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36.図書館と祭りの報せ

ユニークアクセス3000越え、本当にありがとうございます。

そろそろ感謝のボキャブラリーが無くなってきました。


2/8 試合時間の調整。

2/18 さらに調整。



――はらり


――はらり


 教会とはまた違った厳かな雰囲気の図書館の中央部。

 そこだけ天井から陽の光が差し込む読書スペースでナインは本を読んでいた。


 その内容は料理について。ただ料理と言ってもこの『StOn』の中での料理。

 ざっと流し見た限り、スキルのレベルによって追加できる素材の数が増えていくとか。

 カレーなどの具材の多い料理などは、作るのが大変そうだ。


「これでこの本は終わり、と。次は――」


 本を読んだことで、《言語学》や《調理》といったスキルを得ながら次の本へと手を伸ばしたナインの手元に、湯気の立つカップが差し出される。

 中を満たしているのは紅茶、上質とは言えないがかと言って粗末なものでもない。手間のかかった淹れ方をされているのだろう。


「失礼、何かお飲みになればと思いまして」

「ありがとうございます、司書さん。頂きます」


 渋い見た目に反して茶目っ気の有る表情でウィンクする司書に頭を下げては口を付ける。

 茶葉の香りがふんわりと口内を満たす感触に目を細めながら、ナインは司書の手元へ視線を向けた。


 随分と古い本を脇に抱えている。


「ん……それが?」

「ええ、竜人に関してはこれが詳しいかと」

「何から何までありがとうございます」

「いえいえ」


 その古書をナインの手元に置いて、司書は元居た席へと戻っていく。

 残された彼女は、まず紅茶を味わいながら古ぼけた本の内容に思いを馳せる事にした。



 カップに残された紅茶が半分程になったあたりで、ナインはようやく古書を読む事に決めインベントリから骨壺と外套を取り出して傍らに置く。

 気のせいか、嬉しそうに震えているような気がしたが……気のせいだろう。


 慎重に表紙をめくり、更に慎重にページをめくるが……どうやらそこはゲームらしく古いのは見た目だけで作りはしっかりとしていた。

 空回りした気分を苦笑として吐き出してナインは古書を読み始める。



 回りくどい話や童話の類を廃し要点だけを纏めるとこういった事が分かった。


 遥かな昔、一人の女性を見初めた龍から竜人は産まれ、それに倣い人と血を混ぜる龍が出始めたとの事。

 そして龍と竜人は大陸北方の山奥に国を作り暮らしている、という事。


 また少数ではあるが、大陸西方の海と南方の砂漠にも小規模な集落が有るらしい。



 ふと、ナインは(ドゥーム)の語っていたダンジョンを思い出す。

 その語りの最初は雪山から見える極寒の海に浮かぶダンジョン。

 つまりは彼の故郷は北にあるのではないかと、ナインは考えた。


 勿論、その考えは違うかもしれないが……龍と竜人の国が有るというなら、手掛かりも掴めるだろう。

 ならば目下の目標は、古都北方にあるという交易都市アルゲンルイムに決定だ。

 目的地が決まれば、後は仲間達と相談するだけ。



 そう決めたナインは、取り合えず紅茶の残りを飲み干す事にした。





「あ、総長。アリスと一緒じゃないんすねぃ」

「ん、スプーク?どうしてここに……」

「魔法や錬金の勉強っすよぉ」


 しばらくすると背に掛かる声にナインが振り向けば、此方へと向かってくるスプークの姿が見えた。

 不思議そうに声をかければ、なるほど納得できる理由だ。


 しかし、直後にテーブルへと置かれる重みのある袋に呆けた声を上げさせられる。


「そうそう、これを渡して置こうと……」

「なに、これ?」

「89万っす」

「は?」


 突然出された大金にナインは間の抜けた声を上げながら考える。

 今の彼女の所持金の十数倍の額なのだから、それもおかしくはないだろう。


「えっとですね、沢山薬草関連集めて貰ったじゃないですかぁ」

「うん」

「それで、がっぽがっぽだったのでぇ」

「ぁー……この前の防衛で


 スプークの口から理由が語られればナインも納得に首を振る。

 どうやら特需を見越して回復アイテムを大量に生産して売り捌いていたらしい。


「あれ、じゃあ私が使った分の代金は……」

「もう引いてあるっすよ」

「そっか、じゃあありがたく貰っていくね?」

「数えないんですかぃ?」

