままの事を口にしてしまう。


「なんでも、ですか?」

「そう、なんでも。ちなみに私のお願いはもう決まってる」

「それは……」

「今はまだ秘密」


 真剣な声音で茶目っ気の有る表情をする兄を見返していれば、ますます混乱は深まっていく。

 兄は兄なりに何かを考えているのだろうが、まったくもって検討が付かない。


「……判りました。でもそういう事なら自分が負けた時の事も、考えておいてくださいね」

「勿論」


 即答する兄を見ては、落ち着こうと肩を落としココアを再び口に含む。

 そんな単純な動作でさえ、今の私には重労働であった。



「愛梨」


 気付けばキッチンへと戻っている兄の言葉に、顔を上げてそちらを向く。


「お前は大舞台に慣れて居ない。プレッシャーを克服しろ」

「え、兄さ――」

「大丈夫、愛梨らしくやればいいだけさ」


 一瞬だけ、ほんの一瞬だけ声音が変わった兄の雰囲気は野生の獣の様に鋭かった。

 それもすぐに柔和な笑みへと収めた兄は、自室へと戻って行ってしまう。


「私らしく……」


 自分らしさ。

 それはもう哲学の話ではないのか、とも思いながら……一つだけ思い至る点があった。


「……そうですか、じゃあ当日は遠慮はしませんから。ナイン(兄さん)


 再び暗くなったリビングに、昏い笑みが生まれる。



なんでモンハンの採掘や鍛冶場の風景って楽しいんでしょうかね?

まあpspの2ndGの記憶なのですが

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