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42.蒼鉄に魅せられて



 アイスウルフとナインが戦い、アリス達がフェンブルグへと辿り着いた翌々日。

 ナインの姿は鉱山都市ゴルスクにあった。


 遠目から見るゴルスクは、山に半分埋まった扇のような形の街だった。

 この街と山の中にある坑道、周辺の町や村を合わせてゴルスクと言うらしい。

 街と言っても大きな建物は数件しかなく、冒険者組合や大きな商店と高級宿ぐらいだ。


 そんな街中を――アルゲンルイム程寒くはない――歩いていると、やはり工業の街らしく、そこかしこに工房がある。

 マージーを連れてくればよかったかな、などと思いながら見物して居れば、硬派な鍛冶屋だけではなく硝子工房などもあるようだ。





 幾つかの工房に併設されている店舗を冷やかしたナインは、目的の店を見つけ扉を潜る。

 中に入ると鍛冶場特有の火と炭と金属、そして油の匂いが鼻を突く。

 清潔な店内だが、苦手なものなら逃げ出してしまうような匂い。しかし鉄と硝煙に慣れたナインには懐かしさすら感じる匂いであった。


「すみません、ちょっといいですか」

「おう?嬢ちゃん買いに来たんじゃねえのか」


 いかつい顔した店主に話しかければ、意外そうな顔でナインを見返す。

 それもそのはずだ、店内には様々な武器や防具、道具などは並べられている。

 一部は壁に掛けて飾ってあったり、ショーケースに入れられていたりしていた。

 丁寧に仕上げを施されたそれらに見向きもせず、話を続ける。


「申し訳ない事をお願いしたいのだけれど、鉱石を譲ってもらう事は出来ないかと」

「鉱石?素材をどうすんだ、まさか嬢ちゃんが加工するわけじゃあないだろう?」

「ええ、私の……うん、仲間がそのつもりです。」


 頭を下げながらナインが頼めば、頼まれる店主も二重の意味で驚き首を捻る。

 彼の見立て通り、ナインは鍛冶系スキルを保有していない、だからこそ迷う。


「だとしても、なんだって欲しいんだ」

「来しゅ……来月の闘技大会、それの出場する為に欲しいんです」

「闘技大会……ああ、異邦人達の」

「そういう事です。それに――」


 一度ナインは言葉を句切り、一つ考え言葉を選びながら続ける。


「今回は、仲間に装備を作って貰いたい。その仲間にしか作れない装備が必要だから」

「そう、は言っても、なあ……」


 頭を再度下げるナインに、店主は顎髭を擦りながら歯切れ悪く悩む。

 彼としても、職人のプライドがあるのだろう。

 だがナインにも譲れない理由があった。



「だとしても、なんでうちなんだ?鉱石が欲しいなら、商会でも鉱山でも行けばよかったろう」

「まあそうですよね。でも、時間が無い事が一つ。もう一つはここの扱う武具の質が良かった事です」


 言葉と共に、ナインは陳列されている剣の一振りを持ち上げる。

 鉄の重厚な輝きと質感が感じられる鈍い光を放ち、その上使用者が使いやすいように加工され革の巻かれた剣。

 その輝きの芯となっている質感に、ナインは目を付けていた。


「他の店や工房は、おそらく鋼だけ。でもここは……合金鋼、ですよね?それもレベルの高い」


 微笑むナインの言葉と目線に、店主が若干たじろぐ。

 彼女の目には、ここの商品はただの鋼では無い合金鋼だと見えていた。

 それもその筈、少し昔(『FwF』)では銃器の銃身やコンバットナイフなどでよく見たものだ

 そして極めつけは――


「最後に、決め手となったのはコレ……」

「ああ、うちの傑作だな」


 二人が見やるのは、本来黒ずむ場所が鈍い蒼に輝く大剣。

 透明感に富んだ深い光沢の色合いだけでも工芸品の様にも見えるが――


「ここは青焼き加工(ブルーイング)できる技術がある」

「おまっ……」


 絶句した店主の様子を見て、当たりを引いた事にナインは微笑む。



 青焼き。

 ステンレススチールなどの鉄をある一定の温度で焼き、蒼い酸化被膜を作る製法だ。

 その美しい色合いは装飾の意味合いだけでもなく、通常のメッキよりも劣化に強い。


 たとえ電子の世界でも劣化が付きまとっていた戦場での銃器では、ナインのお気に入りの素材の処理方法だ。



「それだけ高度な技術を持った工房だ。素材も良い物があると踏んだのですが……」

「……わかった、そこまでわかってるなら売ろう」

「耐食鋼は武器にだけ欲しいので、後は通常の鋼などが数人分頂ければ……」

「あ、ああ……ある事はあるが……」

「こちらで、足りますか?」


 ようやく納得させることが出来た店主の前に、予算として用意していた額をウィンドウに乗せて送る。


「予算は百万(1m)までなら」

「む、これだと耐食鋼だけで飛んじまうぞ」

「そんなにですか……なら稼がないと……」

「……ふむ、手伝ってくれるのなら、手間賃としてやってもいいぞ?」

「本当ですか?」


 まさか、十分だと思っていた額が足りないとは知らず、店主の言葉に項垂れる。

 そんな姿を見かねたのか店主がぼそりと提案すれば、速攻でナインは喰い付いた。





「うん、たまにはこういう単純労働も悪くないかな?」


 そう呟くナインは、ゴルスクの坑道の一つでつるはしを振るっていた。

 武具屋《蒼の火》の店主に依頼されたのは――



+--------------------------------+



クエスト 鉱石を求めて



発行者:ミグル


内容:ゴルスクの坑道で規定数のポイント分の鉱石を採掘しろ


条件:《蒼の火》ミグルの好感度が一定以上



報酬:黒鉄x200

   白鉄x100

   蒼鉄x30



+--------------------------------+



 主に鉱石の採取であった。

 その種類は多岐に渡り、とりあえず掘って来いとナインは言われたのだ。

 使わない鉱石はどうするのかと尋ねれば、鉱滓(ずり)として一山幾らで売るか研磨剤にするそうだ。

 ならばと、とにかくナインはひたすらに採掘を続けて行った。


 その為に、暗い坑道に居続けた為に《夜目》、当たり前の様に《採掘》と《両手槌》のスキルを入手していた。

 ピッケルやつるはしも槌なのか?とも思ったが、深く気にしては負けだろう。そういうものだとナインは考えるのを止めた。


 そうしてナインが段々と単純作業にハマり、一日どれだけ採掘出来るのかを楽しんでいると、あっと言う間に闘技大会の日は刻々と迫って来ていた。




おかしい……私は予約投稿していたはzZ


ブルースティールの銃身とか時計の針やねじがお気に入りなんですよ。

あれでショットガン作りたくありません?マリーンのステンレスモデル。

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