「変な事してないって、判ってるから」


 正当な報酬ならと、麻袋をインベントリに収めるのを見てスプークが声をかけるも、ナインは苦笑して手を振る。

 付き合い自体は数年単位故に、こういう時に少なくしたり多くしたりという事が無いという信頼が有る故に、だ。


「それと、皆に相談しようと思っていたんだけれど……これから北に――」

「ついていくっすよぃ」

「……まだ話の途中なんだけれど」

「へへっ、うちは総長行くとこについていくっすからねぃ」

「まったく」


 忠犬のような反応を示すスプークに、ナインは頭をわしわしと撫でてやる。

 嬉しそうな悲鳴が小さく上がるが、図書館である故に適当な所で切り上げた。


「じゃ、他の皆とも話を付けられたら……北の、アルゲンルイムに行こうか」

「了解っす!」


 最後の最後で声を張り上げたスプークが、司書さんの鋭い眼光に撃墜された。





 こってりと司書にスプークが絞られているのを横目に図書館を後にしたナインは、マージーと連絡を取りながら噴水広場の適当なベンチに腰掛けていた。


「そういう訳でさ、私はこれから北を目指すけれど――」

『なら私も、一緒に……向かっていい、です、か?』

「うん、むしろ助かるよ」


 実際に話を始めてみれば、意外なまでに彼女も北方行きに同行する事になった。

 ただ彼女にも付き合いがあると思い、ナインは質問を重ねる。


「でも、生産職同士の付き合いとかがあるなら無理はしないで良いからね?」

『……ナインさんは、誘いたい、んですか?違うんです、か?』

「……気遣いは無用だったかな?」

『……』


 返される言葉に苦笑を漏らせば、肯定の鼻息が聞こえた。

 これで、途中確認を取ったアリスとヒューイを含めた五人での旅行が決定したわけだ。


『ナインさん』

「ん、なにかな、マージーさん」

『話は、それだけじゃ……ない、ですよね?』

「……うん。むしろこっちが本題なんだけどさ――」


 こっそりと、悪だくみする様な顔でナインは音声チャットのウィンドウへ微笑みかける。



『そういう、事なら……承り、ました』

「ありがとう、こっちでも素材は集めておくからね」

『はい、では』

「……ふー」


 音声チャットが閉じられれば、安堵と息抜きの溜息をついてナインは笑う。

 彼女の傍らには、通常と若干違う色のウィンドウが開かれていた。



+--------------------------------+


 こんにちは、StOn運営チームです。


 05/01より日本サーバーにて闘技大会が開催されます。

 イベントに向け古都、及び各都市にて受付を行っています。

 参加ご希望の方は忘れずに登録をお願い致します。


 なお登録締め切り当日は大変混雑が予想されます。

 参加希望の方はお早めの登録を推奨致します。


 当日、各都市に配置されたNPCに話しかけますと、イベントMAPへ転送されます。


 また、イベント中は期間限定のアイテムショップが開かれます。

 イベント不参加の方々も、開催期間中はぜひ足を運んでみてください。



 登録期間:04/30 23:59まで

 開催期間:05/01 10:00~16:00 予選

       05/02 10:00~16:00 本選 決勝戦

       05/03 13:00~16:00 予備日程



 試合ルール


・試合時間

 予選:15分

 本選:30分

 決勝:1時間


・勝利条件

 相手のHPの全損、時間切れの際に相手よりも多くHPを保有している、相手の降参


・アイテム

 武器防具の使用は自由ですが、回復アイテムは以下の通りに支給されるもののみ使用可能です。


 HP回復薬 x10

 MP回復薬 x10

 万能薬  x10


・その他

 試合中に相手プレイヤーを倒した場合でも決闘ルール同様、PKとして扱われません

 ハラスメント行為などはAIやGMの判断の元、反則や失格を決定されます

 反則は三回で失格となります



+--------------------------------+



 随分とまた、楽しそうなお祭りのお知らせであった。




恋愛ゲームだと、喫茶店でアリス、図書館でスプーク、工房街でマージーに出会えそうですよね。

……ナイン?ハハッ。


三人攻略後の裏ルートじゃないんですかね?

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