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41.余韻と城塞港湾

短めです。


また、一件の誤字報告ありがとうございます。訂正させて頂きました。



 眼前が真っ黒になって数瞬、数秒なのか数分なのか。暗転した意識と視界が開けると、アルゲンルイムの教会にナインは居た。


 荘厳とは若干柔らかな雰囲気の空気の中、石造りの建物の内部は微細な彫刻が施された柱がドーム状の天井を支えている。

 どうやら死に戻り(デスポーン)した際は最寄りの教会が復活地点のようだ。

 普段通いもしない教会で居心地が悪い中、足早にナインは去ろうとしたがふと後ろを振り返る。


 そこには控えめなサイズだが、美しい装飾のステンドグラスがあった。

 背景に美しい自然が広がる中、人々のように見える人型を包み込む様に両手を広げる人物の絵。

 後光が差すその人物は微笑みを湛えいかにも神様といった雰囲気だが、それがアルカイック・スマイルのような気味の悪さに思えてナインは教会を後にした。



「……それにしても、完封とはいかずとも善戦したかったな」


 寒風の吹き荒ぶ通りを抜け、また例の酒場へと身を寄せては温かい飲み物を注文するナインはふと独り言つ。

 身体は満足感を感じてはいるが、脳はそれに若干の不満を覚えていた。


 あそこでこうして居れば、ここでこうするべきだった。

 などと反省会を一人でウィンドウにメモしては消していく。


 アドレナリンが流し込まれ沸騰していた血液が興奮と共に冷めていけば、自然と考察も捗っていく。

 その失せていく熱を補うようにホットドリンクを口にしているナインはそのままログアウトまで酒場でのんびりとしていた。


「あ、さっきの戦闘、録画すればよかった」





 一方でヒューイを伴ったアリスは、城塞港湾フェンブルグへと辿り着いていた。


 アルゲンルイム程に寒さが厳しくないからか所々木造の建物が見えるほか、街の半分は港と造船所である事に驚かされるが、その城壁が近隣の海まで覆っている事に眼を奪われる。

 そして今この瞬間にも進水する船があり、港に訪れる商船や何処かへと向かう軍艦の姿も見える、とても活気づいた街だ。


「ようやく着きましたね」

「おう……」


 城門を通り過ぎた二人の顔は疲労に染まっていた。

 それもその筈、突如として無数の角兎や雪鴉に襲われた為だ。

 とはいえそうなった理由は……ナインが東でアイスウルフと戦っていた為に、西へ逃げ出していた為ではあるが。


 そうとも知らず、唐突な連戦へと持ち込まれて困憊していた二人であった。


「とりあえず組合に行って、換金したりの後でか?」

「ええ、演習場に行く前に済ませてしまいましょう」


 頷き合うと二人は手早くフェンブルグの冒険者組合へと向かい、途中手に入れたアイテムの換金などを行ってから演習場と呼ばれる場所へと向かった。



 演習場とは、この街の訓練場の事だ。

 ただ、この北方の地では若干意味が異なる。


 大陸北方から北東にかけての一帯の地域はヘリジャ連邦と呼ばれる都市国家群で、軍を持たない。

 その代わりに、特殊部隊のような少数精鋭の他は自警団が街の守りを担っている。

 七つある都市国家の中でも、ここフェンブルグは軍艦を保有するほどに軍事力が強い街。

 故に、訓練場がとにかく広く、配置されている教官NPCや的のレベルが高いのだ。


「それで、ヒューイさんはどうする予定です?」

「俺か?俺はもっと実戦的な弓の練習と、補助の剣も極めて置くつもり」

「……姉さんのエイム力講座」

「あれを出来る人間が早々居るかっての。嬢ちゃんは?」

「私は、とにかく守りを固めようかと」

「なるほどな、頑張れよ?」


 またヒューイが頭を撫でようとするので、すっとアリスが身を引いて躱せば彼の苦笑が漏らされる。

 それについ笑みを浮かべては、笑い合いながら二人は演習場の中へと歩み進んで行った。




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